トラスvsトライビーム結局どっちだ!? 三角ネックパター徹底比較<ブレード編>
2機種の△パターを6つの視点から比較
今年4月に発売されたオデッセイ「TRI-BEAM(トライビーム)」は、特徴となる直角三角形のラケットホーゼルが、テーラーメイド「TRUSS(トラス)」のトラスホーゼルに酷似していると業界をザワつかせた。この“△パター戦争”は、トーナメント会場でも白熱したが、果たしてその機能は似ているのか? それとも別の効果が!? 勝手ながらライバル図式に決着をつけるべく、まずはブレードタイプ(ピン型)を比較検証した。
目次
- そもそも「△パター」とは
- 1.【コンセプト】建築構造vsテニスラケット
- 2.【数値】ロフト3.5度でやや重vsロフト3.0度でやや軽
- 3.【顔】 センターシャフト感vs王道ブレード感
- 4.【重心角】両方トウヒールバランスだが「#1」のほうが度合い強め
- 5.【弾道】 ピッチ&ランの感覚が持てるvs順回転までが早い
- 6.【打感】 溝の“極やわ”vs素材の“極やわ”
- 結論 どちらも“面”を意識したい右手重視ゴルファー向き
そもそも「△パター」とは
そもそも「△パター」とは、テーラーメイドが2020年に発売した4機種のみの「トラス」シリーズが始まり。「TB1」「TB2」「TM1」「TM2」と、2種類のヘッド×2種類のネックの組み合わせが売り出され、発売直後からダスティン・ジョンソン(アメリカ)が使用して話題に。国内では20-21年シーズンの賞金女王に輝いた稲見萌寧が「TB1」を使用し、一気に人気に火が付いた。その後、同社「TPコレクション」「スパイダー」シリーズの一部に同形状が採用され、今年「TP トラス」として新シリーズが発売された。
1.【コンセプト】建築構造vsテニスラケット
テーラーのトラスホーゼルは、橋脚などに用いられる三角形を基本とし、その集合体として構成されるトラス構造からヒントを得たデザイン。最新モデル「TP トラス」シリーズのカタログには『ヘッドとホーゼルを2点で接続する設計』と記し、ホーゼル中央部の重量をあえて削ることで適切な重量配分を行い、インパクト時のフェースの安定性を高める設計と紹介している。
一方のオデッセイ・ラケットホーゼルは、シャフトが2本に分かれていることで、スイートスポットを外したときでもフェースのねじれを抑え、ボールをコントロールしやすいテニスラケットと同じ考え方を採用している。カタログでは『ヘッドをより広い範囲で支える新形状』という表現で、1本のホーゼルより広範囲でフェースとつながって支えることで、オフセンターヒット時のヘッドのブレに強いと説明している。
表現は違えど、どちらもインパクト時のミスヒットを抑える安定感が共通した特徴のようだ。
2.【数値】ロフト3.5度でやや重vsロフト3.0度でやや軽
シンプルな形状のブレードタイプとして、今回はテーラーメイド「TP トラス B1TH トラスヒール パター(以下B1TH)」、オデッセイ「トライビーム パター #1(以下#1)」をピックアップ。ロフト角は「B1TH」が3.5度で、「#1」は3.0度の設定。ライ角はどちらも同じ70度。総重量は「B1TH」が554g、「#1」が538gと16gの差が開いた(※編集部調べ)。税込価格は「B1TH」の4万4000円に対し、「#1」は3万8610円と約6000円ほど安い設定となっている。
TP トラス B1TH トラスヒール パター
ロフト角:3.5度
ライ角:70度
長さ:33、34インチ
重さ:554g
フェース横幅:11.5cm
ネック高さ:8.1cm
グリップ重さ:79g(TM ラムキン SINK FIT SKINNY BK-BK-CP)
税込価格:4万4000円
トライビーム パター #1
ロフト角:3度
ライ角:70度
長さ:33、34インチ
重さ:538g
フェース横幅:11.6cm
ネック高さ:8.6cm
