クラブ試打 三者三様

ステルス HD アイアンを筒康博が試打「『グローレ』でないところがミソ」

2023/05/18 07:00

存在感を放つ高弾道アイアン HS40m/s台のクラブフィッター評価は!?

テーラーメイドから2023年モデルとして登場した「ステルス2」シリーズ。話題のドライバーと同時発売された「ステルス HD アイアン」は、ユーティリティ(以下UT)のような形状ながらロフト角が立っていない設定(7Iで30度)で、新製品の中ではかなり強い存在感を放っている。そんな高弾道で飛ばせる中空構造アイアンを、ヘッドスピード(以下HS)の異なる有識者3人が採点。ご意見番クラブフィッター・筒康博の評価は!?

「予想外にシャープなヘッド ニッチではあるけれど…」

つかまり具合が強いのか全体的に左方向に

―率直な印象は?
「従来のアイアン型UTを、同シリーズの1セットに組み込んだ形式で、多くのゴルファー対象というモデルではないと思いますが、意外なほど構えやすく感じられました。ソール幅は分厚く、バックフェースは重たい印象を受けますが、アドレス時に上から見た印象はグース度が小さめ。フェース面やリーディングエッジ(フェース下部の刃)はスッキリ見え、予想外にシャープに感じます

軽量ポリマー素材を使用する「キャップバックデザイン」を採用

―予想外にシャープ…?
「はい。手に取って、ヘッドを見ると大型で重厚な印象を受けますが、構えたときも振っているときも、それが邪魔に思えるほどの感覚はありません。フェースの上下(高さ)を抑え、左右(横幅)が長く感じるため、それほどいかついデザインになっておらず、真っすぐ目標を向けてすんなり構えられます。店頭では違和感を覚えてしまうかもしれませんが、実際にボールを置いて構えてみると、意外とスマートで操作性の高いイメージが湧くでしょう」

安心感を抱ける形状だが それほどグースネックではない

―ニッチなカテゴリーではあるけれど扱いやすい?
「そうですね。現在、大まかなアイアンの傾向では、ロフト角が立ってきていて、ボールが上がり切らずに不安を抱えているゴルファーは少なくないと思います。しっかり上からダウンブローに打ちたいけれど、アイアンが苦手という人も多い。また14本の構成でいうとUTを2、3本入れるゴルファーも増えていて、その下のアイアンが急にマッスルバックのような薄肉モデルでは、急に難しく感じてしまう。一般的なゴルファーが買い替えるときに、この形状を求める声がゼロになることはないと思います」

純正「TENSEI RED TM60」はフレックスSとRのラインアップ

―打ち比べた純正シャフトの印象は?
「カーボン(TENSEI RED TM60)とスチール(KBS MAX MT80 JP)を打ち比べましたが、カーボンのほうが少しだけ振りやすく感じました。重量感のバランスからすると、より軽いカーボンのほうが(7I/Sの総重量:368g、スチール399g) 私のスイングには軽快に振れるフィーリングだったからかもしれません。また、長さは同じ(7Iで37.25インチ)なのに、カラーリングとデザインで、カーボンのほうがシャフト長が短く感じたのもひとつの要素といえます。ただ、スチールが変というわけではなく、単純に重さをプラスしただけで、挙動が違う動きをするとか、球質が変わるということではありません。あとは好みの重さで選ぶと良いと思います」

振り抜きやすさを計算して適度に湾曲された「ラウンドソール」

―気になるデメリットは?
「形状的に、しっかりボールを上から打ち込んでいくスイングには対応できないかなと思います。ソール後方をせり上げてなるべく接地面を少なくする工夫は見受けられますが、ラフが深かったり極端に悪いライからのショットでは、緻密にスピンをコントロール調整できるタイプではないです。まぁ対象ユーザーがそこではないと思うので、デメリットというよりも、それはターゲットを絞った結果だと。しっかり番手通りの距離を出すため、やさしいけれどやさしすぎない。あえて同社の『グローレ』ではなく、ツアーモデル『ステルス』シリーズの一員として登場させた点が、まさにこのモルの特徴を表しているような気がします」

「私が今よりHS(1Wで)5m/s落ちたときに使うべきモデルかも」と筒

―どのような人向き?
「年齢とともにHSや飛距離が落ち、アイアンのキャリーが思うように出ずに悩んでいる人向き。これまで通り池や谷超えが打てなくった方や、UTのような弾道をアイアンでも欲しくなったシニアゴルファー、HSが少し速いアスリート志向の女性ゴルファー。もしくはドライバーやフェアウェイウッド、UTでは飛距離は出ているけれど、アイアンだけ低弾道で飛距離が落ちるプレーヤーに最適なアイアンだと思います」

構えやすさを評価しているものの点数は3.5△【総合評価4.2点】

【飛距離】4.5
【打 感】4.5
【寛容性】5.0
【操作性】3.5
【構えやすさ】3.5

・ロフト角:30度(7I)
・使用シャフト:TENSEI RED TM60、KBS MAX MT80 JP(どちらも硬さS)
・使用ボール:リトルグリーンヴァレー船橋専用レンジボール

取材協力/トラックマンジャパン株式会社、リトルグリーンヴァレー船橋

■ 筒 康博(つつ・やすひろ) プロフィール

スイングとギアの両面から計測&解析を生かし、プロアマ問わず8万人以上のゴルファーにアドバイス。「インドアゴルフレンジ Kz 亀戸店」のヘッドティーチャーを務める傍ら、様々なメディアにも出演中。大人のゴルフ選びフィッティングWEBマガジン「FITTING」編集長として自ら取材も行う。

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