“感覚派”山内日菜子の初優勝を支えた周囲のサポートとクラブ性能
今季の国内女子ツアー第4戦「アクサレディス」で、地元・宮崎出身の山内日菜子が初優勝を飾った。昨年のクォリファイングトーナメント(QT、予選会)で下位に沈み、今季はステップアップツアーの出場もままならないという状況の中、推薦出場のチャンスを生かしての下剋上は、多くのゴルフファンに強い印象を残した。
プロ8年目でつかんだ初優勝。その裏に合った契約メーカーであるテーラーメイドのサポートと、クラブにまつわるエピソードをお届けする。
今季最初の公式戦直前にパターグリップを変更
今季のレギュラーツアー初出場となった「アクサレディス」の開幕前日、山内はエースパターである「スパイダー GTx BLACK トラス TM1」をテーラーメイドのツアーバス(クラブメンテナンス用のトレーラー)に持ち込み、グリップ交換を依頼した。単に新しいものに交換するのではなく「(断面が)四角いものから三角形に近いものに替えました」とまったく違うタイプへのチェンジだった。
これに驚いたのはテーラーメイドのツアーレップ(トーナメント会場で選手とやり取りするメーカースタッフ)、鵜野晃行(うの あきゆき、敬称略、以下同)だ。「もう夕方だったので、『えっ、今替えるの?』と何度か本人に確認してから対応しました」。試合会場となるUMKカントリークラブのグリーンは、ベント芝で繊細なタッチが必要となるため、グリップ交換によって感覚が変わってしまうことを心配していたのだ。
しかし、山内は初日のスタート前に新しいグリップを装着したパターで練習。短い時間で感触を確かめた上で実戦投入を決心した。それはアマチュアの頃から出場を続けている大会だからこそ、「こっちの方がいい」という“感覚”を大事にした決断だった。これが功を奏し、1ラウンド当たりの平均パット数は28.00で全体の3位を記録。地元の声援を後押しにして、涙の初優勝を果たした。この快挙には鵜野も喜びと同時に、驚きだったと話してくれた。
小学生の時に参加したレッスン会での出会い
山内とテーラーメイドとの関係も、当時のツアー担当者の“驚き”から始まったそうだ。
「小学校5年生の頃に、地元で諸見里しのぶさんのレッスン会がありました。絶対に参加したいと思って受けにいったら、その日は調子が良くて、めちゃくちゃいいショットが打てました」
ゴルフ好きの父から習って始めたゴルフ。小学生の頃は、どんなクラブを使っているかも意識せずに、ただ楽しんでプレーしていた。レッスンの時には、諸見里からも「教えることがない」とお褒めの言葉をもらうほど、絶好調だったそうだ。
「それを後ろで見てくれていたテーラーメイドの担当者の方が声を掛けてくれました。それがきっかけで、テーラーメイドのクラブを使い続けることができています」
初めてクラブの名前を意識して使ったのがテーラーメイドの「R7 ドライバー」だったという。その後、クラブ提供のサポートもありながら、2016年のプロ転向後も14本のセッティングはすべて、同メーカーのクラブを使い続けている。