純正グリップ:76g(オデッセイ ピストル ブルー/ブラック)
税込価格:3万8610円
※「ネック高さ」とはソールした際の地面からネック頭までの長さを計測したもの
3.【顔】 センターシャフト感vs王道ブレード感
上から見た顔の違いは、同じブレード型でもシャフトの挿し方にわずかな違いがみられる。
パッティング理論に詳しいGPC恵比寿ヘッドコーチ・大本研太郎氏に聞くと、「どちらもうまく三角形のホーゼルを隠し、アドレスして上から見ると一般的なブレードタイプに見せる工夫が施されています」と前置きした上で、2モデルの一番の違いは、「シャフトがセンター寄りなのかヒール寄りなのか、その挿さる位置の違いにあります」と、三角形の頭(頂点)となるシャフト挿入位置を挙げた。
「トラスホーゼルは正三角形、ラケットホーゼルは直角三角形で、その面積は『B1TH』のほうが広くなっています。それによってシャフトの挿入位置は異なり、ややセンター寄りに位置している『B1TH』に対し、『#1』はヒール寄りでピン『アンサー』を代表する従来のブレードタイプに近い形状となっています。一般的なピン型から移行するなら、『#1』のほうがスムーズに移行しやすいでしょう」
4.【重心角】両方トウヒールバランスだが「#1」のほうが度合い強め
次にボールのつかまり具合が分かる重心アングル(角)を計測してみると、「B1TH」が85度、「#1」は54度という結果となった。平らな台にシャフトを置いた際、フェースが上を向く度合いが強い“フェースバランス、フェースが横を向く度合いが強い“トウヒールバランス”の2種類に分かれるが、両モデルとも後者の部類に入る角度といえる。
大本氏によると、「『B1TH』も『#1』もフェースの開閉が大きいインサイドインの軌道をイメージしやすいトウヒールバランスということが分かります」
「どちらもフェースの開閉を意識しやすいモデルといえます。一般的にブレード型は、自らボールをつかまえる動きに適しているトウヒールバランスが多いですが、両方とも例外なく同じカテゴリー。ただ、『B1TH』は『#1』より若干フェースバランス寄りで、比較的にフェースの開閉をそれほど必要としない傾向が強い。吊り型のストロークで、インサイドインの軌道が緩やかでも良いとされ、極端に言えば真っすぐ引いて真っすぐ出すストローク向きです」
5.【弾道】 ピッチ&ランの感覚が持てるvs順回転までが早い
次に同じ人工芝、同じ距離(2.5m)、同じボールの設定で打った状態を、パット専用計測器「パットラボ」で測定すると、スキッド(SKID:順回転を始める前の最初の横滑りをしている状態の移動距離。いわゆるキャリー)に違いが表れた。
TP トラス B1TH トラスヒール パター
ヘッドスピード:2.85mph
ボール初速:4.90mph
フェースアングル:0.12度
クラブパス:-3.1度
打ち出し角:2.23度
スキッド:13.5インチ
トライビーム パター #1
ヘッドスピード:2.92mph
ボール初速:5.01mph
フェースアングル:-0.07度
クラブパス:-2.9度
打ち出し角:1.61度
スキッド:13.2インチ
スキッドが「B1TH」の13.5に対し、「#1」は13.2インチと結果に差が出た。その原因はロフト角0.5度の差(B1THのほうがロフトがあるのでキャリーが出やすい)と思いきや、大本氏はそこが主な要素ではないと否定する。
「ロフト角+0.5度の差はありますが、これは確実にインパクトロフトを0度に戻せたときの理屈で、球筋に影響しているとは言いがたい。『B1TH』がロフト多めなのは、センター寄りにシャフトが挿さっている分、ロフトを寝かせることでフェース面を上から見ても視認しやすく設定していると捉えるべきでしょう」
