世界基準への追求と50回大会のポスターに込められた思い
整えられた“世界基準”の舞台
世界での活躍につなげる大会作りには、コースも“世界基準”であることが必要。その理想は、16年に大会記録の通算23アンダーで優勝した松山が監修に加わった、太平洋クラブ御殿場コースの17年ぶりとなる全面改修により実現へと近づいた。完成した18年以降、2桁アンダーでの優勝は19年の金谷のみ。優勝スコアが29年間連続で2桁アンダーとなっていた17年より以前とは、明らかに変わった。
「改修によりバンカーの数が増えたほか、選手に攻めるのか、守るのかの判断を求めるようになり、ラッキーで助かることが減りました。簡単にスコアが出るのではなく、世界レベルの選手を輩出するためのコースになったと思っています」
例えば、様々なドラマを生んできた18番パー5。1打目に左サイドのバンカー上を果敢に狙うか、安全策で右に置くかの選択を迫られるが、右に逃げすぎると傾斜でOBになりやすくなった。グリーン手前の池は右奥まで拡張され、2打目のミスショットへのリスクも増加。他の選手のスコアと自分の状況を照らし合わせて、攻守の判断を明確にすることが求められる。
最高レベルのプレーを引き出すために、コース側も妥協なき準備をする。天候に左右される芝の成長度合いに注意を払うことはもちろん、グリーン上にボールマークができれば直径数センチの部分をくり抜き、新しい芝と入れ替える。芝を枯らすことなく、常に均一なグリーンコンディションを維持するためだ。
50回目のトーナメントに向けて
一昨年はコロナ禍の影響により無観客で開催。昨年は有観客ながら、1日5000人の上限が設けられた。今年は第50回の記念大会であることに加え、3年ぶりに制限をなくしての実施となるだけに、関係者も特別な思いで開幕への準備を進めてきた。
「50回という節目と、3年ぶりに入場制限を解除して開催することへの思いを込めて全日入場無料にしました」。異例ともいえる決定には、半世紀にわたり支えられてきたゴルフファンへの感謝とともに、多くの人たちに観戦の楽しみを体感してもらうことでファンを増やし、ゴルフ界を盛り上げたいとの願いが詰まっている。さらに、火曜日(11月8日)の練習日も大会として初めて入場可能になる。これは選手会長の谷原秀人から、練習日はファンサービスにより力を注ぐことができる、との要望を受けて実現したものだ。
そんなギャラリーに向けたサービスの形も、時代に合わせて変化を遂げてきた。14年からは、佐々木も開発に携わったという大会公式アプリを活用。ギャラリーが目当ての選手のプレーを効率よく観戦できるように、コースマップ上で選手の位置情報をリアルタイムで表示する機能を提供した。また、19年からは会場内すべての店舗でキャッシュレス決済を可能に。コロナ禍以降は、感染症対策の一環としても大いに貢献することになった。
「世界レベルのコンディションという歴史と伝統を崩さずに新しいチャレンジを取り入れ、世界に通用する選手を輩出する。そして、ゴルフファンや地元の方たちによろこんでいただき、男子トーナメントのファンの裾野が広がることの実現に向けて貢献していきたいと思います」
50枚目のポスターにも込められた最高の大会作りへの熱意と、ゴルフファンへの感謝の気持ち。これからも、長く受け継がれてきた思いとともに前進を続け、歴史を紡いでいく。