このコースで真の80台!

安心してください。過去の教訓、生きてますから! 美浦ゴルフ倶楽部(後編)

2016/02/26 09:15

過去の教訓+癸生川流アプローチでパーを奪取(その1)

2打目のターゲットは奥に見える縦に並んだ2つのバンカーの間。見た目には猫の額のような狭さで、かなりの高い要求と言える

13番ホール、N村のティショット。飛距離こそ出ないものの、何とかフェアウェイの右サイドぎりぎりをキープする。とはいえ、セカンドショットがこれまた難解。狙うエリアにはバンカーが点在しているのだった。

(癸生川プロ)奥にバンカーが縦に2つ並んでいるのが見えますよね。その間がターゲットになります。
(N村)えっ、あんなに狭いエリアを狙うんですか。
(癸生川プロ)実際には、両者の間には縦50ヤードくらい差があるんです。キャリーで170~180ヤード出せれば、手前のバンカーを越えて奥のバンカー手前に球を置けます。
(N村)敷居の高いショットですが、5番ウッドで狙ってみます。
(癸生川プロ)実は左に突き出した崖のようなOBゾーンの奥には、フェアウェイがあるんです。あまり左へ引っかけるとOBになりますが、そのフェアウェイがあることを頭に入れておくと、気持ちが少しラクになるのではないでしょうか。
(N村)ありがとうございます。あれっ、パー5、セカンドショットと言えば……。

N村はかつて、北野正之プロから指導を受けたことを思い出した。ロングホールの2打目、3打目に適した“ナイスショット一歩手前”の距離を稼げるショットのことだ。

・スイングの中で頭の位置を進行方向に動かすイメージを持ち、ボールを上から打ち込む
・フォローは小さく、低くして方向性を高める

当時受けた2つのポイントを抑えて、N村が放ったセカンドショットは……ややトップ気味に。ボールは左方向に飛び出してから大きくスライス。ラフでワンクッションして、最初のバンカーの少し先のフェアウェイに止まった。

グリーン回りの難しさは美浦ゴルフ倶楽部の中でも随一。左サイドにはOBゾーンがすぐそばまで迫り、あと一歩のところで命拾い

160ヤード近く残した3打目でグリーンを狙うN村。ここからが難易度1位の13番ホールの真骨頂である。縦長のグリーンの右サイドには深いバンカーが口を開けており、左サイドはOBゾーンが間近に迫る。バンカーに入れればグリーン奥のOBを意識せざるを得ず、ダフリやホームランというミスの上塗りにもなりかねない。

この日最も細心の注意を払い、アドレスに入るN村。6番アイアンで放った弾道は当たりも方向も思い通り。ボールはピン手前で着弾、そして左へ跳ねてカラーのほうへ……まずい!

駆け寄ると、写真のようにぎりぎりのところで耐えていて、N村は胸をなでおろす。そこから、癸生川プロ直伝のアプローチショットで寄せワンに成功。ようやく目標とした難易度上位のホールでパーを獲得できたのだった。

過去の教訓+癸生川流アプローチでパーを奪取(その2)

斜めに横切るようなフェアウェイを狙うティショットは相当な難易度の高さ。右サイドの池をケアしながら、最後まで気を抜けない

そして、N村がどうしてもパーを取りたい、17番ホールに到着。理由は、401ヤードという全長にある。N村が400ヤードを越えるパー4を大の苦手にしていることはお伝えした通り。先ほどのラウンドでも、3パットを含むダブルパーの8。データを裏付ける結果になったからだ。

池を時計回りに周回しながら、グリーンを目指す右ドッグレッグホール。スライス弾道の傾向が強いN村にとっては、池が目障りで仕方ない。ティグラウンドでターゲットの設定に悩むN村に、癸生川プロから助け舟が出た。

「フェアウェイの中心に仮想のラインを入れてください。右側はNGですが、左側はラフまで含めてOKというように考えたらどうでしょう。少しはリラックスできませんか。ラフに入れればグリーンまで遠くなりますが、池に入れないことを優先すべきです」

なるほど、“捨てサイド”は左方向か。するとN村の脳裏に、今度は田島創志プロから受けたアドバイスが浮かんだ。

・オーバースイングを改善する方法。その1つとして、アーリーコックを使う

トップがコンパクトになった結果として、球のつかまりが良くなり、ドライバーの飛距離アップにつながっている。絶対に右に行かせたくないこの場面には、この上ない金言と言えるだろう。

セカンドショットの狙い方についてアドバイスを受ける。池の上からグリーンを目指すN村に対し、プロから池に極力かからないルートを推奨される

ターゲットをフェアウェイ左サイドとラフの境目に設定。早めのコックを意識したN村のティショットは、タイミングが合わずにフェアウェイ右方向へ飛び出してしまう。だが、いつもとは違う、左回転のドロー弾道でフェアウェイの左サイドをキープできた。

