クラブにこだわりをもつ青木瀬令奈がその性能に驚いたシャフトとその理由
20代の選手が圧倒的な力を見せつけている今季の国内女子ツアーにあって、青木瀬令奈がその勢力に一矢報いようとしている。プロ14年目の31歳で、2015年に獲得したシード権を守り続けているどころか、21年から3年連続でツアー優勝を遂げている。その青木が秘かに新兵器を準備しているという。藤倉コンポジットの新シャフト「SPEEDER NX VIOLET( バイオレット)」だ。
■ドライバーのヘッドスピードが40.5m/sに伸びたワケ
青木のクラブセッティングは女子プロの中でも少し変わっている。何しろアイアンが8番と9番しか入っていない。ウッドが1、3、5、7、9番、ユーティリティ(UT)が5~7番、そしてウェッジを3本入れている。ドライバーの飛距離的にどうしても2打目で大きいクラブが必要となるからだ。ところが、最近になって青木に、ある変化が見られるようになった。ドライバーやセカンドショットで使用するクラブの飛距離が伸びているのだ。
「例えば、6UTでもこの7年ほどキャリー153ヤードだったのが、今年はキャリー158ヤードになってきたんです」。普通に打てばオーバーするので、カットに打とうか、ライン出しで打とうかなど考える時間が増えた。それが距離感の微妙な誤差となり、今季ここまではいま一つスコアを伸ばし切れず、優勝争いに加わることができていなかった。
「昨年からシーズン中でも毎週月曜日に筋トレに励むようになりました。基本的に下半身と体幹を鍛えていますが、飛距離が伸びたのはその効果もあると思います」。聞けば、ドライバーの飛距離は10ヤードぐらい伸びたとか。それもそのはずで、ヘッドスピードが40.5m/sと、これまで超えることができなかった40m/sの壁を破ったというから驚きだ。それに伴い、アイアンの飛距離も5ヤードほど伸びた。ただ、ヘッドスピードが上がったことによる弊害もあったという。
■自分が振らなくてもヘッドが走る
「以前のスペックだとボールが吹け上がってしまうんです。それが飛距離ロスにもつながると思い、少しハードめのスペックにしてみようかなと」。ボールの回転数を抑えることができれば、さらに飛距離アップにつながる。これまではダンロップのゼクシオ エックスに「VENTUS RED」の5Rを挿していたが、同じシャフトでチップカットしたものや5S、40グラム台で硬いシャフトを試した。
実は、飛距離が伸びている兆候は昨年からあり、ボールをヒットする位置を変えることでスピン量を調節していたという。わざわざ複雑なことをするよりも、トレーニングで成長したフィジカルに合うシャフトにしたほうがいいと考えたわけだ。
シャフトをセレクトする過程の中でFujikuraのツアー担当から勧められたのが、「SPEEDER NX VIOLET」だった。「自分が振らなくてもクラブヘッドが走ってくれる感じです。新機能が搭載されているシャフトなんですよね」。青木が指摘する新機能とは「DHX」のことで、従来の層に新たな層を加え、ヘッドスピードと飛距離アップに成功したという。
さらに、「VARIABLE TORQUE CORE」と呼ばれるテクノロジーを進化させ、よりつかまり感のある高弾道になった。それを試打の時点で青木は感じていたが、何よりも気に入ったのは、トウダウンすることなく、手元に近いところからしなり戻りをする点だった。