「骨盤を3Dにキュッキュッ」杉原大河
金谷拓実、中島啓太、蝉川泰果、平田憲聖…。2023年の国内男子ツアーは毎週のように若手が入れ替わりで活躍している。互いが互いを刺激し合う相乗効果で、まさに“強い世代”を形成しつつあるのは間違いない。彼らはどんな経歴でゴルフをしてきたのか、そしてどんなスイングをしているのか。「U-25世代」にスポットを当て、彼ら自身の口でスイングをセルフ解説してもらった。
キャリー平均310ydでボールスピードは驚異の80m/s越え
3回目はツアー2年目の23歳、杉原大河だ。徳島県出身。ジュニア時代から競技で好成績を残し、2014年に「世界ジュニア」で優勝。進学した東北福祉大学では同じ“タイガ”の名を持つ蝉川泰果の1学年先輩にあたる。日体大の河本力とは同学年で、在学中の2019年に下部ABEMAツアーの「石川遼 everyone PROJECT Challenge Golf Tournament」で優勝。プロ転向後も2023年に同ツアーの「Novil Cup」で初勝利。今季はレギュラーツアーが主戦場で、トップ10に2度入るなど存在感を少しずつ示している。賞金ランクは53位。出場機会が減る後半戦は数少ないチャンスを活かしたいところだ。
早速、彼のスイングをみてみよう。杉原は飛ばし屋の多い若手の中でも1、2位を争うロングヒッター。身体は細くともボール初速は80m/sを超え、キャリーで平均310yd以上飛ばすという飛ばしの逸材だ。その体の使い方、注目してほしい。
―飛ばす上で必要なものは?
1Wショットは特に振り切ることを意識していますね。ちょっとでも抑える動きをすると、ミスが出やすくなります。今は多少曲がってもいいから、抑えるような動きをあまりせずに振るようにしています。アドレスしたら、フィニッシュ目がけてしっかり振ります。
―杉原プロのスイングは見ているだけでも尋常じゃなく速いですが、速く振るコツはありますか?
力まないことが一番大事ですね。腕や肩などに力が入って上半身が強くならないように意識しています。基本は下半身で振っているので。
―下半身のどのあたりを動かしているんですか?
骨盤の動きを特にイメージしていますね。股関節を切り上げるように、腰をキュッキュッと動かして、上半身は下の動きについてくるだけ。骨盤を回転させるというよりは、“3D”じゃないですけど、骨盤をタテに動かして、その結果、回転もしているという感じです。ショートアイアンなどクラブが短くなればなるほど、そのタテの動きが強くなります。バックスイングで右の股関節を切り上げて、切り返し以降は左の股関節を切り上げていきます。
―骨盤をタテに動かすって難しそうですが…。
今は中井学コーチに習っているのですが、昨年初めてスイングを見てもらったときは「骨盤の動きが悪い」と指摘されました。骨盤が横に動いて、腰全体が左右にスライドしていたんですね。やはりそれだと速くは振れないですし、ミスにもつながりやすい。ダウンスイングでスウェーしやすい人などは、腕の力を抜いて、股関節を入れ替えるようにキュッ、キュッと動かしてみてください。
―力まないで打つコツはありますか?
まずは頑張って「きょうは力まない!」と意識してください(笑)。僕がやっているのは、体の腕以外の別の部分、例えば腹筋やコア(体幹)などに力を入れています。スイング中はそこのあたりにいつも力を入れてフィニッシュまで振る。逆に腹筋などの力がフッと抜けたときなどは、やっぱり上体に力がいってしまって、ダウンスイングで上半身が浮いてきます。
―少しオープンスタンスで左足つま先も開いているように見えますが。
左サイドを広く使おうという意識はないですね。むしろ右サイドの意識のほうが強い。右サイドを広く使って、ワイドにクラブを上げて、ワイドにクラブを下ろしています。特にダウンスイングで遠くに下ろすことが大事で、上げたところに下ろしてくる。スイングアークが大きいと遠心力を使えますからね。調子が悪くなるとどうしてもクラブが鋭角に下りてくる。それこそ先ほど言った、抑えようとしたときなどは、ワイドに下ろすというのが難しくなります。やっぱり下半身で動かせてないと、そこ(ワイド)には下ろせないです。
―それにしても、なぜそのようなスピードが出せるんですか?
昔から振るのは得意で…。でも、速く振るためには、やっぱり「振る練習」はしたほうがいいと思いますね。僕も球を打たないで、単純に速く振るだけの練習をやっていますから。(球を打つ)ドリルとかはあまりやるほうではありませんが、振る練習だけは欠かさずやっています。
―ドライバーでもハンドファーストに構えますよね?しかもアドレスでちょっとヘッドをボールから離して浮かせています
昔からのクセなんですよね、特に理由はないんですが…。もう、そこは変えられないんです。
飛ばし屋がやっていることはつい真似したくなってしまうものだが、ヘッドを浮かせて構えるのは何か「力み」をとるコツのひとつなのかもしれない。思えば初めて存在を知ったのは彼が小学生の頃。当時、六甲国際GCにあった江連忠プロのETGAゴルフアカデミーに通っていた杉原少年を覚えている。同プロに習っていたプロゴルファーたちから「タイガ、タイガ」と可愛がられていた幼いゴルファーが、まさかその十数年後にツアーで活躍する長距離ヒッターになるとは…。(取材・構成/服部謙二郎)
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