「スキッドの長さについてですが、順回転が早くかかるほうが良いモデル、遅くかかるのが悪いモデルということは一概には言えません。重要なのは、転がりのイメージがプレーヤーの距離感にマッチしているかです。例えるなら、『B1TH』は少しだけキャリーが大きく出るピッチ&ランに適したアプローチウェッジ、『#1』はキャリーが短くランニングアプローチに適したピッチングウェッジ。どちらの感覚で打つとロングパットの距離感を合わせやすいか、その観点で選ぶと良いと思います」
6.【打感】 溝の“極やわ”vs素材の“極やわ”
フェース面の素材は、「B1TH」は複合素材からなる「PURE ROLL(ピュアロール)」と呼ばれる、45度の角度で下向きに入った溝が特徴のインサートを使用。一方の「#1」は、ボールのカバーと同じ素材を使用しているやわらかい打感が特徴の「ホワイト・ホット(WHITE HOT)」インサートを搭載している。
打感の印象を聞くと、「どちらがどちらということは言えないほど、両方ともかなりやわらかいフィーリングです。一般的に溝が多ければ多いほど、ボールとの接地面が少なくなる分、インパクトで受ける衝撃が少なくやわらかく感じるといわれていますが、逆に『ホワイト・ホット』は溝を使わず素材でやわらかさを表現しています。この素材のまま溝を作ってしまうと、やわらかすぎるのだと思います」と、両モデルのやわらかい打感について推測した。
その上で、打感の差については答えを濁す大本氏。「そもそも三角ネックパターのコンセプトとして、そこまで打感にこだわる人向けではないということが前提にあります。打感の微小な差を吟味するなら、削り出しパターや極力シンプルなデザインを選ぶべきでしょう。ツアートーナメント会場のような非常に硬いグリーンでプレーする人以外は、そこまでフィーリングに敏感になる必要はないと思います」
結論 どちらも“面”を意識したい右手重視ゴルファー向き
最後にどちらがどのようなゴルファー向きかを大本氏に聞くと、「どちらがどちらかというよりも大きな傾向はやはり同じ」と結論付ける。
「打感の比較でもそれほど差が確認できないところを見ると、この両モデルの一番のウリは一緒。“面”の意識を強く持って構えられるメリットが特徴だと考えられます。面を意識する=利き手の感覚を大事にしている人向き。右手で微小なアライメントの違いを察知し、右手で繊細に方向性を出していくプレーヤーが対象であり、特に左右の手の位置を逆に握るクロスハンドグリップに適していると思われます」
コンセプトが同じということで、多少の差はあるものの対象ゴルファーはほぼ一緒という認識で良い模様。ではクロスハンドに適してるとはどういうことか?
「理由は、パターフェースを右手のイメージと捉えたときに、クロスハンドだと下から右手(フェース面)、左手、右手となり、左右どちらかに偏ったバランスになりにくいからです。間に左手が挟まることで、バランスよく右手を重視できる(淳手の場合は、下から右手、右手、左手に)。プロアマ問わず『方向性が良くなった』『距離感が合う』といったコメントのほとんどは、右手の感覚を重きに置いた人からの反応と推測できます」
結論として、「“面”の意識の度合いでいえば、トラス『B1TH』のほうがよりその傾向が強く、トライビーム『#1』はあえて抑えることでブレード感を残した性能といえます」と、大本氏はその違いをひと言でまとめた。
『B1TH』か『#1』か――。ひとまずブレードタイプの場合は、基本的な対象ゴルファーは同じで、“面”を意識したい右手感覚でパットを打ちたいタイプ向き。あとは見た目とスキッドの長短の好みの差で判断しよう。特にクロスハンドの方は、上記を参考に購入を検討してほしい。(編集部・内田佳)
■ 大本研太郎(おおもと・けんたろう) プロフィール
1974年生まれ、PGAティーチングプロA級。株式会社スポーツラボ代表として、2012年パターレッスン専用スタジオ「パットラボ」、13年「GPC恵比寿」を開設。スコアメイクに重要なショートゲーム改善の研究を進め、特に重要性の高いパッティング指導に力を入れる。最近では藤田さいき、東浩子、臼井麗香らのコーチも務める。