科学の力でお悩み解決

頑固なひじ引けとオサラバだ 「グリップエンドをおヘソへ」 レッスンの最前線からLIVEルポ

2023/06/18 16:00

これからお届けするレッスンのやり取りは、感覚論とは無縁の科学目線の世界。最新技術を使ったいまどきのコーチたちのリアルなレッスンの一部始終を生レポート。人の振り見て我が振り…直せます。

インパクトでひじが引け、スライスやシャンクに悩む三田さん(30代・男性・平均スコア105前後)

ゴルフ歴1年、ベストスコア98の三田和希(さんだかずき)さん。ドライバーやアイアンで右に球が出てそのまま右に曲がるスライスや、ラウンド中に突発的に出るシャンクが悩みの種。インパクトで左ひじが引ける「チキンウィング」のカッコ悪いスイングも直したいと語る。

プロに比べて2度オープン。アドレスでの2度の差はわずかだがスイングに大きく影響する

まずは、アドレスを後方から比較する。ツアープロ(写真右)はバランスライン(右わき、グリップエンド、膝がしら、土踏まず)が直線で結ばれ、安定感のあるアドレスに。また、右腕が左腕に比べてやや体側で肩は飛球線に対して、平均「8度オープン」に。これに対し三田さん(写真左)はバランスラインから外れる箇所が多く、右腕がやや前に出て肩も「10度オープン」と左を向いたアドレスになっていた。

テークバックからトップへとしっかり体を使ってクラブを上げている

ハーフウェイバックでは、三田さんの肩の回転角度は「51度」としっかりと回っている。手元の位置もラインの中に収まり綺麗な動きをしているが、クラブヘッドがラインの下を通り、切り返し以降「アウトサイドイン」軌道を描く動きが見られる。トップでは肩が「93度」としっかりと回転ができていて、「ハーフウェイバックでのクラブヘッドの位置は少し気になりますが、トップまでの体の動かし方は自信を持っていいと思います」と担当した住吉大輔(すみよしだいすけ)コーチは評価した。

手元が体から離れると「アウトサイドイン」軌道になりやすい

ダウンスイングを確認すると「クラブが水平になった時、上半身の前傾角度に対してクラブフェースがオープンになっています。ボールが右に行くことや突発的なシャンクになる原因の一つになっていると思います。ハーフウェイダウンでは、前傾角度と同じぐらいまでフェースを閉じたいですね」と問題点を挙げた。

上半身と手を使ったスイングになり、左ひじを引く動きが見られる

さらに比較すると、「三田さんはインパクトで左のお尻が見えない。これは体の回転ができていない証拠で、正しく下半身リードができるプロはインパクトからフォロースルーではまず左のお尻が見え、続いて左肩の下からクラブヘッド→ひじの順番で見えます。三田さんは、左ひじが先に見えてクラブも低い位置に振り抜いています。下半身の動きが止まってしまい、手打ちのスイングをしているのでしょう。インパクト後に左ひじを引く動きが見られます」(住吉コーチ)。

0.3TのTとは、トゥワードの意味でターゲット方向に動いていることを意味している

正面からアドレスを見るとボール、手元と頭の位置はいずれも問題ない。トップではプロは腰が0.3インチ(約8ミリ)目標方向(トゥーワード)に動くのに対して三田さんはアドレス時の位置のままだが、これも問題なし。頭がやや右に動いているものの「許容範囲です」(住吉コーチ)。

左に体重がのったインパクトだが・・・

インパクト付近の動きを見ていくと、プロは腰の位置がアドレスに比べて3.1インチ(約79ミリ)左に動き、しっかり左足に体重を乗せている。これに対し三田さんは1.1インチ(約27ミリ)と移動は少ないが、しっかりと左に体重を乗せている。ただ「ダウンスイングからインパクトにかけて腕だけを使ったスイングになっているので、体の回転が足りず、左ひじが引ける『チキンウィング』になりやすい。ダウンスイングでは体の回転に同調しながらクラブヘッドが動くのが理想的といわれますが、腕を使ったダウンスイングでは、手元が体から離れやすくフェースも開きやすくなります。そのため、右に打ち出し右に曲がる『プッシュスライス』や突発的に『シャンク』が出ます。三田さんの修正ポイントとしては、ダウンスイングからフォローにかけてクラブと体を同調させ、体の回転を使った動きをつかむことです。そうすればダウンスイングで手元が体から離れることもなくなり、フェースが開くことも、インパクトで左ひじをインサイドに引く動きも減り、ミスヒットも減少すると思います」と改善点を提示した。

グリップエンドをおヘソにつけてスイングするドリル

クラブと体を同調させるイメージで回転させる

体を回転させるために住吉コーチが提案したのが「グリップエンドをお腹に付けてスイング」するドリルだ。クラブと体が“一体”となって動くので同調する感覚がつかみやすい。ポイントは、グリップエンドをおヘソに付け、肩・両腕でできた三角形を崩さず、スイングすること。

ドリル後のハーフウェイダウンではオープンだったフェースがクローズに

ドリル後のスイング映像をレッスン前と見比べると、ダウンスイングで上を向いていたフェースが前傾角度に近い角度に。手元も体から離れず、クラブヘッドもインサイドからの軌道に変化している。

インパクトで左ひじが引ける動きがなくなりクラブと体が同調したフォローに

インパクト付近でも、左ひじが引ける動きが解消され、カッコ悪いと言っていた左ひじが伸びた状態に変化した。

プロのフォローのようにお尻がしっかりと回転している

フォロースルーでも急激にクラブをインサイドに引く動きがなくなり、体とクラブが同調した動きへと。クラブヘッドの抜ける位置がまだ低いが「動きに慣れてくることで解消されます」(住吉コーチ)。

「ヘッドアップしてるよ」がスイングへの妨げに

「初心者の頃『ヘッドアップしてるよ。頭を残してボールをしっかり最後まで見て』といわれたアマチュアも多いのではないでしょうか。プロのインパクト付近をみても頭をしっかりと残し、ボールを見てる映像をみる機会多いと思います。ヘッドアップはスイング中に頭や前傾角度が起き上がりながら目標方向を向いてしまう動きのことをいい、その動作をしないようにするために表現していると思います。

つまりは、ボールをしっかり見る=前傾角度をキープしながらインパクトを迎える動きができることだと思います。この表現自体は悪いことだと思わないのですが、三田さんの場合はボールをしっかり見る意識が強すぎて、インパクトで体が止まってしまい体の回転を使ってスイングすることができず、結果、ダウンスイングからフォーローと手を使ったスイングになり、スライスやシャンクが出ていたのだと思います。常識と思っていたことと真逆ともとれることを受け入れるのは難しいですが、それができれば上達が早まり、ゴルフもより楽しくなることもあります」と、さらなる上達へのアドバイスをおくった。

■ 住吉 大輔(すみよしだいすけ) プロフィール

1988年10月30日生まれ、神奈川県出身、ゴルフテック横浜所属。
高校時代に競技ゴルフを始め日本体育大学に進学。大学在学中にレッスンプロの道を目指し、レッスンに必要な運動力学や機能解剖学を 専攻。感覚的なレッスンではなく科学的に分析をし事実に基づいたレッスンを行い、初心者から上級者までわかりやすく丁寧なレッスンを心がけている。