“THE 削り出しパター”考 極上の打感をUSEDで巡る
オデッセイの登場によりソフトな打感を生むフェースインサートのパターはゴルファーの間で定着した。フィーリングが柔らかいのに加え、リーズナブルな価格もあって、多くの人々が手に取ることに。一方で、削り出しパターのしっかりとした打感と打音、優れた操作性に魅力を感じるファンも依然として多い。今回はそんな削り出しタイプにゴルファーがひかれる理由を中古市場を通して考えていきたい。
タッド・モアからキャメロン、そして現在へ
1980年後半から1990年代初頭、クラフトマンシップが台頭したことで削り出しパターの歴史が始まった。キャロウェイに買収される前のオデッセイ「ロッシー2」は1996年「マスターズ」でニック・ファルド(イングランド)の活躍によって認知された。
その5年前、マックスフライ「タッド・モア」でイアン・ウーズナム(ウェールズ)が1991年大会を制した。それまで鋳造が主流だったパター市場において、手作業による削り出しの精密さと芸術性を持ち込んだのが、このパターである。金属の素材感を生かしたシャープな形状と、ミーリング加工によるフェース面の平滑性は、多くのプロや愛好家に衝撃を与えた。
この波はスコッティキャメロンによって作られた「クラシック1」というパターでさらに大きくなる。ベルンハルト・ランガー(ドイツ)が1993年大会で優勝。CNC加工技術の進化により、ピン「アンサー」のような複雑な形状も削り出せるようになり、やさしさが加わった。
削り出しパターの人気が最も高まったきっかけが、1997年大会で初優勝したタイガー・ウッズのスコッティキャメロン「トライレイヤード」だろう。当時は軟鉄を削り出し、打感を柔らかくするために、ノーメッキで、黒い酸化被膜を施すことでさびを防いでいた。現在の素材は軟らかいステンレスが主流となり、さらなる加工が可能になった。
削り出しパターの魅力はエネルギー伝達、フィードバック、操作性
軟らかい素材のフェースインサートは、両面テープなどを用いてヘッドに固定する。ボディとフェースが一体になっていることが多い削り出しパターはエネルギーロスが少なく、インパクトのパワーがそのままボールに伝わる。ゴルフクラブの原点と言っていい。他のクラブとの親和性も高いと考えられる。
軟らかい素材のフェースインサートだと、どこに当たっても芯で打てている“錯覚”を抱きやすい。削り出しパターは金属音が響くため、芯で打てたか否かをすぐに把握できる。ミスの原因もわかりやすく、距離感が“迷宮入り”しにくい。
また、打ち手の技術が結果に反映されやすいため、オートマチックなやさしさとは引き換えに操作性が高い。ミスはミスとしてわかりやすくフィードバック。芯を外さない練習を重ねる必要があるだろう。
打感を決めるフェース加工
削り出しパターの打感のチューニングは、フェース面を加工することで行っている。ミーリングのキメが細かい音は高く、しっかりとした打感になる。ウッズが愛用しているスコッティキャメロン「ニューポート2 GSSプロト」の表面は鏡のように磨き込まれ、しっかりした打音が出る。筆者がウッズのプレーを間近で観た時に強く感じたのは、1Wショットの飛距離でも、スティンガーショットの鋭さでもなく、パターの打音が大きいことだった。
逆にフェースを深く削るディープミーリングと呼ばれる加工は、ボールとの接地面積が減るので打感はソフトになり、音も低くなる。距離感と打感は好みによるので、イメージに合うものを使おう。
中古で削り出しパターの打感を味わおう
やはり推しはスコッティキャメロンなのだが、フェースインサートもウエートも装着されていないシンプルなモデル「スタジオステンレス ニューポート2」(2002年)は中古でなかなか見つからない。「セレクト ニューポート2」(2020年)は近年のモデルではシンプルな部類に入る。状態の良いものは少なくなったが、適度なミーリングで打音も楽しめる。3万円台後半で見つかるだろう。
ピン「PLD ミルド アンサー 2」(2022年)は、さすがブレードタイプの本家と言える、無駄のない仕上がり。3万円台が相場だ。
マスダゴルフ「スタジオ2」(2009年)もダイレクトな打感が魅力だ。さらに打感が直接的なのは、打面が厚い「スタジオ1」(2007年)がオススメ。中古ショップではなかなか見つからないため、オークションサイトなどでは3万円台で流通している。
フェースインサートの登場によるソフトな打感は、フェースの反発を落とすことで成り立っている。つまり、エネルギー効率を犠牲にすることで柔らかさを生み出している。削り出しパターとは全く異なるアプローチだ。削り出しパターはシビアではあるが、レーシングカーのようなダイレクトな操作性と魅力が詰まっている。一度はこの打感を味わってほしい。(文・田島基晴)
■ 田島基晴 プロフィール
1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。