中島啓太 ボクの打ち方LESSON vol.1 「ドローとフェードは手首の形で打ち分ける」
プロになって初めてのメジャー「全英オープン」を前に、中島啓太がインタビューに応じた。「今はスイングに迷いがない」と本人も自信を持つその打ち方について、ポイントをいくつか教えてくれた。今季、頼もしい武器になっているドローとフェードの打ち分け方やクセの修正方法まで、2回にわたってその内容をお届けする。(前編)
いまは「ドロー」に絶対的な信頼がある
「中島啓太が最近ドローを打っている」という話をよく耳にするようになった。生粋のフェードヒッターが、確かに今季はドローを駆使してピンを攻めるシーンが増えているように見える。
本人も「今はドローがひとつの武器」と、その球筋の存在を好調の一因に挙げるほど。「ドローイメージのホールが来たときは、かなり自信を持って攻めていけています」と、今までとは違う“左曲がりの弾道”に手応えを感じているようだ。ここ最近の毎度の優勝争いからはその言葉にも納得。今季ドローボールを打ち始めた理由はどこにあるのか。
きっかけは開幕戦の「東建ホームメイトカップ」だった。「開幕前まではしっかりフェードボールを打ちたいと思っていたんですが、試合で左ピンに対してのドローの攻めがほとんど成功していることに気づいたんです。あれ?ドローの方がイメージが出やすいじゃん、と」。思わぬ手応えに自分でも驚いたという。
以前はドローを打ちたいシーンでも「曲がり幅や縦距離のコントロールができなかったので、フェードボールで逃げていました」と言うが、ひとたび「打ちやすい」と思うとスイングに迷いが消えるから不思議だ。
「左手前ピンをショートアイアンで攻めるなら、ピンの右奥に落として左手前に戻すとか、左奥ピンならグリーンセンターに落として左前にはねる球を打つとか、左ピンに対しての攻め方が確立しました。得意なアングルと得意な距離、そしてピンポジションが全部そろったときは、今はすごく自信があります」。
卓球のスピンのかけ方と似ている
その「ドローとフェードの打ち分け方」を本人に聞いてみた。中島流は面白い。いわゆるボール位置やクラブ軌道といった類の話ではなく、なんとインパクトの瞬間の手の使い方で打ち分けているというのだ。
「手首と手先が少し器用なので、卓球のラケットみたいな感覚で球にスピンをかけています」と言いながら、手首を動かして解説してくれた。理屈はこうだ。ドローは卓球でいうオーバースピンをかけるイメージで右手をかぶせてボールを包み込む。一方でフェードはカットスピンをかけるようにフェースを返さずに右の手の平を前に出してボールを押し込んでいくというイメージ。
とても真似のできる代物ではないが、中島は速いスイングスピードの中で、その芸当をやってのける。「球筋をイメージしてからインパクトの手の動かし方を逆算しています。卓球でいう左側のコートに足の速い球を打つのがドロー、右側のコートの相手に近いほうに打つのがフェードになります」。
中島の“ラケットの使い方”には、実はもう2つのパターンがあり、球の高低も打ち分けられるという。「球を確実に上げたいときは、始動で早めに手首を使って上げて(コックを入れる)、インパクトで早めにほどいていく。球を確実に抑えたい時はその逆で、手首を使わずに上げて、インパクトで手首の角度をつけていくようにします」
プロ初優勝を遂げた「ASO飯塚チャレンジド」の最終日、プレーオフでみせたラフからの9Iでのウィニングショットは、まさにその「絶対に球を上げたいショット」だった。「始動で手首を使ってクラブを上げて、インパクトで上にかちあげる感じでした」と、ピンそば30cmに寄せるスーパーショットを放った。
実に器用というかなんというか…我々もそのエッセンスだけでも真似したいもの。「球筋を想像してもらって、そこから逆算すれば、運動神経のいい方なら絶対にできると思うんですが…。でも、ほんと技術を伝えるのって難しいですよね。プロアマでレッスンしていても自分で何言ってんだろうって思うこと、よくあります」と苦笑い。
思えば彼はまだプロ1年目、自身のスイング改造は順調に進んでいるが、アマチュアへのレッスンはまだまだ勉強中ということなのだろう。(編集部/服部謙二郎)