ステルス HD アイアンを西川みさとが試打「予想を裏切る打ちやすさ」
存在感を放つ高弾道アイアン HS30m/s台の女子プロ評価は！？
テーラーメイドから2023年モデルとして登場した「ステルス2」シリーズ。話題のドライバーと同時発売された「ステルス HD アイアン」は、ユーティリティ（以下UT）のような形状ながらロフト角が立っていない設定(7Iで30度)で、新製品の中ではかなり強い存在感を放っている。そんな高弾道で飛ばせる中空構造アイアンを、ヘッドスピード（以下HS）の異なる有識者3人が採点。まずはHS40m/s未満の女子プロ・西川みさとが試打評価を行った。
「お助けクラブじゃない！ 好印象に転じる意外なギャップ」
―率直な印象は？
「見た目の形状から想像していたイメージとは全く違うもので驚きました。ソール幅が広く、全体的にボテッとしたフォルムから抱くイメージは、ボールを高く上げることだけにフォーカスしたお助け要素の強い印象でしたが、実際は操作性も振り抜きやすさも備わっていて、アイアンらしい球筋がしっかり出てくれます。当初の予想を覆す意外なギャップに心をつかまれました」
―意外なギャップに心をつかまれた…？
「はい。アイアンというよりUTのようなシルエットをしているのですが、実際は高く上げやすい“やさしいアイアン”そのものといった性能です。見た目に反し、ターゲットに対して狙った位置や距離にボールを運ぶアイアンの要素を十分に感じることができます。UTのように払い打つ必要がなく、ボールを上から打ち込んでいける点は、このモデルの最大の魅力だと感じます」
―打ち込めるのはロフト設定のおかげ？
「もちろんロフト設定のおかげもありますが、全体的な構造の妙ともいえるでしょう。特にこれほど分厚いソールだと、インパクトゾーンで邪魔になったり、抜けが悪く感じることが多いのですが、それを全く気にしなくて済むほどソールの存在感が小さいです。幅の広いソールは2段構造になっていて、接地面積が小さいことから、抜けの良さも際立っています。これだけ幅広く設計しても、ほとんど気にならない構造上の巧妙さがうかがえます」
―ギャップがあることで逆に構えにくく感じることは？
「初めのうちはUTかアイアンかどちらの気持ちで構えるべきかで悩みましたが、基本的にアイアンとして扱うべきと認識してからは全く気になりませんでした。アイアンと同じ感覚で振り抜けば、勝手にボールが高弾道で飛んでくれる。低重心で大型なルックスこそ違和感はありますが、アドレス時のターゲットに対する向け方や、インパクトでのフェースコントロールには、ほとんど支障はなかったです」
―打感のフィーリングは？
「UTに近い形状であれば、カキーンと弾きの強い感触が残るものですが、この『ステルス HD』は打感に違和感はなかったです。使用した純正シャフト（TENSEI RED TM60／硬さS）との相性も良く、すごくスッキリしたフィーリングを味わうことができます。一般的なパワーの男性ゴルファーには、ややアンダースペックかもしれませんが、このヘッド形状を考えれば、しなり量の大きいカーボンシャフトのほうがヘッドを走らせることができる分、マッチする可能性は高いと思いました」
―どのような人向き？
「現在使用中のアイアンでは、ボールがなかなか高く上がらず悩んでいる人向き。ゴルフを始めたばかりの初級者や、そもそもアイアンが苦手な人には、フルセットでそろえるべきモデルだと思います。逆にアイアンが得意で、ミドルアイアンまでショットに自信を持っている人には、セットではなく5、6番だけの単品購入がおすすめ。特にそのようなプレーヤーは、見た目の形状にこだわりの強い人が多いと思うので、ロングアイアンから1本ずつ試してみると良いかもしれません」
見た目とのギャップに好印象【総合評価4.3点】
【飛距離】4.5
【打 感】4.0
【寛容性】4.5
【操作性】4.5
【構えやすさ】4.0
・ロフト角：30度(7I)
・使用シャフト：TENSEI RED TM60(硬さS)
・使用ボール：リトルグリーンヴァレー船橋専用レンジボール
取材協力／トラックマンジャパン株式会社、リトルグリーンヴァレー船橋
■ 西川みさと プロフィール
1977年7月10日生まれ、埼玉県出身。1998年「日本女子学生選手権」にて優勝し、大山志保・古閑美保らとともにナショナルチームで海外大会に出場。2002年にプロテスト合格後は、美しいスイングを武器にレギュラーツアーで活躍。23年国内女子シニア「JLPGAレジェンズチャンピオンシップ」優勝。