クラブ試打 三者三様

P770 アイアンを筒康博が試打「外見MB/MC 中身790 ズルいアイアン」

2023/05/25 07:00

やさしく進化した3代目 HS40m/s台のクラブフィッター評価は!?

テーラーメイドのアスリート向けアイアン「P」シリーズから、2023年モデルとして登場した3代目「P770 アイアン」。マッスルバック風のコンパクト形状に、飛距離、寛容性、打感、全てを向上させるための最新テクノロジーを搭載した中空構造は、前作よりさらにやさしく進化したという。そんな同社の自信作を、同時発売の限定モデル「P7MC アイアン」「P7MB アイアン」と比べながら、ヘッドスピード(以下HS)の異なる有識者3人が採点。ご意見番クラブフィッター・筒康博の評価は!?

「この見た目にしてこの打感 誰でも気分は上々↑↑」

想像していたイメージより弾道は高くボールはつかまっていた

―率直な印象は?
「バックフェースのデザインから受ける印象は、シャープで難しそうに見える形状ですが、実際に打ってみるとやさしいイメージしか湧きません。事前の予想では、重心距離が短く、スイートエリアが狭い上級者向けのそれでしたが、そのような感覚は一切起きないやさしい性能に仕上がっています。これほどシャープで格好いい見た目のアイアンを、ミスなく打ちこなすことができれば、それは誰でも気分が高まるものだと感じました」

左から「P770」「P7MC」「P7MB」(※MC/MBはセレクトフィットストア限定モデル)

―兄弟モデル「P790 アイアン」も高評価でしたが?
「そうですね。『P790』の安心感や打感の心地よさ、高い操作性と打ちやすさは、重なる部分は多いと思います。『P790』のあの高性能を、やや薄肉&小型化した『P770』で味わうことができることに驚きを隠せません。2021年に登場した3代目『P790』から約一年半で、『P770』でも同じように感じ取れる性能のブラッシュアップは、確かな進化だと思います。アイアンという変化の幅が少ないジャンルの中で、ひと回り小さくしながら同じ性能を表現するということは、我々の想像を超える開発者の努力なくして実現できないことではないでしょうか」

バックフェースから見る薄肉なボディは手ごわそうなイメージだが…

―「P7MC」「P7MB」との違いは?
「両モデルとも打点ミスには、とてもシビアな印象を受けます。うまく打てたときには最高と思えるほどの弾道が出る半面、芯を外したときは、ちゃんと左右に曲がったり飛距離ロスとして表れます。どちらもシングルクラス以上の腕前があり、ヘッド操作が巧みな上級者向けといえるでしょう。試打する前は、『P770』『P7MC』『P7MB』の3モデルが近しいカテゴリーの中にいるかなと予想していたのですが、『P770』は他2機種と明らかに別。ビジュアルは『MC』『MB』、性能は『790』寄りという、いいとこ取りの“ズルいアイアン”だと感じました」

軟鉄鍛造を示すネックに刻まれた「FORGED」の文字

―純正シャフトの印象は?
「試打で使用したスチールシャフト(ダイナミックゴールド EX ツアー イシュー)は私には重すぎて(5I/硬さS200で総重量:約430g)、ハードに感じるセッティングです。カーボン(ディアマナ Thump)はそれほどの重さではなく(5I/硬さSで総重量:約403g)、切り返しでしなりすぎる印象もなく、振り心地が良かったです。同社『ステルス2』シリーズのウッドのときにも感じましたが、同社と三菱ケミカル『ディアマナ』との相性の良さを実感しました」

重さ94g、トルク:1.9、元調子(※5I、ロフト25.5度の場合)

―他社でいうと類似モデルは?
「うーん…そうですねー、ライバルはピン『i230 アイアン』ではないでしょうか。打感がソリッドなのに硬すぎない点、アドレスして上から見た際にストレートに近く、構えやすく感じる形状。アライメントで感じるシャープな印象の割に、比較的に真っすぐボールが飛ぶ直進性など、共通点が多く見受けられます。もちろんそれぞれの所属プロが使用し、ブランドイメージは異なりますが、見た目と性能との程よいギャップが備わっている点で、類似した方向性を感じます」

「シャープな形状、秀逸な打感、やさしさが似ている」と「i230」を引き合いに出した筒

―どのような人向き?
「『P790』と同じで、現在スコアが100を切っていないゴルファーが少し背伸びをして買ったとしても、問題なく長く扱えるモデルだと思います。シャープな見た目で所有感を得られ、しかも腕前を問わずチャレンジできる寛容性の高さを備えている。純正シャフトも、スチールだけではなくカーボンも用意されているラインアップで、HSが一般的なレベル(ドライバーで40m/s前後)でも、スペックさえ合わせれば適用できる許容範囲の広さも魅力です」

バチッと打感&操作性で満点【総合評価4.7点】

【飛距離】4.5
【打 感】5.0
【寛容性】4.5
【操作性】5.0
【構えやすさ】4.5

・ロフト角:33度(7I)
・使用シャフト:ダイナミックゴールド EX ツアー イシュー(硬さS200)、ディアマナ Thump 95(S)
・使用ボール:リトルグリーンヴァレー船橋専用レンジボール

取材協力/トラックマンジャパン株式会社、リトルグリーンヴァレー船橋

■ 筒 康博(つつ・やすひろ) プロフィール

スイングとギアの両面から計測&解析を生かし、プロアマ問わず8万人以上のゴルファーにアドバイス。「インドアゴルフレンジ Kz 亀戸店」のヘッドティーチャーを務める傍ら、様々なメディアにも出演中。大人のゴルフ選びフィッティングWEBマガジン「FITTING」編集長として自ら取材も行う。

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