「DI、PT、エボⅣ…」プロが替えられないシャフト 中古相場はおいくら万円?
ツアープロのドライバーに装着してあるシャフトをチェックしてみると、必ずしも最新モデルでないことに気づくだろう。松山英樹も最新作のテストには精力的だが、実戦では長らく同じモデルを愛用している。名手たちがどうにも手放せない“ちょい古シャフト”を中古ショップで探してみた。
松山英樹だけじゃない! ツアープロが替えられない「ツアーAD DI」
松山が替えられないシャフトはグラファイトデザイン「ツアーAD DI」(2009年)だ。手元のしなり感があるシャフトで多くの有名選手が今も使用している。アダム・スコット(オーストラリア)は昨季までたびたびドライバーに、今季はフェアウェイウッドに装着。ザンダー・シャウフェレも一昨年までフェアウェイウッドに使用していた。
現在も新品で手に入るが、2020年にデザイン(コスメ)をチェンジ。ドライバーに装着できる長さなら発売当時のコスメで1万5千円前後から、2020年以降のものであれば2万円台前半からが相場だ。
17年モノの「ツアーAD PT」は日本シニアオープン王者の手にも
グラファイトデザイン「ツアーAD PT」(2006年)の人気も根強く、販売されて17年になる。コスメは2回変更された。上田桃子は昨シーズンまでドライバー、フェアウェイウッドに使用し、今季もフェアウェイウッドには装着。9月に「日本シニアオープン」で優勝した藤田寛之は今季ドライバー、フェアウェイウッドともに「ツアーAD PT」に変更した。なお、17年の時を経て50g台に硬さXモデルが追加された。
ドライバーに装着される長さで発売当初のコスメの物なら1万円台前半から、2014年以降のコスメのものなら1万円台後半から、2023年以降のコスメだと3万円弱で見つかるだろう。
金谷拓実が替えられないちょい古シャフト
金谷拓実がドライバー、フェアウェイウッドに入れているシャフトは、USTマミヤ「THE ATTAS」(2018年)で5年前に発売されている。ATTASシリーズの10代目に当たるモデルで、稲見萌寧も使用していた現在も人気のシャフト。1万円台後半から手に入る。
2022年には「THE ATTAS V2」という後継モデルが発売された。こちらは現在国内女子ツアーで人気を博し、原英莉花、西郷真央、稲見、桑木志帆などが使用している。どちらも癖がなくタイミングが取りやすいニュートラルなシャフトだ。ドライバーに装着できる長さなら2万5千円前後から見つかる。
中古でしか手に入らない「スピーダー エボリューション」
すでに“絶版”、中古でしか手に入らないのが、申ジエ(韓国)がドライバーに装着している藤倉コンポジット「スピーダー 569 エボリューション 4」(2017年)。先端が走る印象のある「スピーダー エボリューション」シリーズだが、2、4、6の偶数番号モデルは先端の走りは抑えめで、粘り感がある叩けるシャフト。1万円台前半からが相場となる。
グラファイトデザイン以外のシャフトメーカーは、販売開始から一定期間経つと、古いモデルを順次廃番にしている。現在の「スピーダーNX」シリーズが最新のラインアップなので、「スピーダー エボリューション」シリーズで残っているのは2020年発売の7だけだ。
最新は最善? イマドキのシャフト事情
シャフトはカーボン繊維の素材、折り方、巻き方…と、あらゆる面で進化を続けているが、それ自体はエンジンではなく、ゴルファーが持つ以上の力を生むことはできない。シャフトの仕事は、パワーをヘッドに効率良く伝えること。心地よいしなり感があり、タイミングが取りやすいモデルに慣れれば慣れるほど、他のモデルに替えにくくなるようだ。
最新モデルはもちろん、各メーカーが「最善」と胸を張れる素材や、製造工程を踏んで作られている。しかし、ゴルファーには「慣れ」という要素があり、必ずしも性能やデータが変更のカギになるとは限らない。実際には我々アマチュアも、気に入ったシャフトを見つけ、長く使うことがスコアメークに繋がるのだろう。
とはいえ、ここ最近は可変スリーブ付きヘッドの増加や中古シャフトの流通に伴い、リシャフトは以前よりも格段にコスパが良くなった。とっかえひっかえしてコースで試すワクワク感も捨てがたい。ご贔屓(ひいき)のプロが使うシャフトを繰り返し試せるのも、アマチュアの特権かもしれない。(文・田島基晴)
■ 田島基晴 プロフィール
1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。