今季躍進、菅楓華の“転生”を支えたシャフト
あと一歩届かない優勝 焦りで「ゴルフが楽しくない」
ツアー1年目を終え、ドライバーなどのウッド系に自信が持てたこともあり、シーズンオフにはパターを強化。合宿を行うなど、新シーズンに向けての準備を整えた。そして2025年シーズン、開幕戦から2戦連続で2位に入るなど、周りから初優勝の期待も高まっていた。
しかし、それが故に新たな悩みも生まれた。「徐々に予選は通過しても上位に行けないという試合が続くようになって……。序盤の成績が良かった分だけ、『ゴルフが楽しくない』と思うようになりました」。その間に荒木ら同い年の選手やプロテスト同期が立て続けに初優勝を飾る。菅にとっては、刺激を受けると同時に、心の中には焦りも広がっていた。
ドライバーでリズムを作り最終日にビッグスコア
そんな中で迎えた9月のミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンの練習日。菅は新たな出会いに恵まれた。三菱ケミカルの担当者に渡されたのは、極端に軟らかいピンクの練習用シャフト。このシャフトでドライバーの練習をすると「本当にタイミングが合わないと真っ直ぐ飛びません。これをうまく打てるように練習したら、(ゴルフが)楽しめるようになりました」
軟らかいシャフトでのショット練習をこなしたあとに迎えた本戦。試合ではドライバーがいつにも増して好調だった。「コースが広いこともあって気持ちよく振れて、飛距離も出ていました。ティショットをフェアウェイに打つことでプレーのリズムを作れたのが良かったと思います」
3日間競技の中で2日目を終えて2アンダー10位タイ。今までは最終日の優勝争いの中でなかなかスコアを伸ばせないことが課題だったが、この日は最後まで集中して8バーディ1ボギー「65」のビッグスコアを記録。逆転で悲願の初優勝を飾った。
FW、UTも同じシャフトでタイミングを大事に
優勝した試合は、ドライバーだけでなく、FWやUTのシャフトにも「TENSEI」シリーズで揃えている。
「私がスイングで一番大事にしているのがタイミング。どのクラブでも同じスイングでタイミングが取りやすいので、シャフトをそろえています。ドライバーとの振り心地にズレがないのがいいです」。アイアンショットの切れ味に加え、長い距離からでもグリーンをとらえる安定感が、菅の武器である高いパーオン率にもつながっている。
2年目のシーズンを終え、今後の大きな目標として挙げたのは、海外ツアーでの優勝。「でも、今は海外でプレーしたいという欲があまりないんです。それはきっと、海外でプレーしたことがないから。日本で結果を残して全英女子や全米女子を経験したら何かが変わると思います。だから今の目標は国内メジャーに勝つこと」と、まずは目下の目標を定めている。
ゴルフを楽しむという原点を取り戻した菅が「TENSEI」ブランドとともに、日本、そして世界でどれだけ飛躍を遂げるのか。これからの活躍が楽しみで仕方がない。