ゴルフ日和

“モノ言うグリーンキーパー”から転身した新米支配人の信条 ~清澄GC

2022/12/14 12:00
グリーンキーパー歴30年の野呂田峰支配人が抱くコース運営への思いとは

プレー料金の下落によってゴルフがより身近なスポーツになった一方で、料金が高くてもメンテナンスやサービスが見合うものであれば構わないという利用者もいる。接待など特別なラウンドであれば、価格よりも質を優先するのは当然だろう。埼玉・東松山市の清澄ゴルフ倶楽部は、そんなゴルフ場の代表格。価格競争に巻き込まれることなく、高い人気を誇っている。

主導する野呂田峰(のろた・たかし)支配人は、2021年1月に長く務めたグリーンキーパーから転身したばかり。そんな少し珍しい経歴の持ち主である支配人が目指すゴルフ場とは――。

「グリーンキーパー出身」だからこそ

東京都心から車で約1時間強。清澄GCは関越自動車道東松山インター周辺に数多くあるゴルフ場のひとつで、より東京に近いエリアには東京五輪の開催コースとなった霞ヶ関カンツリー倶楽部などの超名門コースが並ぶ。清澄GCも同じメンバーシップではあるものの、インターネット予約でビジターを広く受け入れている。「超名門はライバルではありません。我々はネットで予約できるコースの中でトップでありたいと考えています」。誰もが足を運べる名門コースというのが、清澄GCの位置づけだ。

東松山市の「市の花」ぼたんをモチーフにしたシンボルマーク

そうしたなかで、利用者の満足度に大きく影響を与えるのがコースのメンテナンス。プレー料金が上がれば、期待度も比例して高くなる。「多くの支配人が『ゴルフ場はコースが大事』と口にすると思いますが、私がそれを心の底から思えるのはグリーンキーパー出身だからだと思います」と自負する。

以前のコースで10年、清澄GCでは20年とグリーンキーパーとしてのキャリアは30年。前の年に成功した方法を続けるのではなく、さらに良いメンテナンスのやり方を常に追い求めてきた。「30年やっても、夏と冬をそれぞれ30回ずつしか経験できないと考えたら、同じことを繰り返すのはもったいないじゃないですか」。後任のグリーンキーパーは野呂田支配人のもと、15年間コース管理を担当。これまでの蓄積はしっかりと引き継がれている。

上質のサービスとプレー環境

コースレーティングは73.2(チャンピオンティ)と、接待での利用が多いにも関わらず、俗に言う“やさしい接待コース”ではない。難コースに苦しんでも、次はリベンジしたいと思わせるのはメンテナンスの良さがあってこそだろう。「価格を下げ、セルフで組数をたくさん入れるというやり方ではプレーがスムーズに進まないので、このコースには合わないと思います」。価格を維持し、全組キャディ付きで質の高いサービスとプレー環境を提供するのは、難度の高いコースに合わせた営業スタイルでもある。

グリーン手前に池が広がる手ごわい17番パー3

また、GDOの利用者による口コミランキング(21年)では「接客のいいゴルフ場」で東日本1位に輝いた。「支配人になったばかりの私が何かをしたわけではなく、以前から『全てのお客様に心地よい空間を提供する』という考えが従業員に根付いているからだと思います。メンバーを大切にする運営は当然ですが、メンバーシップコースにありがちな、常連のメンバーを優先するようなところがないので、ネット予約のお客様にも満足いただけているのではないでしょうか。ネットから予約して、接待ゴルフに利用されるケースも多いようです」。ビジターでも肩身の狭い思いをすることなく、質の高い接客を受けられることが魅力となっている。

“モノ言う”グリーンキーパー

興味深いのは、職人的なイメージがあるグリーンキーパーから転身した野呂田支配人が経営やサービス面にも明るいこと。「前にグリーンキーパーを務めていたゴルフ場は、そんなに口を出すなら営業サイドに回ってみろ、という雰囲気になったので退職しました。その後、このゴルフ場で20年に渡ってグリーンキーパーをやらせてもらったので、いいかげん恩返しをしなければ、という思いで支配人をお受けしました」

意見があればどんどん進言するのはグリーンキーパー当時からのスタイル

かつて清澄GCにも客足が遠のいた時期があった。当時は週に一度の休業日のほとんどをセルフデーにして営業していたが、グリーンキーパーだった野呂田支配人はこれに反対。「セルフデーでも従業員の人件費はかかりますし、安くお客さんを入れても売り上げには大きく貢献しません。それならば、休業日を作ってしっかりコースメンテナンスをした方がいい。それぞれのメリット、デメリットを示して説明しました」。野呂田支配人の意見は受け入れられ、現在もセルフデーは月に一度に限定。定期的にしっかりとメンテナンスを行うサイクルを続けている。

さらに、2004年からは公式ホームページにコラムの連載を開始。タイトルは「グリーンキーパーのひとり言」から「新米支配人のひとり言」に変わった。

「ゴルフ場のホームページはコースガイドや交通アクセスなど、定番の項目が並んでいるだけでほとんど更新されません。多くの人に見てもらうためには何か更新されるものが必要だと思って、コラムを書き始めました」。その内容はコース管理の業務や機材の紹介、芝草の知識、マナーに関する話題など多岐にわたる。グリーンキーパー時代から、専門分野にとどまらず、ゴルフ場全体を見てきたことが分かる。

“ネット予約ができるNo.1のゴルフ場”を目指して

メンテナンス確認を兼ねてコース内を巡ることも多いという

「ネットのクチコミはリピーターにもつながるので頻繁にチェックしています。コースが長いという理由で女性のお客様に(5点満点中)2点と評価されたときには、それはないだろうと思いましたけど…」。このクチコミがすべてではないが、清澄GCでは3年計画でレディスティを新設中。利用者の反応を見ながらレストランのメニューの見直しも随時行っている。

大きな柱となるのはコースメンテナンスと接客。“ネット予約ができるナンバー1のゴルフ場”を目指すからこそ、野呂田支配人の広い視野でプラスアルファの改善を続けている。

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