テーラーメイド P770 アイアンを西川みさとが試打「見た目も打感も中空感ゼロ」
さらなる進化を遂げた新P770 HS40m/s未満の女子プロ評価は!?
心地よい打感と打音を追求し、新たに生まれ変わったテーラーメイド「P770 アイアン」。弾きの強いクロモリ鋼のL型フォージドフェースと、番手別にフェース面の厚み配分を最適化するプログレッシブICTを採用し、適正なボールスピードと高い寛容性を兼ね備えながら、各番手に求められる飛距離性能を発揮するという。そんな同社自信作をヘッドスピード(以下HS)の異なる有識者3人が採点。まずは、1WがHS40m/s未満の女子プロ・西川みさとが試打評価を行った。
「ロフト角通りに正確に狙える そこがメリットにもデメリットにも…」
―率直な印象は?
「ロフト角(7番で)33度という設定から、そもそもコンセプトが、そこまで飛距離を求めるクラブではないことが分かります。しっかり高さが出て、グリーンを上から狙っていけるアイアン。同時発売された兄弟モデルのツアー系キャビティバック『P7CB アイアン』とほぼほぼ似ている性能です。イメージよりポーンと上に上がってくれて打ちやすく、狙った距離をキャリーで正確に狙っていけるメリットを感じます」
―見た目の評価は?
「グースが入りすぎず、極端なストレートネックでもない、スッと自然にターゲットに合わせられる好みの形状です。気になるのはサイズ感…。どうしてもヒール側の高さが印象的で、ややフェース面自体が小さく見えてしまう。アドレスして上から見ると、インパクトゾーンが兄弟モデル『P790 アイアン』よりひと回り小さいので、そこが打つ前のプレッシャーとなってしまいます。もちろん小ぶりヘッドが好きな私には、好きなサイズ感ではありますが、ベストは『790』のほうかなと思ってしまいました」
―打感の評価は?
「非常にやわらかいわけではないですが、ボールのしっかり当たった打音が心地よく、やわらかすぎず硬すぎずの絶妙なフィーリングでした。軟鉄を5回プレスして鍛造させた『P7CB』を打ったときも絶妙な打感でしたが、中空構造の今作でもそこは全く変わらない印象です。甲高いわけではなく、しっかり落ち着いた打音の響きがしっかり耳に伝わり、適度な当たり感を覚えます。ちょうどいい耳心地でちゃんとインパクトできている感覚を演出している気がします」
―前作2023年モデルと比べると?
「ヘッド加工の仕上げ方が違う点で、見え方が変わった印象を受けます。今作はミラーっぽいクロム仕上げで、艶消し効果のあるサテン仕上げの前作より、構えたときに大きく見えて安心感につながる。両モデルを並べてじっくり比較しないと分からないレベルの微小な差ですが、加工が与える印象の違いから、若干23年モデルのほうが小さく見えます。今作の小ささが気になっていた私には、前作と比べるなら今作のほうが構えやすく、緊張せずにセットできる気がしました」
―実戦で使うにはちょっとシビア?
「そうですねー。自分がいつも想定している飛距離には到達できていないので、実戦では番手が全て変わってしまうリスクを感じます。ボールはグリーンで止められるけれど、距離を気にしてスイングが崩れてしまうことが心配…。もちろん見た目より扱いやすく、やさしさはふんわりと感じるので意外と打てると感じるゴルファーは多いと思いますが、難しいことには変わりはない。構えたロフト通りの高さに飛んでくれる正確性とイメージ通りに打てる部分は非常に実戦向きなので、あとは十分な飛距離を出せるかどうか。小ぶりな形状でも無理なく振り切れる人には、ベストマッチする可能性は大きいと思います」
―どのような人向き?
「今作のロフト角設定でも問題なくグリーンに乗せられ、飛距離よりも方向性を課題にしている人向き。ある程度パワーに自信があり、HSはドライバーで43m/s以上が対象になってくるでしょうか。逆にスピン量が多く、吹き上がってしまう傾向の強い人には、ミスを確実に抑える武器になってくれると思います。飛距離に自信があってショットに自信がある人にこそ、実戦向きな今作の性能をフルに活かしてほしいです」
やさしさを感じる本格派 やはり気になるのは飛距離…【総合評価3.9点】
【飛距離】3.0
【打 感】4.5
【寛容性】4.0
【操作性】4.0
【構えやすさ】4.0
・ロフト角:33度(7I)
・使用シャフト:NSプロ モーダス3 ツアー105(硬さS)
・使用ボール:リトルグリーンヴァレー船橋専用レンジボール
取材協力/トラックマンジャパン株式会社、リトルグリーンヴァレー船橋
■ 西川みさと プロフィール
1977年7月10日生まれ、埼玉県出身。1998年「日本女子学生選手権」にて優勝し、大山志保・古閑美保らとともにナショナルチームで海外大会に出場。2002年にプロテスト合格後は、美しいスイングを武器にレギュラーツアーで活躍。23年国内女子シニア「JLPGAレジェンズチャンピオンシップ」優勝。