そして、セカンド地点。ピンまでは165ヤードのやや上り。意気軒昂にアドレスの態勢に入るN村。

(N村)では、5番アイアンで狙いますね。
(癸生川プロ)ちょっとN村さん、どこを向いているんですか。アドレスが池に向いていますよ。
(N村)ええ、それでいいですよ。ボールとピンの位置を結べば、自然と池を向くことになるじゃないですか。
(癸生川プロ)ピンポジはグリーン右奥ですよ。スライスしたら池もしくはガードバンカーに入ってしまうので、池にかからないラインにターゲットを定めたほうが安全です。
(N村)でもそうすると、グリーンから外れた左サイドのエリアを向くことになりますよ。
(癸生川プロ)5番アイアンで打つわけですから、振り遅れによるミスも想定しておくわけです。
(N村)スライスの曲がりの分、保険をかけるわけですね。

N村はロングショットの技術を信用されていないことに、やや悔しさがこみ上げた。だが、そんな感情はすぐに吹っ飛ぶことに。癸生川プロが言う通りの弾道を描き、グリーン手前に大きくショートしたからだ。

ボールをキャリーさせる位置を2人ですり合わせる。奥のボールがN村の狙いだったが、癸生川プロが指差す手前の位置からランを使って転がす方法に変更

3打目地点からピンまでは約30ヤード(エッジまで5ヤード+エッジからピンまで25メートル)。低く打ち出して寄せる、癸生川プロから伝授されたアプローチを発揮する最高の舞台。グリーンエッジから奥5メートルまでの幅の中で落としどころを2人で確認。すると、写真のように2メートルくらいの差が出ており、癸生川プロのほうが手前に設定した。

(N村)ずいぶん、イメージに差が出ましたね。PWでエッジから4メートルのところにキャリーさせて、21メートル転がすイメージですが……。

癸生川プロの手招きに誘われるように、N村のファーストパットはカップに吸い込まれた

(癸生川プロ)僕は9番アイアンでエッジから2メートルにキャリーさせて、23メートル転がすイメージなんです。N村さんは球を上げたがりますが、小さい振り幅のほうが、インパクトの誤差が小さくなるのでやさしくなる。だから、9番アイアンを選ぶほうがベター。慣れないうちはイメージが出しづらいでしょうが、このほうが絶対寄る確率は高くなるので、チャレンジしてほしいですね。
(N村)分かりました。では、9番アイアンで。右足寄りにボールを寄せて、左足体重に……(ブツブツと確認事項をおさらいする)。

癸生川プロの言う通り、N村には慣れが必要のようだ。低く打ち出せたもののイメージより手前にワンバウンドしてしまい、2.5メートルをショート。このホールのリベンジに並々ならぬ執念を燃やすN村は、入念にラインを読み、自分のイメージ通りにストローク。すると、癸生川プロの手招きに引き寄せられるようにカップに沈められた。

14番ホールのセカンドショット、そしてこのホールのティショットといい、過去の教訓をうまく生かすことができた。コースマネジメントが少し板についてきたということか。遅ればせながら、良い流れになってきた。本当に遅いけれど……。

N村のスコアカード。上段が1人で回った時のスコア(102)、下段が癸生川プロのサポートを受けて出したスコア(93)。ショートゲーム強化の成果が3パット撲滅と寄せワンの増加としてあらわれた

そして18番ホールをボギーで終えたN村は、淡い期待を胸にスコアを集計。パット数で劇的な成長を見せたものの、スコアは93でまたも目標には届かなかった。だが、癸生川プロからはパットの上達を認められた。

「ドンマイ、N村さん。それでもショートゲームを強化した成果はあらわれていたと思いますよ。その証拠に、3パット以上はなかったじゃないですか。このコースはプロの試合が行われるほどで、上級者でも80台で回るのは簡単ではありません。その中で難易度の高い4ホールを2オーバーで回れたのは大したもの。今回は、ほかのホールまで手が回らなかっただけで、ラウンドの回数を増やせば、スコア80台の可能性もあると思いますよ」

2013、2014年に国内男子ツアー『HEIWA・PGM CHAMPIONSHIP in 霞ヶ浦』が開催された美浦ゴルフ倶楽部。クラブハウスには選手のサインや写真が飾られ、華やかな雰囲気

連載当初の計画では、GDOが選定した難易度ランキングのトップ5のコースのどこかで達成することを思い描いていた。それがかなわなかったいま、N村にもう一度チャンスが与えられた。しかも、難しいコースを条件に、N村がコースを選定できるというものだ。

パターの上達の成果を試せるところがいい。そう考えたN村は、グリーンが難しいコースを検索していると、「オーガスタ並みの高速グリーン」「12~13フィートの高速グリーン」という見出しが目に飛び込んできた。ここしかない! N村が挑戦する最後のコースが決まった。

・パットは最も心地よい振り幅で作った距離感を基準に。距離などによってアジャストさせる

(取材協力/美浦ゴルフ倶楽部/PGM)

※次回の公開は3月11日(金)を予定。N村が選んだ、最後に挑戦するゴルフ場とは!?

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