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「使い手を想定した“やさしさ”の追求」 ~フォーティーン編~ 2012年 Vol.10

2012/10/17 09:00

GDO:フォーティーンというとウェッジのイメージが強く、今回も2つのウェッジがゴールド賞を獲得しています。まずは「RM-11 ウェッジ」ですが、これは大ヒットしたMT-28シリーズから名称も一新した挑戦的なモデルと言えますよね。

松吉:これまで展開していたMT-28シリーズは、平面フェース、彫刻溝といったフォーティーンの技術を注いだモデルで、とにかくスピン性能に優れているのが特徴でした。昔、プロゴルファーはウェッジでスピンを掛けるためにフェースを開いてカットに打っていましたが、そんなことをしなくてもスピンが掛かるので、道具の進化に合わせて、まっすぐクラブを抜いていくような打ち方になっていました。当然、まっすぐ振ったほうが無駄なサイドスピンが掛からないので、プロにとっては正確性が増すというメリットがあります。ところが、新しい溝規制が施行されることになり、昔のようにスピンを効かせるためにフェースを開いてカットに打つのかどうかをプロにリサーチしたところ、これまでどおり直線的に打ちたいという意見が多かったのです。そこで新たに設計思想をリセットして、まっすぐにクラブを振っても旧溝のようなスピンが掛けられる新溝ウェッジを目指し、開発したのが「RM-11 ウェッジ」でした。

GDO:具体的には、どういった点に改良が加えられたのでしょうか。

松吉:構えた感じは従来モデルと変わりませんが、ソール形状などは抜けの良さを求めながら適度にバウンスが効くようにイチから考え直して設計しました。特にロフト60度のモデルは、まっすぐにフェースを抜いても高さとスピンが得られるようにソール形状を工夫してあります。名称の頭文字にもなっているリバースマッスル形状によって上下方向の慣性モーメントが高くなっているので、今までのロブウェッジのような当たり負けもなく、60度のロフトでも低く出して止められる性能になっています。現在、今田竜二プロも「RM-11 ウェッジ」を使用していますが、溝規制前のウェッジと同じ感覚で打てるところを気に入っていただいたようです。

GDO:なるほど。「RM-11 ウェッジ」はそういったプロのニーズから生まれたモデルなんですね。対して「MT-28 J.SPEC IVウェッジ」は、やさしさを優先したモデルですよね。オートマチックに打てるところがテスターからの高評価につながっていました。

松吉:構えたとおりに打てば、プロのようなウェッジショットが打てるように開発したのが「MT-28 J.SPEC IVウェッジ」です。このモデルにもリバースマッスル形状を取り入れて、フェースの上部に重量を配置するように工夫しています。やさしく打てるようにソールは広くしていますが、底部を重くしすぎないように窪みを付けて、できるだけ上部が重くなるように設計してあります。

GDO:他社のウェッジのなかには、新溝でもスピン性能を確保するためにフェース面をミーリングしたり、スコアラインを細くして本数を増やしたりしていますよね。ですが、フォーティーンのウェッジは平面フェースにこだわっています。その理由を教えてください。

松吉:スピンというのは、ボールとフェース面の摩擦によって生まれるのですが、摩擦を増やすためには、できるだけボールとフェース面との接触面積を増やすのが有効です。ミーリングされたフェースや多くのスコアラインは、見た目にはスピンが掛かりそうですが、言わば刃こぼれした刃物のようなもの。肝心のボールとの接触面積が少なくなってしまうのです。フォーティーンが平面フェースを採用しているのは、そういった理由からです。実は、制作するうえではミーリング痕を残したほうが簡単で、平面フェースを作るのにはとても時間が掛かるのですが、作り手として譲れない部分ではありますね。

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