テーラーメイドから「白」が消えた理由
テーラーメイドが「新しいカーボンウッド時代の幕開け」と打ち出す意欲作、「ステルス」シリーズの販売が2月4日にスタートした。深紅のフェースと漆黒のクラウンが目を引く一方、オールドファンとしては、ヘッドから同社の象徴とも言える白色が消えたことに疑問も湧く。その消失の経緯を追った。
白ヘッドの誕生
白ヘッド時代の幕を開けたのは、2011年に発売された「R11 ドライバー」。それまで黒が主流だったクラウンを白一色に染めたインパクトの強さと、幅広いゴルファーに対応できる弾道調整機能が人気を呼び、世界中で大ヒットを記録した。
「R11」のリリースでは白色のメリットとして、ホットスポット(日光による反射)の抑制によるアドレス時の安心感と集中力の向上、黒色フェースを正確にターゲット方向へセットできるコントラスト効果が挙げられている。
同社は、以降に発表した主力モデルもほぼ白ヘッドで統一。2015年にカーボンクラウンの「M1 ドライバー」が登場してからは白の面積が減少したが、それでも21年「SIM2」シリーズまでフェース周辺に白を残し、黒フェースと相性抜群の名コンビを組み続けてきた。
赤と黒になったワケ
しかし「ステルス」では、赤と黒が象徴的なカラーへと変わった。1月の発表会で登壇した高橋伸忠プロダクトディレクターによると、カーボンウッドによる新たな時代を強調する狙いがあったという。
「新時代の幕開けとして、その象徴的なカーボンフェースをいかに強いインパクトで見せるのか。新しい挑戦への意気込みや情熱をフェースで表現したかった。さまざまな色を検証した結果、赤色がふさわしいということで採用が決まりました」
クラウンがマットブラックになったのは、「ステルス」の開発コンセプトに起因するという。「モデル名にもある通り『ステルス』は長く水面下で開発されてきた商品です。最も見つけられにくいイメージを表す色として、ステルス戦闘機に象徴される艶消しのブラックが選ばれました。赤いフェースとのコントラストが映えることもあり、店頭での見栄えも含め、とても商品力が高いものに仕上がったと思っています」
白が消えたワケ
「ステルス」に白がまったく採用されなかった理由は、色合いでも時代の刷新を図りたいという考えに基づくもの。同社が20年以上の開発期間を経て迎えたカーボン時代の到来は、同時に“白の時代”に区切りをつけたと言える。
ただ、長くブランドカラーとして親しまれてきた白を外すことに、社内で反対の声は上がらなかったのだろうか。高橋氏は「一部の者の間でしか議論はされていませんが、開発陣の中でそのような声は全くありませんでした。今回はそれくらい新しいことをやろう、という考えがあった」と述べた。
白の復活はあるのか
同社は発表会で、今後展開するフラッグシップモデルを全てカーボンウッドにすると宣言している。それは、今後フェースカラーも赤が定番になることを意味するのだろうか。「今回は新時代の幕開けと位置づける意味で赤を採用しましたが、すでに扉は開かれましたので、今後も赤フェースが続くのかは正直まだ分かりません」と高橋氏。では、再び白が復活する可能性も残されている?
「再び白クラウンに戻る可能性はゼロではないと思います。『SIM2』で採用したアルミニウムリングのブルーになる可能性だって、もちろんある。いろいろな色を試しているので、今後も何色が選ばれるかは分かりません。全ての可能性を排除することはないと言えます」
革新的なクラブが誕生すれば、象徴的なブランドイメージでさえ躊躇(ちゅうちょ)なく刷新する。でも、次なるフラッグシップモデルが生まれれば、姿を消していたものが再び主役に戻る可能性だってある…ということか。(編集部・塚田達也)