テーラーメイド特集
2022/12/13

米国仕様との違いは? 日本向けにこだわる「グローレ」開発秘話

連載:革新的なテクノロジーのルーツをたどる
独自の進化を続けるテーラーメイドの日本市場向けモデル(撮影:沼田侑悟)

米国の一部クラブメーカーは、世界で展開するグローバルモデルのほかに日本市場に向けたモデルを送り出している。米国と日本において、ゴルファー個々の体力やスイングのほか、クラブ性能の好みが異なることがその理由だ。

常に最新のテクノロジーを投入し、ゴルフクラブの世界をリードしてきたテーラーメイドも、2012年に日本オリジナルブランドを立ち上げた米クラブメーカーのひとつ。同社日本法人のハードグッズプロダクト・シニアマネージャーを務める柴崎高賜(敬称略、以下同)に誕生の経緯やグローバルモデルとの違いを聞くとともに、シリーズ10年間にわたる進化の系譜をたどる。

日米で好まれるクラブ性能の違い

米国仕様のクラブはシャフトが硬く、つかまりにくい。日本のゴルファーにとって、その感覚は決して間違ってはいない。日米では、クラブの性能に対する評価が正反対のためだ。「日本では“つかまるクラブ=良いクラブ”とされる傾向が強いのですが、当時米国では“左に行かないクラブ=良いクラブ”とされていました」と柴崎は説明する。

柴崎は日本市場向けモデルの立ち上げから携わってきたひとり(撮影:沼田侑悟)

さらに、シャフトに記されたスペック(硬さ)が同じでも、両者には大きな違いがあるという。「米国ではR(レギュラー)シャフトを使うゴルファーのヘッドスピード(HS)は43m/s前後が目安です。これに対し、日本はSRで40m/s前後を想定しています。表示は同じRやSでも、硬さは2段階ぐらいの差があると思っていいでしょう」

その他にも、米国では低めの打球音、日本では高めの打球音が好まれるといった具合に違いはさまざま。だからこそ、日本市場に向けた専用モデルが必要という考えに至ることとなる。

白ヘッドの日本仕様モデルとして誕生

そのような背景があるなかで、12年初頭にテーラーメイドが日本市場に送り出したのが「グローレ」シリーズだった。前年に発売されたグローバルモデルの「R11」は白いヘッドで一世を風靡(ふうび)したが、多くのPGAツアー選手も使用する上級者向けのクラブ。グローレは、幅広いゴルファーの誰もがやさしく飛ばせる白ヘッドのドライバーとして誕生した。

「グローレ」とはスコットランド古来の言語で“栄光”を意味する

毎年のように新作が登場するグローバルモデルに対し、グローレは2年周期のモデルチェンジで展開する『プレミアムクラブ』に位置づけて発売された。「2年間、売り続けるためには一歩先を行くクラブでなければ、周回遅れになってしまいます。実勢価格はグローバルモデルよりも約2万円高かったのですが、そのぶん開発費や素材にお金を掛け、最新のテクノロジーを注いでいました」。初代モデルには、多くのメーカーが上級者モデルにのみ採用していたロフト調整機能を搭載。また、鍛造チタンフェースはコスト面からその後のグローバルモデルに採用されないほどの贅沢な仕様だった。

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