クラブ試打 三者三様

スリクソン Z-FORGED II アイアンを筒康博が試打「マッスルらしいマッスル」

2023/06/08 20:00

新形状を採用した松山アイアン HS40m/s台のクラブフィッター評価は!?

「ザ・メモリアルトーナメント」で大会2勝目に向けて躍動した松山英樹。彼の手に握られていたのは、4月に発売されたばかりの「スリクソン Z-FORGED II アイアン」で、分厚い打感をかなえる新形状のブレードアイアンだ。そんなこだわりが詰まったモデルを、前作「スリクソン Z-FORGED アイアン」と比べながら、ヘッドスピード(以下HS)の異なる有識者3人が採点。ご意見番クラブフィッター・筒康博の評価は!?

「打音&打感がグレードアップ 原点回帰した印象 」

ストレートからややつかまり気味の弾道に

―率直な印象は?
「私の年齢が20代なら、こういうアイアンを使いたいと思わせるモデルです。よりやさしいモデルがあるので、今はさすがに欲しくなることはないですが、10~20代で体力もパワーも自信があったときに使いたかったという感想を持ちました。改めてマッスルバックのメリットである、うまく打てたときの気持ち良さを実感することができました」

I(右)とのバックフェースの違いはトウとヒール側を削ぎ落として中央を肉厚化

―「I」と比べると?
「小さなサイズ内での話ですが、左右に対して(トウヒール)ミスヒットしたとき、前作『I』のほうが若干球ブレが少なく感じられました。『I』のほうが少しだけ左右のミスヒットに強いといえます。ただし、『II』もちょうど打点のポイントを肉厚にしているので、トウ・ヒール側に当たったとしても頼りなさにはつながりません。そもそもマッスルバックは、ミスヒットすることを前提に使うモデルではなく、真芯でビシッと打つことに集中できるクラブなので、その点では『I』よりマッスルバックらしくなった印象。マッスルらしいマッスル、原点回帰したといえるでしょうか」

トウ・ヒールの凹部により余剰重量を創出

―原点回帰…。では以前のマッスルバックと変わっていない?
「いいえ、過去のマッスルとは根本的な作りは違います。特に打音の耳心地のよさは、かなり進化しています。以前のような低音ではなく、多少音の響きが大きく感じ取れる点が変わりました。また、フェースの下めに当たったときでも、手に来る嫌な振動が少ない。飛距離も高さも比較的に寛容性があり、コンパクトなボディの中で、ものすごく重心設計が変わった印象を受けます。アベレージ向けと比べればスイートエリアは極小ですが、その中でも寛容性を高める努力が施されている点が、現代マッスルの特徴だと思います」

ソールからバックフェース下部への最適重量配分により重心を深く低く設定

―打音が良いというのは具体的に?
「前作より音域が高くなったわけではないのですが、うまく芯でとらえられたときに、金属音が心地よく聞こえる点が改善されています。スリクソンのボール『Z-STAR』『Z-STAR XV』は、アプローチやパットなどのショートゲームで“カツン”という打音の良さが特徴といわれていますが、それをアイアンの打音でも感じ取ることができました。打感がソリッドになったわけではなく、しっかり軟鉄鍛造とフェースミーリングの加工、また重心位置の妙により、どこに当たっても打音が変わらない=フィーリングが変わらない。そのブレにくい要素があるからこそ、フェース下部のミスヒット時でもぐらつきが起こらない。多少ライが悪い場所からでも、トップ気味に当たっても、結果に影響しない。そんな寛容性の高さにつながっている気がします」

松山英樹の声を反映させた打感を実現する形状

―他社でいう類似モデルは?
「このカテゴリーのアイアンは今、大手メーカーでは少なくなってきました。ミズノや三浦技研、地クラブのアイアンを使っているゴルファーが、改めて大手メーカーのマッスルバックってどうなの? みたいな立ち位置でしょうか。あえて言えば、テーラーメイドの『P7MB アイアン』(限定モデル)になるのかもしれませんが、やはりスリクソンのアイアンは唯一無二の精悍な中上級者向けアイアンというところは、揺るぎない存在価値と思います」

「そもそも芯(スイートエリア)が狭いことがマッスルの魅力では」と言い切る筒

―どのような人向き?
「HSはドライバーで最低45m/s。飛距離は250yd飛ばせるゴルファー向き。アベレージゴルファーがやさしく感じるアイアンではないですが、そこまで至っていない人でも、背伸びをして使うことによって腕前が向上したり、スコアアップする技量が身につく可能性があります。現段階で使ってはいけないということではなく、技術や腕前や飛距離をもうワンランク上に引き上げてくれる“アイアンの先生”のような存在といえるのではないでしょうか」

“アイアンの先生”的存在は3項目で5点満点【総合評価4.6点】

【飛距離】4.0
【打 感】5.0
【寛容性】4.0
【操作性】5.0
【構えやすさ】5.0

・ロフト角:33度(7I)
・使用シャフト:ダイナミックゴールド DST(硬さS200)
・使用ボール:リトルグリーンヴァレー船橋専用レンジボール

取材協力/トラックマンジャパン株式会社、リトルグリーンヴァレー船橋

■ 筒 康博(つつ・やすひろ) プロフィール

スイングとギアの両面から計測&解析を生かし、プロアマ問わず8万人以上のゴルファーにアドバイス。「インドアゴルフレンジ Kz 亀戸店」のヘッドティーチャーを務める傍ら、様々なメディアにも出演中。大人のゴルフ選びフィッティングWEBマガジン「FITTING」編集長として自ら取材も行う。

ダンロップ
世界で戦うためのブレードアイアン
発売日:2023/04/15 参考価格: 138,600円