マスターたちのスイング診断 VOL.4 ザンダー・シャウフェレ【解説/目澤秀憲】
シェフラー、マキロイ、松山、ラーム、ケプカ…マスターたちによる祭典がいよいよ始まる。オーガスタを攻略してグリーンジャケットに袖を通すのは誰か。マスターズ優勝をサポートした経験を持つ目澤秀憲コーチが、優勝候補たちの最新スイングを分析・解説する。4回目は、ザンダー・シャウフェレ。
クリス・コモと組んでスイングが激変した
ことしの2月頃からクリス・コモ(タイガー・ウッズの元コーチ。現在はトム・キム、ジェイソン・デイらを教える)と組み始め、スイングがだいぶ変わりました。トップのレイドオフ(トップでクラブが飛球線より左を差す形)具合が収まって、クラブがニュートラルか若干クロスに入るようになり、そこからシャローイング(クラブが背中側に倒れる動き)気味に下ろすようになりました。
今まではフラットに肩が回りやすく、トップでレイドオフがきつくなることがありました。レイドオフがきついとどうなるかというと、時に大きく曲がりやすい。PGAツアーに帯同していたときに彼の優勝争いを見る機会は多くありましたが、ドライバーを曲げるシーンをよく見かけました。大抵はレイドオフがきつくなり、寝て下りてくるクラブをタテて当てようとしてミスが出ていた。球が左に出て左に曲がることもあれば、右に出て右にいくこともあり、左右両方に曲げていました。クラブをタテて当てるのは悪いことではないのですが、タテ過ぎるとやはり弊害の方が大きくなってしまいます。
クリスとのスイング改造のメインフォーカスは、そのレイドオフ度合いを減らすことに尽きます。手とヘッドの位置が同じライン上にいる時間を長くし、クラブが後ろに行きすぎないようにしているはずです。具体的な動きとしては、肩をタテに回すようにして、トップまで真っすぐクラブを上げていきます。肩がタテに動くことで体も回り過ぎないので、そのメリットは大きいと思います。そして切り返し以降で自然なシャローイングが生まれるように、クラブを寝かしていく。そのように若干ループした動きのほうがフェースコントロールも楽ですし、実際スイングパスも良くなって、上質なドローを打てるようになっていました。その状態が維持できれば、緊張するような場面でもそんなに大きく曲がることもないはずです。
スイングを大きく変えてすぐの「プレーヤーズ選手権」で2位に入ったのは、本人にとってかなり自信になったと思います。ボール初速も速くなり、189mph(約84.5m/s)近く出ていましたし飛距離も伸びていました。それにしても、ここまで見た目での変化が出るのは、よっぽど本人の中でスイングを大きく変えた証拠。左腕も今までだったら回外方向(外旋)でしたが、今は回内方向(内旋)に動いています。肩をタテに回すと、左肩が低く右肩が高くなりやすいので、体の回る量は以前より少なくなる。スイングを変えたことで、本人は体の動かし方に違和感しかないはずです。それでも一連のスイングチェンジをこの短い期間でやり遂げ、なおかつ結果を出したのは、想像を絶する凄さだと思います。
プロ入りしてからもコーチでもあるお父さんとずっと二人三脚でやっていましたが、彼も30歳を超え、プロコーチの知恵を借りる必要性を感じたのでしょうね。本人の貪欲さに頭は下がりますし、これぐらいのレベルの選手でもスイングを修正する必要が出るほど、やはりPGAツアーのレベルは高いということ。どんどんいい選手が現れますから、いつまでも同じ場所で停滞していられないフィールドということですね。(取材・構成/服部謙二郎)