「ホワイトホット」だけじゃない 中古ショップに埋もれたオデッセイの名器を“PLAY BACK”
中古ショップのパターコーナーに行くたびに、圧倒される光景がある。オデッセイの膨大な在庫だ。歴史も古く、あまりに流通量が多いため、ゴルファーは「手頃な中古パター」としてなんとなく手に取っているかもしれない。しかし、その中には「ゴルフの歴史を動かした名器」がいくつもある。今回はそんな代表的なパターを紹介しよう。
ブランドの礎を築いたデュアルフォース ロッシーII(1990年代中盤)
オデッセイがキャロウェイの傘下に入る前(1997年以前)に世界に衝撃を与えた原点が、「デュアルフォース ロッシーII」だ。最大の特徴はフェース面に埋め込まれた黒い樹脂「ストラウド・インサート」にある。ウレタンボール登場前のソリッドな2ピースボールに対して絶妙な打感の柔らかさと転がりを与えたテクノロジーが注目された。
なかでもロッシーIIは1996年「マスターズ」でのニック・ファルド(イングランド)の活躍によって大ヒットした丸型マレットの完成形。かなりレアだが、昨今の中古市場では5000円もしないはずだ。
ネオマレットの概念を変えた「ホワイトホット 2ボール」(2001年)
「キャロウェイ Rule 35」というボールのウレタンカバーと同じ素材を使ったホワイトホットインサートは「柔らかい打感は正義」というムーブメントを確立。「熱硬化性ウレタン」(TSU)というカバーを使ったボールと、同じウレタン素材に白い塗装を施した。
2ボールデザインも衝撃的で、当時は「奇抜だ」「格好悪い」と叩かれた。しかし、ツアープロがこぞって使い始め、アマチュアが面白いようにパットを決めると市場は一変。ネオマレットというジャンルを確立した。その後、数多くの派生モデル(スチール複合やブレード形状など)が出たが、マニアが探すのは圧倒的に初代である。
複合素材で名器を蘇らせた意欲作「トライホット #1/#2/#3」
2001年発売の「トライホット」はピン型(#2、#3)やマレット型(#1)だが、構造は革新的だった。ヘッドのソリッドな軟鉄(1020カーボンスチール)をベースに衝撃吸収材を噛ませ、フランジには贅沢に「タングステン」を配置。さらにフェースにはホワイトホットインサートを組み合わせた3ピース構造を採用した。
ピン型の構えやすさと操作性、大型マレット並みのミスへの強さをアピール。当時は1万円台が常識だったパター市場で、定価を3万5000円に設定した。生産終了後もツアープロがこぞって使用し、中古では定価を超える価格がつくこともあった。その後2011年に「Tri HOT #3 iX」として復刻、2022年には「TRI-HOT 5K」として再びリリースされた。初代は現在、7000円前後で見つかる。
日本ゴルフ界の“黄金期”の相棒「ブラックシリーズ iX #9」(2009年)
2000年代後半、アマチュア優勝から最年少賞金王へと駆け上がった石川遼が握っていたのがL字マレット形状の「ブラックシリーズ iX #9」だった。タングステンフランジを搭載した軟鉄削り出しボディに、ホワイトホットのインサートを融合させた「ブラックシリーズ iX」。一見、プロ好みのシビアなL字に見えるが、Tri HOTと同じ3ピース構造で低・深重心化を狙って作られている。インサートのないモデルや、トウの先が上がっている「PROTYPE ix #9HT」などもある。中古ではどれも1万円以下だが、なかなか店頭に並ばないレアなパターとなっている。
今こそ再評価したい名器「バックストライク」(2010年)
最後にギアマニアとして紹介したいのが、2010年登場の「バックストライク」だ。シャフトがヘッドの後方(バックフェース側)から突き刺さるという異形パター。しかし、実は理にかなった超ハイテクパターである。
いま流行りのゼロトルクパターのように、シャフトを手のひらに乗せると、ストローク方向にフェースが向く。オデッセイはバックストライク、トウアップパターと周期的に発売。「真っ直ぐ引いて、真っ直ぐ出す」現代のトレンドにマッチしているが、今も昔も構えるのに慣れが必要だ。中古市場ではかなり安価で転がっている。ヘッド形状によっては5000円程度で見つかることもある。
数千円から手に入る、中古のオデッセイたち。しかしそこには当時の開発者たちが少しでも良いモノを作りたいというチャレンジ魂があふれていた。中古ショップへ行った際は、ぜひその膨大な在庫の奥をのぞいてみてほしい。革新的過ぎて、「やり過ぎ!」と感じるモデルが多いのも楽しい。あなただけの至高の1本が、安価で静かに主の訪れを待っているかもしれない。(文・田島基晴)
田島基晴 プロフィール
1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。