ピン G730 アイアンを筒康博が試打「省エネで頑張らずに飛ばせる」
ポケキャビに変わったズルい飛び系 ご意見番クラブフィッターの評価は!?
ピン史上最も飛んで最もやさしいアイアンとして登場した「G730 アイアン」。2020年発売の前作「G710 アイアン」は“飛び系なのにズルいアイアン”として、高弾道でぶっ飛ぶ性能が多くのアマチュアゴルファーに支持された。中空構造だった前作からポケットキャビティに変わって打感が向上したと評判だが、果たしてそのフィーリングは!? ヘッドスピード(以下HS)の異なる有識者3人が採点。ご意見番クラブフィッター・筒康博の評価は!?
「ひと目では“ズルさ”が気付かれない 対象は同社買い替えユーザー」
―率直な印象は?
「前作黒塗りヘッドの『G710』から様変わりし、パッと見では後継モデルとは分からない新たなデザインに見受けられます。G710=“ズルいアイアン”が広く認知されたおかげで、バッグに入れているとすぐにあのモデルと分かってしまいますが、今作は色味もシルバーに変更され、デザインも別モデルに似ているため、良い意味で限定されにくい。『G7○○』シリーズとバレなそうという意味で、ズルく見えないけどズルいアイアン。この変化が意外と多くのゴルファーに受け入れられる要素な気がします」
―「G710」との違いは色味だけ?
「いえいえ、形状にも変化が見受けられます。『G710』はやや大きめのサイズでしたが、『G730』はひと回り小さく見えるミッドサイズ。構えて見比べても、ロフト角の違い(7Iで26.5度、『G710』は28度)は感じません。逆に前作のほうが立って見えるほど。今作のフォルムは、トウ側の肉の落とし方が緩やかになったことで、ストロングロフトにも、ボテッとした大きさにも見えにくい。たぶん重心距離もこの形状のほうが長く取りやすいのだと思います。今まで一般的なロフト角のモデルを使っていた方でも、違和感なく構えやすい。そこが前作とは違って買い替えやすいポイントといえます」
―飛距離もかなり(総距離:7Iで平均167.6yd)出ていましたが?
「タイミングをクラブが合わせてくれるため振り遅れにくく、弾道の高さが出て飛距離も楽に出てくれます。すごく自身の出力を上げなくてもいいアイアン。プレーヤーが頑張らなくても飛ばせる性能です。勝手に飛ぶというよりは、力まず打てるメリットが大きい。前作はアイアン型ユーティリティっぽい外観で、飛び性能もそのままイメージできましたが、今作は通常アイアンの見た目であるのに、打つと同じ弾道が得られる。ゴルファーが省エネで居られる、まさに“ズルく飛ばせるアイアン”。そこがすごく変わった感じがします」
―同社の他シリーズ(『i530 アイアン』『i230 アイアン』『G430 アイアン』)と比べると?
「『G430』にターボチャージャーが付いたようなアイアンって感じでしょうか(笑)。やさしくて、つかまって、球が上がるという要素は共通していますが、もう少しこだわりを持ちたい方向け。飛距離や球筋にこだわる方は『G430』では満足できない。一番のターゲットユーザーは『G710』を使っている人に絞られる気がします。単に性能が進化したわけではなく、ズルさを売りにした特別感を薄めながら、前作『G710』の飛距離性能を継続して味わいたい人向け。間違いなく(購入候補としての)ライバルは『G430』『G710』になると思います」
―あえて気になるデメリットは?
「ポケットキャビティの構造から、デメリットと考えられる響きの強い打音については、そこまで音が反響せずに嫌な耳心地や感触は残りませんでした。唯一気になる点は、ロフトスペックでしょうか。ピッチングから下のウェッジを単品モデルで揃えている方には、このストロングロフト設定は合わせにくいですし、元々十分にアイアンの飛距離が出せている方には、飛距離が出すぎて計算しにくくなってしまう…。デメリットというか、そのような方はそもそも対象ターゲットではないだけ。同社の他シリーズを使ってくださいということだと思います」
―どのような人向き?
「先ほども少し触れましたが、メイン対象は前作『G710』から買い替えを考えている人。もしくは、現在『G430』や『G425 アイアン』を使っている方が、もうワンランク上にステップアップするためのモデルになると思います。逆にここまで楽に高く上がって、軽く振って飛距離が出せるアイアンは他社では少ないということ。同社が持つ独特の形状や性能も含めて考えると、ピンの中で買い替えたい人向きといえるでしょうか」
飛び(飛距離)とやさしさ(寛容性)を兼ね備えた5点満点【総合評価4.6点】
【飛距離】5.0
【打 感】4.5
【寛容性】5.0
【操作性】4.0
【構えやすさ】4.5
・ロフト角:26.5度(7I)
・使用シャフト:NSプロ 750GH neo(硬さS)
・使用ボール:リトルグリーンヴァレー船橋専用レンジボール
取材協力/トラックマンジャパン株式会社、リトルグリーンヴァレー船橋
■ 筒 康博(つつ・やすひろ) プロフィール
スイングとギアの両面から計測&解析を生かし、プロアマ問わず8万人以上のゴルファーにアドバイス。「インドアゴルフレンジ Kz 亀戸店」のヘッドティーチャーを務める傍ら、様々なメディアにも出演中。大人のゴルフ選びフィッティングWEBマガジン「FITTING」編集長として自ら取材も行う。