トミー・フリートウッドの朝練に密着 「頭の横に棒」は何のため?
プロゴルファーはコース上で戦っているシーンばかりに脚光を浴びがちで、試合前の“準備”は意外と知られていない。PGAツアーのトップ選手たちは試合に向けてどんな準備をしているのか。5月上旬の米ツアー(PGAツアー)「ウェルズファーゴ選手権」(ノースカロライナ州・クエイルホロークラブ)を取材した際、実際にスタート前の練習に張り込んでみた。
今回注目したのは、ショットメーカーのトミー・フリートウッド(イングランド)。練習場に現れると、まずはトラックマンを設置。さらにキャディバッグから1本の棒を抜き、ターゲットに対して真っすぐの線の目印として置いた。スタート前にインパクトの数値をチェックするのはこのクラスの選手の日課。日々の血圧チェックのようなもので、極端に悪い数字が出ていないかをチェックしている。
続けて、ある練習器具を取り出した。4つの赤い突起がついたプレートで、真ん中にボールを置くところがある。アイラインゴルフの「スピードトラップ2.0」という器具で、クラブ軌道を矯正できる。4つの突起は取り外し可能で、例えば打つ側から見て「右手前」と「左奥」を外せば、インアウト軌道に矯正できる。アウトインで打つと「右奥」と「左手前」に残った2つの突起に当たるためだ。逆に「右奥」と「左手前」を外せばアウトイン軌道に矯正できる。
フリートウッドが外した突起は「左手前」のみ。試合後、本人にその意図を聞くと「テークバックとインパクトの矯正さ。アウトにクラブを上げる癖があるんで、まずはテークバックで(ゲートの間を通して)しっかりオンライン上に上げること。あとはしっかりとインに振り抜いて、インパクトでフェースがスクエアになるように管理しているんだ」と教えてくれた。
軌道は自然なイン・トゥ・インを描き、フェースは軌道に対して常にスクエア。まさにフェースの開閉が少ないフリートウッドならではの練習だろう。さらに奥側の突起の間にパターカバーを置いて、絶対にクラブを外にいかせないように“蓋”をしていたのも見逃せない。
しばらく球を打ったあとに、別のドリルが始まった。キャディがフリートウッドの目の前に立ち、アライメント棒を持って手元の辺りに棒の先端を掲げる。棒に当たらないようにするには、手元が浮かないようにする意識が必要だ。
実際、キャディはインパクトまで棒を動かさないから、見ていると当たらないか心配になる。「僕の悪い癖は手元が浮いてインアウトに振ってしまうことなんだ。先ほどの練習器具でもそうだけど、インに振れるように矯正しているんだ」。球を打ちながら、トラックマンのインパクトデータも合わせてチェックしていた。
手元矯正をしばらくやったのち、キャディは続けて棒を頭の左側に掲げた。「悪くなると右側に倒れこんじゃうからね。頭の位置が右に下がらないように、左にある棒をずっと意識して振っているんだ」。今度は棒に当たらないようにではなく、棒に触れたまま振るような意識。「目指すはステイセンター。真ん中にいるまま振るようしているよ」
スタート前にこれだけ体の動きを矯正し、手元が浮いたり、右に倒れ込んで軌道が極端にならないようにしているわけだ。思えばこの練習、数年前にZOZOチャンピオンシップで来日していたときもやっていた気がする。
PGAツアーで長年シード選手として活躍するには、やはりこうした日々の愚直な練習の積み重ねが求められるのだろう。フリートウッドを見ていて、あらためてそう思った。(編集部/服部謙二郎)