ゴルフ日和

リゾート地のゴルフ場に求められる独自の魅力 ~プレジデントCC軽井沢

2022/08/30 12:00
徹底管理された洋芝で勝負するリゾートコースの実状とは

憧れの避暑地。そんな言葉が日本で最も似合う長野・軽井沢でプレーすることは、首都圏のゴルファーにとって夏の理想の過ごし方のひとつだろう。国内屈指のリゾート地には数多くのコースが点在。それぞれが独自のセールスポイントを打ち出しているなかで、プレジデントカントリー倶楽部軽井沢は美しい洋芝が自慢だ。メンテナンスに力を注ぎ、リゾートに求められる非日常感を演出している。

リゾートコースの裏側に見えるもの

軽井沢駅から北に車で40分、パブリックのプレジデントCC軽井沢は別荘が立ち並ぶエリアの先に位置する。近隣には、同じく宿泊施設を備えたリゾート型のゴルフ場がもう2つ。住所は群馬県吾妻郡だが、観光エリアとしては軽井沢の範囲内だ。標高は駅周辺よりも300~400mほど高い1300m。軽井沢に到着して「避暑地といっても意外に暑いな」と感じた人でも、ここまで来れば首都圏とは明らかに違う涼しさを実感できるだろう。

コースはキャンプ場やスキー場を備える「プレジデントリゾート軽井沢」の一施設でもあるため、クラブハウスにはホテルが隣接。その間にある温泉には、ホテルとクラブハウスの両方からアクセスできる。ホテルを出てすぐにあるコースでプレーして、ラウンド後には温泉で疲れを癒す――。ゴルファーにとっては最高の環境だが、実際には宿泊客とゴルフ場の利用者は必ずしも一致していないという。

中川守支配人はリゾートコースならではの課題があると話す

「ホテルのお客様の多くは家族連れです。奥さんと子供を残して、お父さんはゴルフというケースは少ないですね」と話すのは中川守支配人。「宿泊客の中にはプレーはしないけどゴルフ場をのぞいてみたいという方もいて、タンクトップにサンダルという姿でいらっしゃることもあります。厳しいドレスコードは設けていませんが、さすがにお断りしています」

リゾート地らしい話であると同時に、ホテルとゴルフ場の利用者が分かれていることがよく分かるエピソード。可能性という意味では、全100室のホテルが満室でも、ゴルフ場は空きが目立つこともあり得る。コースには独自の魅力が求められるわけだ。

高地を生かしたセールスポイント

コースから望める雄大な浅間山もリゾート感を高めてくれる

リゾートコースの特徴として、2サムの利用が多いことが挙げられる。「2サムはもちろん、お断りしていませんし、1人でプレーされる常連さんもいらっしゃいます」。各ホールが比較的セパレートされており、広いコースで2人だけ、あるいは1人だけという特別な雰囲気が味わえる。

そんなリゾート感をより高めてくれるのは、メンテナンスが行き届いたコース。細い葉が密集する洋芝には、日本で一般的な野芝や高麗芝とは違った美しさがある。グリーンキーパーを務める加納達也副総支配人は、「洋芝は寒さに強く、暑さに弱いので、どこでも採用できるわけではありません。昔に比べれば気温は上がりましたが、ここは暑くても30度なので、今のところなんとかなっています。さらに気温が上がっても、私が現役の間に洋芝が育てられなくなるほどの気温にはならないでしょう」と笑みを浮かべた。

豊富な知識と経験で洋芝を管理する加納達也副総支配人

首都圏のゴルファーが普段は体験できない青々とした洋芝と、秩父から取り寄せたバンカーの真っ白な砂が描くコントラストは別世界。加納副総支配人は日本で100人ほどしかいない芝草管理資格一級を有していることも、美しいコースでのプレーを約束するセールスポイントになっている。

美しいコースを維持するために

気候に恵まれているとはいえ、洋芝を美しい状態で維持するには手間がかかる。野芝のコースであれば、週に一度刈り込む程度だが、生育が早い洋芝は2日に一度刈り込む必要がある。「芝は一気に刈ると枯れてしまうので、上の3分の1しか刈れません。一度伸ばしてしまうと、元に戻すのは時間がかかるので、刈り高を常に保つ必要があるんです」。時にはラフが長くて難し過ぎるというクレームもあるが、だからといって明日までに短くしておきます、というわけにはいかない。

トラックに山々と積まれた刈り取り済みの洋芝

芝刈りはハーフずつ、毎日午後に行う。刈った芝を林に吹き飛ばす、あるいはコースの脇に山積みにしているコースもあるが、景観にこだわるプレジデントCC軽井沢ではさらに手間をかけ、トラックですべて回収している。リゾート地にもかかわらず、カートの乗り入れを禁止しているのも、コースを美しく保つためだ。

リゾート地「+α」の魅力

コースメンテナンス以外にも、地元の直販所と契約し、現地でしか食べられない高原野菜をレストランのメニューに加えるなど、新たなセールスポイントを生み出している。昼食時には“幻のキャベツ”とされる「419」を食べ放題で提供。輸送時に傷みやすいため、遠方にはほぼ出荷されない大皿に盛られた生キャベツに、多くのゴルファーが手を伸ばす。これもまた、軽井沢を訪れたからこそ味わえる非日常でもある。

レストランで好評を博している「419」キャベツ

「周辺のコースとはお互いに情報交換をするなど、いいお付き合いをさせてもらっています。競争はありますが、メンバーシップだったり、カートの乗り入れを実施していたり、それぞれにスタイルが違うので、必ずしも直接のライバルではないんです」(中川支配人)

毎年多くの観光客が訪れる日本有数のリゾート地であっても、ゴルフ場に自然と利用者が集まってくるわけではない。だからこそ、独自のセールスポイントを持ったコースが集まっていることが、ゴルファーにとっての軽井沢の魅力のひとつ。プレジデントCC軽井沢も、間違いなくその一翼を担っている。

ライバル関係にある近隣コースとの意見交換も活発に行われているという
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