クラブ試打 三者三様

PXG 0311 Black Ops ドライバーを筒康博が試打「『個性→普遍』方向転換を図った10K」

2024/04/04 20:00

妥協知らずPXGの“10K”ドライバー ご意見番クラブフィッターの評価は!?

ミスの強さに定評のあるPXG「0311」シリーズから、ウエート調整次第で上下左右の慣性モーメント合計値1万g・cm2超えの「0311 Black Ops(オプス)ドライバー」が誕生。ソールには3カ所の交換可能なスクリューウエートを配し、スピンとバイアスに応じた調整を可能にした。一切妥協をしないと公言するPXGの自信作“10K”モデルを、ヘッドスピード(以下HS)の異なる有識者3人が採点。ご意見番クラブフィッター・筒康博の評価は!?

「あえての方向転換 大手メーカーに対抗して弱個性化」

つかまりは抑えめなのか やや右方向に集中

―率直な印象は?
「過去モデルと比べてかなりイメージが変わった印象を受けます。同社は好みのヘッドを選んだ後に、シャフトをカスタムして、じっくり自分好みに構築していく売り方のブランドなので、提示されたスペックでの試打評価は適さないかもしれませんが、ヘッド単体でいうと、相当過去のイメージから方向転換を図っている気がしました」

熱狂的なゴルフ愛好家の起業家ボブ・パーソンズ氏が2014年に設立

―方向転換を図っている…?
「はい。2014年に設立した同社が、当初から打ち出してきたイメージ、新興メーカーとして他社にはない個性を放っていましたが、今作は良くも悪くも、あえて特徴的な要素を抑えているように感じます。大手メーカーの主力モデルにあえて近づけた印象。クラウンとソールにカーボンを多く使用したコンポジット(複合素材)ドライバーは、すでに多くのモデルが発売されているので、そこにあえて意図的に競合するために作ったように感じました」

同社が妥協せずに飛距離とやさしさを追い求めた設計に

―慣性モーメント“10K”は大きな特徴だと思うのですが?
「確かに寛容性はものすごく感じられました。ただ、ご存じの方は少ないかもしれませんが、元々同社のドライバーは設立当初から投影面積は大きく、重心距離も深くて長いモデルが多かった。やさしさを打ち出したのは今作が初めてではなく、ブラッシュアップされた印象は実は弱め。素材や構造、デザインを少しずつ変えつつ、徐々にグローバルモデル化した流れがあります。打感や打音に明らかな“コンポジット感”が出ているところ、程よい操作性とボールのつかまり感は、ミズノ『ST』シリーズに似た部分が多く見受けられます」

モノトーンの洗練されたヘッドデザイン

―兄弟モデル「―Tour-1」との違いは?
「『Tour-1』はすごくスイートスポットがはっきりしていて、インパクトで芯が明確に感じられる分、自分でどういう当たりをすれば飛ばせるかをすごく計算できるモデルです。操作性の高さが特徴で、今作スタンダードモデルとは違い、従来のカスタムヘッド的イメージを持ち合わせています。提示されたスペック(PXG Fujikura Pro Series 65/硬さS)では、クラブの完成度を語ることは正直難しいです」

PXG Fujikura Pro Series 55gと65g(どちらも硬さS)

―純正シャフトの印象は?
「フジクラ社と共同開発した純正モデル『55』『65』という、やや重めのラインアップが存在する点で、シャフトには他社にはない希少性を感じます。以前のコブラが60g台をそろえていたイメージが強いですが、現在は軽量化が進み、40~50g台が主流になってきました。そんな今、他にはない所有感を抱けるセッティングが魅力に映る人も多いのではないでしょうか。カスタムすると価格が高すぎて手が出せないという方にも、しっかりフォローできる選択肢の幅の広さも同社の特徴といえるでしょう」

「ボリュームゾーンを取りにきた同社の意欲作」(筒)

―どのような人向き?
「方向転換は図ってはいますが、メインのターゲット層は『PXG』のブランドカラーを熟知した人。以前の高価格帯モデルを使用したこともあり、所有感を得ながら独自の世界観を好んで使っていた人になると思います。その一方で、既存のファン以外にも興味が抱ける値段設定(税込価格10万4500円)と、グローバルな性能によって、新たな道を切り開こうと意欲のあるゴルファーに良いきっかけを与えてくれる可能性を秘めています。すでにアメリカや韓国では多くのファンを獲得しているブランドなので、これを機に興味を抱いてみるのも良いと思います」

特別感はなくても点数は満遍なく【総合評価4.2点】

【飛距離】4.0
【打 感】4.0
【寛容性】4.5
【操作性】4.5
【構えやすさ】4.0

・ロフト角:10.5度
・使用シャフト:PXG Fujikura Pro Series 65(硬さS)
・使用ボール:リトルグリーンヴァレー船橋専用レンジボール

取材協力/トラックマンジャパン株式会社、リトルグリーンヴァレー船橋

■ 筒 康博(つつ・やすひろ) プロフィール

スイングとギアの両面から計測&解析を生かし、プロアマ問わず8万人以上のゴルファーにアドバイス。「インドアゴルフレンジ Kz 亀戸店」のヘッドティーチャーを務める傍ら、様々なメディアにも出演中。大人のゴルフ選びフィッティングWEBマガジン「FITTING」編集長として自ら取材も行う。

PXG
発売日:2024/01/24 参考価格: 104,500円