テーラーメイド P770 アイアンを筒康博が試打「ガシッと潰せて縦距離そろう」
さらなる進化を遂げた新P770 ご意見番クラブフィッターの評価は!?
心地よい打感と打音を追求し、新たに生まれ変わったテーラーメイド「P770 アイアン」。弾きの強いクロモリ鋼のL型フォージドフェースと、番手別にフェース面の厚み配分を最適化するプログレッシブICTを採用。適正なボールスピードと高い寛容性を兼ね備えながら、各番手に求められる飛距離性能を発揮するという。そんな同社自信作をヘッドスピード(以下HS)の異なる有識者3人が採点。ご意見番クラブフィッター・筒康博が試打評価を行った。
「もはや中上級者限定ではない! ガシッと潰せていける秀逸打感」
―率直な印象は?
「前作2023年モデルと打ち比べましたが、改めて前作の高性能さを実感しつつ、寛容性の高さと絶妙なフィーリングが今作も継続されていることを認識できました。ボールの直径より少し高い所までバックフェースの肉厚部分があることで、ボールをしっかり潰しながら押せていける感触が残ります。操作性が高いので、高弾道で落下角度をつけてもいいし、低弾道で風の下を潜らせていくショットもできる。中上級者向けツアーアイアンというよりは、これから真摯にゴルフに向き合いたい人が全員買っても損しないほどの許容性と完成度の高さを感じました」
―見た目の評価は?
「現在、タイトリスト『T100 アイアン』を使っているのですが、ヘッド長が短くてコンパクトなところがほぼ同じで、見慣れた形状というところに好感が持てました。またネックからリーディングエッジ(フェース下部の刃)につながるラインが程よくストレートで、アライメントが取りやすい効果を感じます。フェース面だけで狙いを定めるのではなく、クラブ全体でロフトの立て具合や左右の方向性を決めやすい。もちろん歴代モデルもオフセットが大きいほうではなかったですが、今までの『P770』の中で一番ストレートフェース(構えて上から見たときにフェースが飛球線に対して直角)に感じました」
―ボールを潰せていけるということですが、打感の評価は?
「インパクトでフェース面にボールが触れてから、ボールが押し出されていくまでのコンマ数秒で、ガシッと潰せている感触がすごく気持ちよく感じます。重心の深さというより、高さの設定(の効果)だと思うのですが、ボールの中心よりやや上からヘッドを入れることができます。自然な角度でダウンブローできるので、私のHS(1Wで平均41~42m/s)でもしっかり打ち出し角が得られ、スピン量も程よく入ってくれる。きちんと距離を損なわずに適度な落下角度で落ちてくれるので、とても縦距離をコントロールできる実戦向きなアイアンだと感じました」
―他の「P」シリーズとの関係性は?
「テクノロジー面に限って言及すると、兄弟モデル『P790』の登場が同社アイアンの進化のきっかけだったように感じます。操作性、打感、寛容性を全て兼ね備えた中空構造モデルの登場という点で『P790』は大きな影響を与えている。ただ、それがコンパクトな『P770』になっても、ほとんど同じというところがシリーズ全体の強みに。一方で、『P770』と同じサイズ感で、もう少し操作したいという声に応えたモデルが『P7CB』なのだと思います。コンパクトなツアーアイアンのカテゴリー内でも、とにかく真っすぐ構えて真っすぐ打ち出したいゴルファーもいれば、ドロー・フェード、弾道の高さを打ち分けたいゴルファーもいる。その両方が選べるところが、同シリーズの充実したラインアップの特徴ではないでしょうか」
―同社が推奨するコンボセットについてどう思う?
「アイアンを1本から購入でき、メーカー側からコンビネーションでアイアンセットを購入できる点は、ものすごくありがたいことだと思います。同社の歴史でいえば、2000年代に発売された初代『ツアープリファード(TOUR PREFERRED)』シリーズは、ミドルからロングアイアンはハーフキャビティ、ショートはマッスルバック形状という、いわばコンボセットに似た形式で販売されていました。いくら上級者でも、毎回スイートエリアでボールをとらえられるわけではないので、構造的な安心感が得られる点では、コンボの需要は今後もますます増えていくでしょう」
―どのような人向き?
「17年発売の初代モデルから考えると、毎度ブラッシュアップされて寛容性や直進性も上がってきているので、もはや上達してから購入を検討するべきシリーズではなくなっている印象を受けます。アイアンセットの買い替えを考えている全てのゴルファーは一度は試すべきでしょう。ただ、ヘッドサイズが少し小さいと感じる人はいるので、そこは実際に構えてイメージが湧くかどうかを見極めてほしいと思います」
激飛びではなく打感と両立した精度の高い飛距離性能【総合評価4.6点】
【飛距離】5.0
【打 感】5.0
【寛容性】4.5
【操作性】4.0
【構えやすさ】4.5
・ロフト角:33度(7I)
・使用シャフト:NSプロ モーダス3 ツアー105(硬さS)
・使用ボール:リトルグリーンヴァレー船橋専用レンジボール
取材協力/トラックマンジャパン株式会社、リトルグリーンヴァレー船橋
■ 筒 康博(つつ・やすひろ) プロフィール
スイングとギアの両面から計測&解析を生かし、プロアマ問わず8万人以上のゴルファーにアドバイス。「インドアゴルフレンジ Kz 亀戸店」のヘッドティーチャーを務める傍ら、様々なメディアにも出演中。大人のゴルフ選びフィッティングWEBマガジン「FITTING」編集長として自ら取材も行う。