練習場のレンジボールとコースボールの飛距離性能の“差”
練習場のレンジボールはコースボールと何が違う? 曲がり幅の“差”を徹底調査
打ちっ放しのゴルフ練習場で使用されるレンジボールは、そもそもどんな特性なのか? その実態に迫るシリーズ第2弾は、飛距離性能の“差”に迫った第1弾に続き、方向性の“差”を取り上げる。「コースボールより曲がる」「サイドスピンが多い」といった漠然とした認識を持っているものの、実際にどれだけ曲がり幅が大きくなるかは不明だ。そこでミスヒットに対する寛容性とともに、弾道を打ち分けたときの球筋の違いを調査した。(編集部・内田佳)
中心左右ブレは最大で約20yd! ただしサイドスピン量はほぼ一緒
同じ状況下の室内打席にて、1ピースと2ピースのレンジボールと4ピースのコースボールで、ドライバーショットを測定した。同じヘッドスピードになるように調整して測ったところ、センターから左右差を表す「中心左右ブレ」は、1ピースと2ピースの差が10.4yd、1ピースとコースボールでは19.5ydもの差が開いた。この開きは予想通りとも取れるが、意外だった点は、大きく影響すると思われたサイドスピン量が、1ピース325、2ピース-259、コースボール-316rpm(※-はドロー回転、-無しはフェード回転)と、ほぼ同じ結果だったことだ。
■ストレート弾道を狙ったドライバーショット
【レンジボール(1ピース)】
ヘッドスピード:42.3m/s
ボール初速:58.7m/s
打ち出し方向:-4.8度
サイドスピン:325rpm
中心左右ブレ:23.5yd
キャリー:209.3yd
総距離:224.4yd
【レンジボール(2ピース)】
ヘッドスピード:41.5m/s
ボール初速:60.3m/s
打ち出し方向:6.1度
サイドスピン:-259rpm
中心左右ブレ:13.1yd
キャリー:211.0yd
総距離:228.7yd
【コースボール(タイトリスト プロ V1x ボール)】
ヘッドスピード:43.2m/s
ボール初速:62.6m/s
打ち出し方向:3.9度
サイドスピン:-316rpm
中心左右ブレ:4.0yd
キャリー:228.2yd
総距離:245.1yd
サイドスピン量に注目すると、ほぼ誤差の範囲ともいえるが、むしろ2ピースのレンジボールのほうが、コースボールより57回転少なく出ている。実は「サイドスピン」は、曲がり幅「中央左右ブレ」に影響しないということなのか――。では、あえてサイドスピンをかける打ち方をした場合、曲がり幅はどのように変化するのか? 7番アイアンでドローとフェードを打ち分け、その曲がり幅を測定した。
■ドロー弾道を狙ったアイアンショット
【レンジボール(1ピース)】
ヘッドスピード:37.8m/s
ボール初速:44.8m/s
打ち出し方向:3.1度
サイドスピン:-107rpm
中心左右ブレ:3.9yd
キャリー:143.2yd
総距離:149.5yd
【レンジボール(2ピース)】
ヘッドスピード:38.4m/s
ボール初速:45.5m/s
打ち出し方向:2.6度
サイドスピン:-597rpm
中心左右ブレ:6.9yd
キャリー:155.9yd
総距離:161.1yd
【コースボール(タイトリスト プロ V1x ボール)】
ヘッドスピード:38.2m/s
ボール初速:48.9m/s
打ち出し方向:0.6度
サイドスピン:-617rpm
中心左右ブレ:7.8yd
キャリー:157.4yd
総距離:164.5yd
ドロー弾道では、曲がり幅「中心左右ブレ」は微小ながら、1ピースで3.9yd、2ピースで6.9yd、コースボールで7.8ydと徐々に大きく出る結果に。「サイドスピン」は1ピースと他2球の差で大きく広がった。1ピースのレンジボールだけ、つかまり具合がかなり弱いという証拠。あえて曲げようとする打ち方だと、層の数に比例して曲がる傾向があるのだろうか。
■フェード弾道を狙ったアイアンショット
【レンジボール(1ピース)】
ヘッドスピード:37.0m/s
ボール初速:42.2m/s
打ち出し方向:-1.9度
サイドスピン:321rpm
中心左右ブレ:3.9yd
キャリー:135.1yd
総距離:140.2yd
【レンジボール(2ピース)】
ヘッドスピード:37.4m/s
