コスパ最強ボール2024 キュキュッと止まって安けりゃ最高だ!スピン系編
コスパボール検証・第4弾 スピン系を試打比較!
ゴルフボールはできるだけ安くて性能のいいモデルを使いたいという声を受け、コスパ最強ボールを探る今企画。アイオノマーカバーのディスタンス系を打ち比べた第3弾に続き、第4弾ではウレタンカバーのスピン系ボールを取り上げる。ソフトな打感を提供する1ダース2000円台2ピースから、2冠を狙うあのメーカーの3ピースまで、最新スピン系8機種を打ち比べてコスパの観点で評価した。
今回もツアー3勝の日下部光隆プロに協力いただき、1ダース6000円以下の5社8モデルのスピン系ボールを試打(計測はトラックマン)。ドライバーのティショット、ウェッジのアプローチ試打をそれぞれ行い、データと値段を鑑(かんが)みてコスパ評価を独自に行った。
スピン系の目安は1ダース「4500円」!?
そもそもスピン系とディスタンス系の違いは何なのか? スピン系のカバーで使用されているウレタンは、やわらかい素材で摩擦力が強いことが特徴。硬くて反発力が強いアイオノマーに比べてコストがかかるため、値段は比較的高めだ。
「1ダースで1000~6000円台と幅の広かったディスタンス系に比べ、スピン系は安くても2000円台後半からです。飛距離やスピン量にそこまで大きな差はなく、ディスタンス系に比べて横一線の印象。大きく分けるなら構造が2か3ピースかくらい。普段、私は3ピースのタイトリスト『プロV1』を使用しているため、そこに近いフィーリングかどうかが評価のカギになりそうです。前回同様、ドライバーでの“ヒット感”とアプローチでの“乗り感”をメインに評価したいと思います」
ショットではカバーではなくコア(芯)から得られる当たった感触“ヒット感”、アプローチでは程よい重さ=フェースに乗っている“乗り感”が味わえるかどうか――。
「2000~3000円台の2ピースボールは若干の軽さがありますが、ヒット感も乗り感も及第点。5000円台に入ってくると十分に味わえる。値段を抑えた設定で考えると、4500円のラインを超えるかどうかが目安でしょうか(ディスタンス系は3900円)。中でも異質なのは、コストコ販売の『カークランドシグネチャー パフォーマンスプラス』ボールの2ダース4998円(税込)。3ピースなのにこの値段は、間違いなくスピン系の台風の目といえますね」
ドライバー調査「総距離No.1はスネル『MTB PRIME X』」
良し悪しの目安が分かったところで、次は個々のモデルの性能を調査。ドライバーテストでは、キャロウェイ「パラダイム Ai スモーク MAX ドライバー」ロフト角10.5度で、ヘッドスピードが46m/sになるように打ってもらった。総距離(TOTAL)を目安にスピン量(SPIN RATE)に注目。
※トラックマンのデータはHS46m/sに近くプロが納得のいった弾道のみを表示(並びは価格順)
「総距離の結果は、1位スネル『MTB PRIME X』の277.2yd。2位はスネル『MTB PRIME』と本間『TW-X』がタイで274.5yd。ディスタンス系の1位だった本間『D-1 スピードモンスター』の282.0ydには届かないまでも、平均するとそれほど大きく変わらない。スピン量も特に多く入っているわけではなく、ディスタンス系とほぼ同じ2000rpm台前半に収まっていました」
アプローチ調査「スピン量No.1は本間『TW-X』」
次は、より差が明確に出そうなアプローチテスト。三浦技研「TW-01 ウェッジ」の58度で、キャリーが30ydになるように調整して打ってもらった。スピン量(SPIN RATE)を目安に打ち出し角(LAUNCH ANG.)にも注目。
※トラックマンのデータは、30ydに近くプロが納得のいった弾道のみを表示(並びは価格順)
「スピン量の結果は、1位本間『TW-X』の6946rpm。2位キャロウェイ『スーパーソフト』の5823rpm、3位テーラーメイド『ツアーレスポンス』の5716rpm。同じ距離を打っているのに打ち出し角は30度より低めに出ているモデルが多く、コスパを求めるモデルでも低く出てキュキュッと止まるツアー系に近い特長が表れていることが分かります」
「ヒット感+乗り感」に価格を加味したベスト5は!?
ドライバーとアプローチの結果を総合的に判断し、価格とのバランスを加味したうえで日下部プロにおすすめのベスト5を選んでもらった。
「スピン系になると、プロ仕様の7000円台ツアー系モデルとの価格差がそれほどない点から、値段か性能かどちらを取るかで悩むところだと思います。1000~2000円の差ならプロと同じほうがいいという声もあれば、逆に性能がほぼ一緒なら1000~2000円安いほうがいいという声も多いでしょう。今回は、後者の方に参考になるランキングとして選びました」
【スピン系コスパおすすめランキング】
1位:テーラーメイド「ツアーレスポンス」4750円
2位:コストコ「カークランドシグネチャー パフォーマンスプラス」2499円
3位:本間「TW-S」5280円
4位:本間「TW-X」5280円
5位:スネル「MTB PRIME」3999円
※値段は全て税込み、1ダースの実勢価格
「テーラーメイド『ツアーレスポンス』が図抜けてバランスが良かったです。『カークランドシグネチャー パフォーマンスプラス』も同様に全項目で平均点が高い評価でしたが、『ツアーレスポンス』の優秀さが上回りました。私にとって実戦投入を即検討するべきレベル。本間ゴルフの2機種はどちらも性能面は優秀でしたが、5000円台の価格帯を考えると驚きは小さかったので3、4位に。スネルはディスタンス系で1位を獲得していたので、かなり期待をしていたのですが、予想よりアプローチでの乗り感が足りなかったので5位となりました」
日下部プロは最後に、ボールの選び方について指南する。「今回挙げた上位5モデルは、新品の性能だけでいえばプロの試合=実戦で使えるレベル。課題は均一性ですが、事前に良質のものだけ集めて試合用に準備しておけばいいわけですから(笑)。アマチュアゴルファーの皆さんはそこまでする必要はないと思いますが、今回のランキングを参考にして、距離感を一定にするためにブランド1銘柄に絞って使い続けることをお勧めします」
取材協力:東名カントリークラブ
■ 日下部光隆(くさかべ・みつたか) プロフィール
1988年「神奈川県アマ」、89、90年「朝日杯全日本学生」連覇などアマチュアタイトルを獲得。91年にプロテストに合格し、同年「マルマンオープン」でプロデビュー。95年「ペプシ宇部興産」、97年「カシオワールドオープン」、98年「日経カップ中村寅吉メモリアル」優勝。現在はレッスン活動に従事し、「WASSゴルフスタジオ」を主宰。