夏の自由研究はカメ「TRTL(タートル)」の観察。マレット各種の“いいところ”を全部乗せ/オグさんのPUTTER偏愛日記#16
パターが何よりも好きな筆者がその偏愛ぶりを語る連載、今回はオデッセイ「TRTL(タートル)」シリーズです。タートルとはウミガメのことで、見た目からのインスピレーションはもちろん、機能面にもネーミングの由来があるようです。
オデッセイの“新定番”へ 対抗馬はあのパター?
TRTLは、オデッセイにおける5番目の定番マレットシェイプを目指して誕生しました。オデッセイには、一世を風靡した「2-BALL」、半月型の「ROSSIE(ロッシー)」、2色交互の配色で構えやすい「JAILBIRD(ジェイルバード)」、そして“ツノ型”でお馴染みの「#7」と、数々のマレットの名器が存在します。それらに続く新たなヒットモデルを見込んで開発されているだけあり、かなり作り込まれています。
まずは形状です。MOIを高めるため中央に軽い素材、外周に重い素材を配置。ボディ全体を緩やかな逆三角形にし、上部に丸みを持たせつつ前後のバランスが吟味されました。単にカメの形を模しただけではないのです。
このネーミングと形状を知った時、私は「おっ!オデッセイ、やる気だな!」と感じました。現在のマレット市場では、テーラーメイドの「スパイダー」シリーズが王者として君臨しています。強い“クモ”に対抗するシンボルとしてカメを持ち出してきたのかなと。アメリカには「スパイダーマン」というクモのヒーローがいますが、カメのヒーローといえば「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」。“ヒーローvsヒーロー”の図式で対抗したいという思いがオデッセイにあるのではないか…なんて深読みしてしまいました。
実はオデッセイは以前、似たようなストーリーを他社に仕掛けられたことがあります。2008年にオデッセイの「セイバートゥース」が大ヒットしたのですが、2010年にピンから「ウルヴァリン」というモデルが発売されました。両者は「X-MEN」の作中でライバル関係にあります。メーカーの真意はわかりませんが、これを意識したネーミングなのではないかと話題になりました。
六角形に隠された工夫
それではクラブをじっくり見ていきましょう。まず目を引くのは外装です。ボディ中央の形状は耐久性を高めるための六角形。クラウンには2本の太いサイトラインが配され、このラインと六角形の前方2辺が、アドレス時にボールの中心付近で交わるよう設計されています。この工夫で自然と目線が一定の位置に収まります。また、四方の出っ張り(カメの足)のソール側にそれぞれ、計4つのウエートを配置。凝縮されたヘッドは、非常に高いMOI(慣性モーメント)を実現しています。
最新のAIインサートを搭載し、あえて速い初速が出る仕様にすることで、小さなストロークでも伸びのある転がりが得られます。ミスに強く、構えやすく、転がりも良いパターです。ちなみに、MOIの高いパターはゆっくりしたテンポで打つと性能を発揮しやすいのですが、そのゆったりとした動きのイメージがカメと重なるのも名前の由来だそうです。
4つのネック展開と注目のロートルク「S2S」
ネックは4タイプ用意されています。ヘッドが開閉しやすいショートスラント、つかまりの良いクランク、ストレートに振りやすいダブルベント、そしてヘッド重心に向かってシャフトを刺したロートルクモデルの「Square 2 Square(以下、S2S)」です。ショートスラントは操作性が高く、クランクはインパクトでフェースがしっかり戻ります。ダブルベントは開閉感が少なく振り子のように吊って打つのに最適で、一般的なやさしいマレットを求める方におすすめです。
私が特に注目するのはS2Sです。近年のトレンドであるロートルクパターですが、本モデルは最後発だけあってかなり作り込まれています。ロートルクモデルはヘッド重心にシャフトを刺すため、フェースが前に出た「オンセット(出っ歯)」になりやすく、通常のパターに慣れたゴルファーは違和感を覚えがちでした。
それを軽減するため、S2Sではシャフトを前方へやや傾けて装着し、その傾きを相殺するようにグリップを斜めに装着しています。グリップの左ラインを垂直に構えると、フェース面が自然と手の下に来るため、オンセット特有の違和感がかなり軽減されます。
ロートルクの特徴は、ストローク中にヘッドが開閉しようとする力(トルク)がほぼ発生しないことです。手で開閉させず、吊るように構えてゆっくりしたテンポで打つのがコツですが、この打ち方がTRTLの高MOIヘッドにぴったりマッチします。
4個のウエートで理想の特性にチューニング!
さらに注目のポイントがソールのウエートです。4つの脱着式ウエートを入れ替えることで、特性を細かく調整できます。標準は前方に10g×2、後方に15g×2が装着された深重心仕様ですが、この位置を替えることでより自分に合うようチューニングできるのです。
早速ウエートポジションを入れ替えてみました。メーカー資料によると、前方2カ所を重くすると操作性重視(#7やROSSIE風)、ヒール側2カ所を重くするとつかまり重視、トウ側2カ所を重くすると開閉型(ブレード風)になるとのこと。
まずトウ側を重くして打つと、自然とヘッドがターンして非常に振りやすくストロークも安定しました。次に前方2カ所を重くした操作性型、こちらは咄嗟のアジャストも受け入れてくれる敏感さがあり、個人的にはこれが一番良かったです。最後につかまり重視でヒール側を重くすると、フォローでフェースを押し抑える感覚がありました。右へプッシュするミスが多い人には良いと思います。
個人的に大きな可能性を感じたのが、前方のトウ側と後方のヒール側に重いウエートを配置する対角線バージョンです。私は左への引っ掛けが多いのですが、この仕様が最も引っ掛けにくく感じました。別売りの重いウエートを買ってさらに変化をつければ、引っ掛けをもっと抑制できそうです。
今回は装着されているウエートを入れ替えることで特性を変えてみましたが、別売りのさらに重いウエートなら、もっと大きな変化をつけられるはず。対角線に重くすると引っ掛けのミスをかなり抑制できそうな気がしますが、打ち手によっては右プッシュのミスが増えるかもしれません…。
TRTLシリーズは、マレットパターの歴史を集めた集合体のような仕上がりです。形状の追求、多彩なネックバリエーション、打感と転がり、可変チューニングと“全部乗せモデル”と言えます。プロの使用も進んでおり、ヒットは間違いないでしょう。個人的には、いずれ出てくるであろうカラーバリエーション(白黒のジェイルタートルなど)にも期待したいです!
■ 小倉勇人(おぐら・はやと) プロフィール
ゴルフショップ「リルガレージ」店長。クラフトマン、クラブフィッター、さらに雑誌やウェブ記事の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。