ボール初速:43.1m/s
打ち出し方向:-1.6度
サイドスピン:644rpm
中心左右ブレ:7.4yd
キャリー:135.7yd
総距離:141.7yd
【コースボール(タイトリスト プロ V1x ボール)】
ヘッドスピード:38.2m/s
ボール初速:44.9m/s
打ち出し方向:-0.0度
サイドスピン:1061rpm
中心左右ブレ:12.9yd
キャリー:142.2yd
総距離:146.3yd
フェード弾道では、1ピースで3.9ydと2ピースで7.4ydに対し、コースボールでは12.9ydと大きく曲がる結果に。また「サイドスピン」も同様に、他2球と大差をつける1061rpmで、レンジボールとの差がより明確に開いた。一般的に右回転のフェードボールは、左回転のドローボールより回転数が多く、ランは少なめに出る。そんなフェード弾道では、サイドスピン量も曲がり幅も、ボールの“差”が顕著に表れることが判明した。
単一と多層の“曲がり差”の要因はサイドスピンではなかった
上記の結果を受け、「直進性も操作性も高いのは、多層構造による剛性設計が影響しているからです」と言うのは、ギアの特徴に詳しいクラブフィッター・筒康博氏だ。
「単一構造のレンジボールと、多層構造のコースボールとの“差”は、ロングショット時のバックスピン量を減らし、ボール初速を生む飛距離性能が突出しているかどうかの違いといえます。上記のドライバーショットの結果で分かることは、サイドスピン量がレンジボールと同じでも、大きな曲がり幅を防ぐ直進性が備わっていること。逆にアイアンでの結果では、サイドスピンに比例して、曲がり幅も大きく出る操作性が備わっていることが分かります。コースボールはレンジボールと違い、高い初速性能と直進性がありながら、曲げたいときだけ曲がる特性も持ち合わせているのです」
飛距離実験の際にも明らかとなった、単一構造と多層構造の反発性能の“差”。コースボールは、大きな衝撃を与えれば与えるほど、真っすぐストレートに飛んでいく力も発揮するが、あえて曲げようとすると、曲げようとする力も強く働く分、サイドスピンの回転量の通りに素直に左右に曲がるということのようだ。
練習場ではあえて「ドロー・フェード」を打ち分ける
では、そんなレンジボールを使い、どのような練習を行うべきか。アマチュアゴルファーのコーチングも務める筒氏は、「真っすぐ飛ばすことに固執した練習は、あまり意味がないと思います」と説く。
「レンジボールでストレート弾道を打つことに執着し過ぎると、インパクト時の感性を失い、コースの状況に合わせた対応力が身に付かなくなる危険性があります。曲がりづらいレンジボールの結果を鵜呑みにして、コースで曲がったときの対応ができず、パニックになるアマチュアゴルファーの方を多く見かけます」
「むしろレンジボールでは、曲げようとしても曲がりにくい特性を生かし、ボールを意図的に曲げる練習も行うべきです。実際に練習場でドローとフェードをしっかり打ち分けることができなくても、コースでボールが曲がったときのマネジメント感覚が身につき、将来的にドロー・フェードの打ち分けや持ち球づくりにつながります。コースで滅多に打てないストレートボールばかりを練習するよりも、実戦向きです」
「イメージでは、打ち出し方向を10~15cm左右に打ち分けながら、ドロー・フェード回転でセンターに戻ってくる弾道が打てれば100点です。曲がりにくいレンジボールでも、繰り返しチャレンジすることで、徐々にサイドスピンの入り方を体感できてくると思います。スピンコントロールのフィーリングを覚え、実戦でのコース攻略に役立てましょう」
取材協力/ダンロップスポーツマーケティング、ブリヂストンスポーツ、インドアゴルフレンジKz亀戸店、大島ゴルフセンター
筒 康博(つつ・やすひろ) プロフィール
スイングとギアの両面から計測&解析を生かし、プロアマ問わず8万人以上のゴルファーにアドバイス。「インドアゴルフレンジ Kz 亀戸店」のヘッドティーチャーを務める傍ら、様々なメディアにも出演中。大人のゴルフ選びフィッティングWEBマガジン「FITTING」編集長として自ら取材も行う。
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