「躍進の理由は日本人エンジニアにあり!」 ~ナイキゴルフ編~ 2012年 Vol.5
GDO:日本市場向けに開発したモデルが、世界で受け入れられているとは面白い事実ですね。ナイキのクラブが日本人エンジニアによって開発されていることも驚きです。グローバルモデルも日本人エンジニアが開発を担当しているのですか?
小林:そうですね。そこが他メーカーさんとは違うところかも知れません。先ほど申し上げたように、日本のマーケットを意識して開発したクラブは、グローバルモデルとしても受け入れられる傾向にあります。ですから、私も現在は日本在住で日本のマーケットを見ながら、日本仕様のモデルだけでなく、グローバルモデルの開発も手掛けています。日本のマーケットでは、特にヘッドの見た目や打感が重視されますね。
GDO:見た目に関して言うと、「メソッドコンセプト」は、かなり変わったヘッド形状のパターですが、今回シルバー賞を獲得しました。評価したテスターからは、「実際に打ってみると良かった」という意見が多く聞かれました。
小林:このパターは、小ぶりのマレット形状を維持しつつ、できるだけ大きな慣性モーメントを確保しようと開発したモデルです。そのためにフェース素材は軽量のアルミ、後方のバーには重いステンレスを採用し、異素材を組み合わせたヘッドになっています。慣性モーメントを上げるためにはヘッドのトゥ側に重量があったほうがいいので、後方のバーは左右非対称に設計されています。また、ヘッドの中央は性能的には必要のない部分なので、後方のバーだけを残した形状になりました。ヘッドがシンメトリーだと、フェースが開いて見えたり、被って見えたりするものですが、左右非対称にすることによって、構えやすさも備えたパターに仕上がりました。
GDO:ナイキがゴルフ市場に参入した当初は、四角いドライバーを発売したりと、見た目でもゴルファーを驚かせるようなモデルが多かったですが、近年のナイキのクラブはトラディショナルな方向にシフトしているように感じます。今後は、どういった方向でクラブを開発していくのでしょうか。
小林:たとえ形状がトラディショナルであっても、テクノロジーは絶えず進化していきます。開発チームが集まる部屋の壁には標語が掲げてあるのですが、そのなかのひとつに“Never Stop Innovation”があります。先頭に立って新たな道を切り開いていくのがナイキの使命であり、ナイキらしさです。形状であれ、テクノロジーであれ、新たなことにチャレンジする精神は今後も変わりませんよ。