日本シャフト特集
2023/05/30

カリスマフィッター鹿又芳典氏がクオリティの高い製品から受ける恩恵とは

連載:『NIPPON』ブランドがゴルフ界に誇る “おもてなし”
カリスマフィッターとして知られる鹿又芳典氏(撮影:落合隆仁)

国内唯一の総合ゴルフシャフトメーカー「日本シャフト(NIPPON SHAFT)」。信頼と実績は、国内だけでなく、海外のクラブメーカーにも純正として採用されていることでも明らかだ。先のコロナ禍では品薄状態でもメーカーへの誠実な対応でエンドユーザーの手へ。その精神はまさに日本が誇る“おもてなし”。日本シャフトと関わりの深い、クラブコーディネーターの鹿又芳典(敬称略、以下同)もまた、恩恵を受けている一人だ。

■ゴルフクラブの起承転結を長く見守ってきた

シャフトの進化も見守ってきた(撮影:落合隆仁)

ドライバーのヘッドでいえば、パーシモン、メタル、チタン、カーボン。シャフトでいえばヒッコリー、スチール、カーボンと進化を続けているゴルフクラブの世界。ただし、それはあくまでも素材での話であり、形や大きさ、性能などを加味すると簡単に進化とはいえないほど多岐にわたって研究され続けている。

例えば、日本シャフトが製造しているスチールシャフトにしても、重いという概念を打ち破り、新たに軽量シャフトという分野を開発した。ドライバーのヘッドに関しても、各メーカーが競い合うように飛距離と方向性を高めるための工夫を日夜続けている。

そんなゴルフクラブの変遷を目の当たりにしてきたのが、いまや「カリスマフィッター」の代名詞で知られる鹿又だ。「この業界に入ったのは今から26、27年前ですが、すごくいいタイミングだったと思います」

当時はチタンヘッドのドライバーが出始めた頃で、ヘッド体積が現在よりも約半分の230㏄のドライバーが人気を博していた。クラブの構造変化に伴い、シャフトも変化していき、アフターマーケット用のシャフトも数多く販売されるようになったという。

■メディアの仕事で得た豊富な情報

クラフトマンとしても活躍する(撮影:落合隆仁)

「ゴルフクラブにとって一番の変革期に、ゴルフメディアの仕事でクラブの評価やテスターをしていたことでいろんな人から情報を得ることができ、それが自分にとって土台になっています」

毎シーズン、その年に発売されるクラブを全て試打するだけでなく、全てのクラブメーカー、シャフトメーカーの開発担当者から話を聞き、開発背景やどのような狙いでその製品が出来上がったのかを頭の中に蓄積していく。その上に自分が試打した感想、エンドユーザーの声が加わる。最終的に製品の販売状況を把握するまでの起承転結を見守ってきたわけだから、クラブやシャフトに関する情報量では、鹿又の右に出る人間はいないだろう。

さらに、自らの工房でオリジナルクラブの制作やリシャフト、一般的な工房業務を行っているとなれば、当然のようにメーカーからの信頼も厚くなる。メーカー側から発売前のクラブどころか、開発段階で意見を求められることも珍しくない。数多く試打する中で鹿又が注目したクラブやシャフトも少なくなかったが、その中の一つに日本シャフトの『N.S.PRO 950GH』がある。

■的確な情報をエンドユーザーへ届けたい

自ら得た情報を正確に伝えたという思いがある(撮影:落合隆仁)

発売当初から軽量スチールシャフトとしてゴルフ業界の話題をさらっていた『N.S.PRO 950GH』だが、「この軽さでこの動きをするのは何だろう?」と、鹿又は単にシャフトが持つ軽さだけでなく、しなり方にも興味を抱いていた。

その一方で、シャフトがしなり過ぎるなどの悪い評価があることも知り、様々な疑問が頭の中をよぎったという。たまたま日本シャフトの担当者と出会う機会があり、時には直球の質問をぶつけるなど、詳しい話を聞くようになったことで両者の関係性は深まったが、同時にある違和感を覚えた。

『N.S.PRO 950GH』の後に発売された『MODUS3 120』も含め、「エンドユーザーまでシャフトの特性が正確に伝わっていないのではないか」と感じたのだ。「自分はメーカーとエンドユーザーの間に立つ人間として、製品を正しく理解し、正しい使い方を伝えるべきではないか」と考えるようになった。

実際、当時はメーカーの狙いが伝わらないがために、間違った使い方をした結果、本来の特性を全く生かしていないユーザーが数多くいた。彼らに製品の特性を伝えることができれば、メーカーにもユーザーにもプラスになるという結論に至ったわけだ。

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