キャロウェイ特集
2023/11/06

かつてない“スケルトン窓”付きフェース 性能の違いを楽しめるAIパターって!?

連載:AIフェース開発の旅
オデッセイの新作「Ai-ONE」。ブレードタイプにはバックフェースに透明な小窓が。これにはいったいどんな意味がある?

キャロウェイゴルフが展開するパターブランド「オデッセイ」の新作が注目されている。「Ai-ONE」の名が示す通り、2019年に「エピックフラッシュ」で導入して以来、AI(人工知能)で業界をリードし、ウッドからアイアンまで使われてきた技術が、ついにパターにまで採用された。透明の小窓が搭載された、かつてないパター。いったいどんなモノなのか。

■ジョン・ラームがいち早く投入

ラームが実戦投入した「Ai-ONE」と同製品。マレット型はソールに透明の小窓がついている

キャロウェイと契約するメジャー覇者のジョン・ラーム(スペイン)が4位に入った9月のDPワールドツアー「BMW PGA選手権」で新たなパターを手にしていた。形状はこれまで使用してきたオデッセイのホワイトホットOG・ロッシーSとほぼ同じだが、色はネイビーが基調で、フェースの裏側が覗ける透明な長方形の窓があった。これこそ、AIフェースを採用した「Ai-ONE」だった。

「米国の開発陣によると、ラームがテストで1ラウンド使ったときの最終ホール、10mのロングパットは芯を外したが、これが入って本人も驚きだったそう。距離感は良かったが芯を外した感覚があって『いままでのパターなら入っていない』と。それが(投入の)決め手になったと聞いています」(キャロウェイゴルフ アジアプロダクトマネジメント担当者)

日本では、10月に千葉で開催されたPGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」の練習会場にピン型、ツノ型、マレット型などがお目見えし、平田憲聖今平周吾らがテストして話題に。「フィーリングが良かった」など反応は上々だった。直近では、女子の原英莉花がテスト。関心はさらに高まるばかりだ。

■ザンダー・シャウフェレ「見た目がカッコいい」

ザンダー・シャウフェレはツノ型をテスト。「AIがミスを抑えてくれる」と絶賛

そのZOZO-が閉幕した後、台湾人の祖父母が日本在住で日本と縁のある東京2020オリンピック金メダリストのザンダー・シャウフェレが契約するキャロウェイのイベントに登場。

このパターについて「小窓があってフェースが見える。見た目がカッコいい。AIフェースでオフセンターヒット時のボールスピードやパフォーマンスが安定するので、ツアー担当者から『3パットが多すぎるからこれを使ったらいいんじゃないか』とすすめられた」と明かした。

パッティングでの課題のひとつがオフセンターヒットした際にボールのスピードが落ちること。キャロウェイによると、打点がトウやヒールに1㎝ずれることで、ボールスピードは約20%ダウンするというデータもあるそうだが、「Ai-ONE」のAI設計インサートは打点が1㎝ずれても、ボールスピードの減少を約5%(10mで50㎝)に抑えるのだという。

シャウフェレはさらに感触の良さにも好感を持ったといい、「今使っているパター(オデッセイ トゥーロンパター ラスベガス)とヘッド形状も似ている。個人的には赤が大好きだが、このブルーも非常に気に入っている」と米国で本格的にテストする予定という。

■透明の小窓の正体は

透明なポリカーボネート製ウインドウを通して、インサート裏側に形成されたAI設計の複雑な隆起を見ることができる

そもそも、AIを使ったパターフェースとはどういうものなのか? キャロウェイゴルフのブランドコミュニケーションズ担当者によると、まずは「クラブと違ってボールスピードの最大化ではなく、オフセンターヒット時のボールスピードの安定を最大限にすることに着目」して開発は始まった。

そのうえで、AIは「素材の違いやインサートの形状違い、フェースデザインの違いなどのデザインをシミュレーションし、最適な組み合わせを提示した」。それが「Ai-ONE」の特徴のひとつでもある、複雑に隆起したインサートなのだという。

「Ai-ONE」は樹脂とアルミを併用したフェース、同時発売の「Ai-ONE MILLED」のフェースはチタン製。2つに共通するキーワードは「どの打点でもボールスピードを安定させること」。すなわち「ボールスピードを一定にすることで、縦距離がそろうことはもちろん、ボールの転がりの質も安定させてくれます」(同担当者)

そして、最も象徴的ともいえるのが透明の小窓だ。担当者は「『Ai-ONE』は新しいフェーステクノロジーをあえて見える形にするため、ポリカーボネート製のウインドウを設置しています」と、AI設計を視認できることが目的と説明。「Ai-ONE MILLED」は高価格帯ということもあり、「高級感を優先するためウインドウはつけていない」という。

■キャロウェイのAI技術の進化

右が「Ai-ONE」、左は「Ai-ONE MILLD」のフェース。AI設計により複雑な隆起を背面に備えたまったく新しいインサート。打点がずれてもボールスピードの減少を抑えてくれる

キャロウェイは2019年に初めてAIを導入して以来、同分野でリード。研究者のレベルやスーパーコンピューターの処理能力は当時よりもはるかに上がっているとされる。

インプットするデータ数も当初は少なかったが、いまでは多数の要素を加えてフル活用。膨大なデータの処理は、年単位から月単位へ、さらにもっと短い日数で処理して新作を生み出すことが可能になったのだ。

同社が言うところの「パターフェース開発の旅」もまたその2019年から始まっていた。「昨年段階で新しいフェースは完成していましたが、ツアーでのテストを複数回重ねつつ、コスメなどの調整を行ってきたことで今年ローンチすることになった」(同担当者)

■「AIはミスの傾向を助けてくれる」

「Ai-ONE」のAI設計インサート。AIが素材として推奨したアルミ併用のアイデアは当初耐久性で断念したが、樹脂との組み合わせで課題をクリアし、製品化が実現した

AI技術が進化している世の中にあって、ことゴルファーには感性も重要と思える。シャウフェレは会見でこう話している。

「ゴルファーである以上、フィーリングは重要だが、AI技術は自分のミスの傾向を助けてくれる。自分の場合、左にひっかけるミスの傾向があるが、それに対してAIが抑制して良いゲームにしてくれる。ミスの傾向を補正してくれると考えると、プロのハイレベルな世界で戦っていくには非常にマストな存在だ」

もちろん、アマチュアゴルファーにとっても同じこと。3パットを1パットで上がれるとしたら、スコアアップに寄与するパターが楽しくなることは間違いない。

キャロウェイが見据えるAIの将来について、ブランドコミュニケーションズ担当者は「我々の哲学であるDSPD(Demonstrabiy Superiar and Pleasingly Different/明らかに優れていて、その違いを楽しむことができる)に沿った、全てのゴルファーがゴルフを楽しむためのテクノロジーとして、AIをさらに活用してより良い製品づくりをしたいと考えています」と話している。

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