本当にポチっとして大丈夫?ギアマニアが考える中古シャフト購入トリセツ
最近のドライバーはネック部分に可変スリーブ(弾道調整機能)が、ついていないモデルの方が珍しい。メーカーのサポートがあるプロゴルファーでなくても、簡単にシャフトを交換できるようになった。スリーブの付いたシャフトは中古ショップも賑わせているが、購入時の注意点がいくつかある。ギアマニアがポイントを解説する。
耐久性は大丈夫?
シャフトにはスチール製とカーボン製があるが、どちらも長く使っていると耐久性が不安になるかもしれない。スチールシャフトの大敵はさびで、メッキ加工されている表面は目立たなくても、内部からさびていく。グリップ交換をするときなどにチェックしてみよう。
カーボンシャフトは素材としては半永久的に劣化しないとされているものの、これは常温で保管されている場合に限る。高温にさらされると強度が著しく落ちる。リシャフトする際、接合部分の接着剤を溶かすため、熱されることで強度は低下。もちろん猛暑の中、車のトランクにクラブを入れっぱなしにするのも良くない。
何年前のモデルまで“使える”?
そもそも性能面におけるシャフトの“賞味期限”はどのくらいなのか。ツアープロの使用年数がひとつの指標になるだろう。グラファイトデザイン「ツアーAD PT」は2006年に発売され、18年が経過した今も愛用者がいる。松山英樹が替えられない「ツアーAD DI」は2010年の発売だ。
1990年代後半から2000年代初頭にかけてリシャフトブームを作った、藤倉コンポジットの「スピーダー661」に代表される初代スピーダーシリーズはまだまだ使える。ただし、当時はまだ50g台以下のモデルが少ない。また古いシャフトは、それなりの歴史を刻んで中古市場に出てきたことをお忘れなく。個体の素性を把握できないリスクは考えよう。
互換性、長さ、硬さのチェックを忘れずに
スリーブ付きシャフトを購入する際の注意点は、まず互換性を確認すること。同じメーカーのヘッドに装着されていたスリーブでも、モデルによって仕様が変更されていることがある。スタッフに確認するか、ネット購入時は備考欄を必ずチェックしよう。どんなに人気があるシャフトでも、装着されているスリーブのヘッドメーカーが違うと値段も変わってくる。
長さにも気を付けたい。正しいシャフト長を知るためには、店舗で計測してもらうべきだろう。硬さ選びにも注意を払う。単体で販売されているシャフトは、ヘッドメーカーの純正シャフトの設定よりも“少ししっかりめ”と覚えておくといい。米国仕様モデルはさらに硬い。
また、中古シャフトは過去の使用者が先端を切ったりして、硬さや特性を調整しているかもしれない。ショップ側があらかじめ確認してくれると安心なのだが、見逃されることもある。同じ銘柄のシャフトが並んでいたら、模様の位置などを比べて確認したい。
中古シャフトの“キャリア”は分かりにくい
中古ショップは買い取り時に細かく検品しているとはいえ、ショップにたどり着くまでの経緯を把握するのは至難の業。スリーブを付け替えられたり、ヘッドから抜き差しされたりしたことで強度が低下している可能性もある。ゴルファー保険等でリスクヘッジすることを勧める。
そもそもシャフトに付いている純正スリーブを日本国内で販売しているメーカーはプロギアだけ。装着されているスリーブが社外品のこともある。その場合、クラブメーカーからの保証は受けられない。筆者は社外品のスリーブに装着されたシャフトが抜けなくなったトラブルが過去に2回ほどある。ギアマニアゆえに、数百本のうちのそれだけではあるが。
今回はリスクばかりを記したが、中古シャフト市場は急速に拡大している。なにせ性能における賞味期限が非常に長いのだ。昔、憧れたシャフトを格安で手に入れ、最新ドライバーに装着してみる方法もあるだろう。事故だけを回避すれば、シャフトも中古で楽しめる。(文・田島基晴)
■ 田島基晴 プロフィール
1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。