カーボンの可能性を求めて メタルウッド開拓メーカーの次なる挑戦
1979年創業のテーラーメイドはメタルウッドの元祖。ヘッド素材にステンレスを採用した「ピッツバーグパーシモン オリジナルワン」、「ツアープリファード」といった初期の名器たちが、長らく続いたパーシモンの時代に終止符を打った。主流はステンレスからチタンに変化したものの、広い意味では今もメタルウッドの時代が続いている。
そして、真っ先に脱チタンを掲げたのもまたテーラーメイドだった。2022年の最新モデルからドライバーのフェースにカーボンを採用した開発の経緯と、カーボンの可能性を深掘りする。
木製から金属製 そしてカーボンへ
木製のパーシモンから金属製のメタルへ。ドライバーの性能は、ここで大きな飛躍を遂げた。テーラーメイドの日本法人でハードグッズプロダクト・シニアマネージャーを務める柴崎高賜(敬称略、以下同)は、その進化について次のように説明する。
「パーシモンは素材にバラつきがありますし、削り方や湿度によっても性能が変わります。メタルになったことで安定した性能を生み出せるとともに、ヘッドの大型化により慣性モーメントの大きいクラブが作れるようになりました」
創業当時からクラブ作りの根底にあるものは、すべてのゴルファーがやさしく飛ばせることへの探求。こうした流れを引き継ぎ、次のステップとして投入されたのがカーボンフェースのドライバーだった。
一時は姿を消したカーボンの可能性を求めて
カーボンフェースのドライバーの登場は、実は今回が初めてではない。1990年前後から、複数のメーカーがメタルに続く新素材としてカーボンに挑戦。ボディを含めたフルカーボン製のモデルが実際に販売されたものの、主流になることはないまま姿を消した。柴崎によれば、当時の技術ではカーボンの弱点を克服できなかったことが理由だという。
「カーボンはドライバーの素材として軽過ぎたんです。現在のように、金属などの異素材を組み合わせて重量や慣性モーメントを上げるという技術はなく、カーボンを熱で固めたものがほとんど。ヘッド重量は190グラム以下だったと聞いています」。軽さを生かし、長尺ドライバーにするアイデアも採用されたが、それにはヘッドサイズが小さ過ぎた。総合的に見て、メタルを超えるカーボンドライバーは作れなかったわけだ。
しかし、テーラーメイドはカーボンの可能性を捨てずに前進を選んだ。「2000年からヘッドの素材としてカーボンの研究を始め、常にチタンとカーボンの開発チームが別々に動いています。ヘッドのどこにカーボンを使うと、どんな結果になるのかを研究してきました」
そのなかで生まれたのが、チタンフェースにカーボン製のクラウンとソールを組み合わせた複合素材のヘッド。そして、60層のカーボンシートと最外層に使用したナノテクスチャーPU(ポリマーコーティング)カバーにより、安定した適正スピン量を実現するカーボンフェースの最終的な完成と採用に至る。2022年に新たなフラッグシップモデルとしてカーボンウッドの「ステルス」を、日本市場に向けて「ステルス グローレ」を発表した。