ステルス グローレ アイアンを筒康博が試打「縦距離の寛容性は△」
テーラーメイド「ステルス グローレ アイアン」の評価は!?
日本女子ツアー最長のブランク優勝(1988年のツアー制施行後)を果たした金田久美子が使用するテーラーメイド「ステルス グローレ アイアン」。番手別にスイートエリアを設計する新テクノロジーを搭載し、各番手に求められる飛距離性能を発揮するという。そんな同社の自信作を、前作「SIM グローレ アイアン」と比べつつ、ヘッドスピード(以下HS)の異なる有識者3人が採点。ご意見番クラブフィッター・筒康博の評価は!?
「時代の先頭を走っている“やさしい中空”」
―率直な印象は?
「バックフェースが、凹みのあるキャビティではなく、キャップバックと呼ばれる独自の中空構造になっていて、分厚さはあるけれど打感の良さも妥協しない、イマドキの傾向をつかんだアイアンに仕上がっています。キャビティバックの次の世代のやさしいアイアン構造として、時代の先頭を走っているといえるのではないでしょうか」
―時代の先頭を走っている…?
「今回比較した『SIM グローレ』は、ポケットキャビティですが、バックフェースの空洞がむき出しで、打音がダイレクトに伝わり、高めの金属音で、打感は硬めのイメージが湧く特徴を持っています。対して『ステルス グローレ』は、バックの外周が閉じている分、フォージド(鍛造)のやわらかい素材感を感じる設計に仕上がっています。近年のアイアンでは最も完成度が高く、定評のあった同社アスリートモデル『P790 アイアン』のテクノロジーを踏襲し、飛距離性能&打感の良さを両立した希少なモデルとして、時代を引っ張っている存在といえます」
―気になる点は?
「このモデルに限らず、“飛び系”と呼ばれるアイアンは、左右の曲がり幅に対する寛容性は高いですが、ボールの高さ次第で飛距離が大きく変わる欠点を持っています。縦距離に対する寛容性は、ストロングロフト(ロフト角:7Iで27度)の長所であり短所。ここまで打感が秀逸で、新たなテクノロジーを感じる半面、マイナス面がより浮き彫りになり、今更ながら余計に感じてしまいました」
―具体的にはどんなミスが出やすい?
「フェース上下の打点ズレに対する許容度は高く、ソール幅も広いため、ダフリのミスに強い一方、トップのような薄い当たりには、ホームランが出るミスが起こりやすい。フェアウェイウッドのように、手前からソールを滑らせる払い打ちタイプのスイングに適しています。クリーンヒットを意識して、ダウンブローでヘッドを入れていく人には、合わないかもしれません」
―同シリーズの統一感は?
「同シリーズでのつながりは強いといえます。コロナ禍でゴルフを始めた人が多い影響からか、同じブランドでフルセットをそろえたい方の比率が、年々高まっている傾向を受け、最近ではドライバー、FW、アイアンまでの統一感をかなり意識したラインアップが多く見受けられます。特にこの『ステルス グローレ』は、ドライバーのみを打って、あとは打たなくても(全部そろえて)大丈夫と判断しても問題ないほど、一貫したコンセプトを感じる性能に仕上がっています」
―どのような人向き?
「最近、アイアンの飛距離が落ちてきて悩んでいる人、または高さと飛距離の両方を欲しいと望んでいる人向き。シャフトも、今回使用したスチールだけではなく、カーボンもラインアップされているため、HS30~40m/s台前半までの幅広い層が扱える仕様となっています。アイアンが苦手なゴルファー全般におすすめできるモデルといえるのではないでしょうか」
5点満点◎も3点台△も2項目ずつ【総合評価4.1点】
【飛距離】5.0
【打 感】5.0
【寛容性】4.0
【操作性】3.0
【構えやすさ】3.5
・ロフト角:27度(7I)
・使用シャフト:NSプロ 790GH(硬さS)
・使用ボール:川口グリーンゴルフ専用レンジボール
取材協力/トラックマンジャパン株式会社、川口グリーンゴルフ
■ 筒 康博(つつ・やすひろ) プロフィール
スイングとギアの両面から計測&解析を生かし、プロアマ問わず8万人以上のゴルファーにアドバイス。インドアゴルフ「ゴルフレンジKz亀戸店」のヘッドティーチャーを務める傍ら、様々なメディアにも出演中。大人のゴルフ選びフィッティングWEBマガジン「FITTING」編集長として自ら取材も行う。