女子プロ驚き14本 バラバラのスペックを打ちこなすスゴい技術とは?【女子プロギア考察#2】

“令和の試打職人”こと石井良介プロによる女子プロセッティング考察。前回は主にドライバーとアイアンのシャフトの違いについて考察してもらった。さらに踏み込んでいくと、競争が激しい女子ツアーで結果を出すために、きめ細かな工夫を凝らして14本を厳選していることを指摘する。

#1 女子プロスペック ドライバーはハードでアイアンはやさしめ“ギャップ”があるのはなぜ?

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身長の割に長いドライバーを振る技術

女子プロが挿しているような軽くて軟らかいシャフトを使うには技術が必要だと思います。ちょっと想像してください。先端にモノがついた棒で何かを叩くとき、軟らかくて長くて軽い棒と、硬くて短くて重い棒ではどちらが叩きやすいか。言うまでもなく後者でしょう。

しかし硬くて短い棒は、振りやすくても出力が足りません。ゴルフクラブに置き換えても同じ。飛距離を伸ばすために、ちょっと長くしたりちょっと軟らかくしたりして、更なるスピードを出す必要があるんです。そしてそれを上手に使うには、非常に高いスイングスキルが求められます。

女子プロが飛ばせるのは、長めのドライバーも使いこなせるから。身長が150~160㎝台の女子プロが長いドライバーをアッパーに振りぬき、とんでもないフェアウェキープ率をマークする。それは“技術の賜物”としか言いようがありません。ドライバーでシャフトのしなりを上手に扱って、平均230~240yd近くを飛ばしているわけです。

女子プロセッティング考察
身長153cmの古江彩佳は45.25インチのドライバーを打ちこなす

アイアンは“軽め・軟らかめ”のシャフトを使いこなす

ドライバーのシャフト「50g台のX」であれば、男性アマチュアも十分に使えるでしょう。PGAツアーで“軽・硬”のシャフトが流行った時期がありましたが、彼らはドライバーに50g台を入れても、アイアンはゼッタイに100g以上のモノを使っていたと思うんです。

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前回お話ししたように、女子プロのクラブを見るとその辺りの“ギャップ”というか、ドライバーは例えば「TENSEI Pro 1K」シリーズなどしっかりめのシャフトを入れて、アイアンはSとか80g台が入っていたりする、というのも面白いところ。

女子プロセッティング考察
初優勝が期待される菅楓華。ドライバーはTENSEI PRO BLUE 1Kの50S、アイアンはNSプロ 850GHのS

アマチュアゴルファーがショップへフィッティングに行って、女子プロと同じくらいの40m/sや42m/sくらいヘッドスピードが出るなら、もしかしたら「ディアマナBB」の53・Sとかは勧められるかもしれません。だけど、その人に「NSプロ 850GH」を勧めるかというと…それはない。たぶん「NSプロ 950GH」などでしょう。

腕力で勝るアマチュア、スキルが秀でる女子プロ

ドライバーで250~260ヤードを飛ばす女子プロがいたとして、これは男性的な感覚かもしれませんが、腕相撲で負ける気はしません(笑)。でも、飛距離は負けたりする。そこにあるのは彼女たちの“技術”です。前述したように、女子プロは道具を扱う技術にスゴく長けている人たちなので。軽めとか長めとか軟らかめのシャフトを、タイミングを上手に取って打つ。その“再現性”みたいなものを培いながら、ずっと練習しているからでしょう。

女子プロセッティング考察
たゆまぬ練習でスイングの再現性を磨く、朝の練習場での桑木志帆

もしも、その女子プロたちが、アイアンに「ダイナミックゴールド 105」とかを挿したら、球が少し低くなるんじゃないでしょうか。だからといって、スイングで変に球を上げにいくわけにはいきません。女子プロのクラブを見ると、その辺りの“セッティングの妙”というか“苦心の跡”のようなものが垣間見られます。

タイプ違いのシャフトをミックス

例えば、脇元華選手は「Qi10 LS」という、かなりロースピンのドライバーに「SPEEDER NX グリーン」の5Sを挿しています。でも、3Wは「SPEEDER NX ブラック」という、少し動いて球を浮かせるシャフトを選んでいる。その下5Wになると「SPEEDER TR」という、球の高さを少し抑え込むようなシャフト。そして、UTは「SPEEDER TR ハイブリッド」という“抑える系”を使っていると思ったら、アイアンには「トラヴィル」という球を浮かせるタイプが入っている。その下のウェッジも「トラヴィル」かなと思いきや「MCI」が挿さっているんです。

女子プロセッティング考察
脇元華はウッド類に5種類ものシャフトを使い分ける

一般のアマチュアだったら、自分のシャフトの銘柄はもうちょっとそろえたいと思いませんか?(笑)。女子プロたちはいろんなモデルを組み合わせながら、自分が欲しい弾道をちゃんと分かっているということ。そして、それらを打ちこなすために並外れた練習をしている。磨き上げたスイングから放たれる打球に対して、番手ごとに明確なイメージがあるからこそ、シャフトの銘柄を替えて調整するんです。いずれにしても、こういう要求に応えるツアーレップ(メーカーの用具担当スタッフ)の人って大変だろうな、と想像しながら彼女たちのセッティングを見て思いました。

“コンボセット”にも明確な狙いがある

男子プロでもよくある“コンボセット”について、竹田麗央選手はアイアンの下の番手(6I~PW)はスリクソン 「ZX7 Mk II」を使いながら、上の番手(5I)は同「ZX5 Mk II」を入れています(※取材時。現在は新モデルにスイッチした模様)。青木瀬令奈選手は、8Iはスリクソン「ZXi5」で、9IとPWが同「ZXi7」。

実際にボクは、発売当時に「ZX5 Mk II」を良いなと思って買いました。ただ、上の番手は良いんですが、7Iから8Iにかけて急に飛距離の落差があり“飛距離の階段”通りにならなくて。「8I・9I・PWは飛ばないけど、上の番手は飛んでいく」みたいになりました。

女子プロセッティング考察
8番と9番で異なるアイアンを使う青木瀬令奈

「ZXi5」のような低重心でソール幅が広くて“球が上がる系”のアイアンのメリットは、打ち出しから球が高くなることだと思います。でも、それが下の番手になると、女子プロたちでも球が上に浮いちゃって距離が出ないとか、ボールの下を潜って“だるま落とし”みたいな感じになっちゃうのかもしれません。

だからこそ、青木選手が「下の番手は『7』にしています」という記事を見たときに「それは確かに考えたな」と思いましたし、そういう方法で問題解決しているので「これは絶妙だな」と感じました。もしかしたら下の番手まで『5』にしても、青木選手はスイングで球を抑えて普通にプレーできるのかもしれません。しかしそれが試合となると、彼女の中での理想のアイアンショットにはならない。作り上げたスイングと自分のフィジカル、理想の弾道を追求した結果のコンボセッティングだと思います。そして、クラブの重心構造などをよく分かっている目利きが周りにいて、彼女たちのクラブをセッティングしているということは想像に難くありません。(続く)

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石井良介(いしい・りょうすけ) プロフィール

1981年生まれ、神奈川県出身。PGAティーチングプロの資格を持ち、トラックマンを使った最新理論やデータに基づくレッスンが好評。YouTubeチャンネル「試打ラボしだるTV」も大人気。

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