ダンロップ特集
2023/03/24

「ボールは1つ」つくる難しさと面白さにのめり込んだ開発者のこだわり

連載:勝利へと導くギア開発に懸ける情熱
「特許の塊」といわれるゴルフボール。開発者は何を考え、新ボールを生み出しているのか(撮影:落合隆仁)

ゴルフボールは「特許の塊」といわれる。白いカバーはもちろん、内側のコア(中心部)にも多くの技術が注ぎ込まれているからだ。

同時に、開発者たちの試行錯誤や熱意も込められている。毎年のように生み出される新作の開発にあたる者はどんなことを考えているのか。

研究者気質で “つくる側”へ

大学院の頃、先輩からの誘いでゴルフを始めた井上。研究者として進んだ道はゴルフボールの開発だった(撮影:落合隆仁)

直径4センチ強のゴルフボール。「クラブを替えてもボールは(基本的には)1つ。全番手に影響する」。住友ゴム工業スポーツ事業本部商品開発部の井上英高(敬称略、以下同)はそれがゴルフボール開発の面白さであり、同時に難しさであるという。

東京工業大学大学院で炭素繊維の研究をしていた井上は先輩に誘われてゴルフを始めた。「まったくのお遊びですが、ゴルフの楽しさに触れた」。スイングやスコアよりもギアに関心を持ったというあたりは、研究者らしい。中でも最も興味を持ったのがボールだった。

入社した2011年当時の知識は、「大きく分けてウレタンカバーとアイオノマーカバーのボールがあるという程度」だった。「これ1つですべてのクラブに対応するのは難しそうだな」と感じつつ、「『難しそう』というのは自分にとって『面白そう』」と仕事のやりがいを見出す。以来、主にゴルフボールの開発・研究に携わることになった。

全番手で最適な性能を発揮させるボールづくり

ボール開発の難しさは「1つのボールで全番手に対応しなければいけないこと」と話す(撮影:落合隆仁)

ボールに求められる性能は番手によってさまざま。ウッド系では飛距離性能、アイアン系ではスピン性能やコントロール性能、パターなら打感といった具合だ。

現在、多くのツアープロも使用する同社のフラッグシップモデル「スリクソン Z-STAR シリーズ」の設計を担当する井上は、プロから「アイアンのフィーリングは…」とフィードバックされると、「具体的に何番アイアンで打ってどのように感じたのか。ショートアイアンなのか、ロングアイアンなのか」と細かい部分を突き詰めないと気が済まない。

「ある番手のクラブではほとんど差がないのに、ほかの番手ではスピン量が増えたりしてしまう。一筋縄ではいかないのがボール開発の難しさです」

全番手で求められる性能を発揮するボールをどうやってつくり出していくのか。

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