中古お宝探訪 知られざる「単品アイアン」の世界・ウェッジ編
中古ショップのアイアン売り場で、揃いの“セットではないアイアン”が置かれているエリアをご存じだろうか。いわゆる「単品アイアン」と呼ばれるクラブの束だ。前回はロングアイアンに注目したが、今回はウェッジに目を向けていこう。
単品ウェッジ流行はタイガー・ウッズから
今でこそ「ウェッジは別売り」が一般的になったが、30年前まではプロや上級者もいわゆるアイアンセットに含まれるウェッジを愛用していた。尾崎将司らのブリヂストン「ジャンボMTN3プロシリーズ」や「J‘sチタンマッスル」、米ツアーで人気だったピン「アイ2」、全盛期の青木功が使っていたリンクス「マスターモデル」などはセットの一部として作られた。マニアはメーカーに、その手のモデルの“単品”を別注していたものだ。
タイガー・ウッズがタイトリストと契約する前、アマチュア時代に使用していたウェッジはクリーブランド「TA588」だった。こちらもセットもの(同じ型番のパーシモンウッドまであった)だったが、人気が出て単品で販売されるように。メッキ加工が施されていないRAWモデル等の限定モデルも数多く発売された。その後、ウッズはタイトリストのボーケイウェッジを愛用して単品ウェッジは一躍ブームに。他メーカーも追随し、アイアンセットの本数は徐々に減っていった。
単品ウェッジ流行の功罪
ジャンボ尾崎に影響されてグースのついたウェッジをこぞって使っていた日本の選手は、ウッズの影響でほとんどがストレートネックのウェッジを握るようになり現在に至る。ただし、プロがウェッジだけ別モデルを使う風潮が当時、一般アマチュアのスキルアップにつながったかと言えば、そうとは限らない。
ボーケイに続けとばかりに各メーカーからリリースされた単品ウェッジは当初、ストレートネックのアスリートモデルばかりだった。マッスルバックなどのアイアンセットとは、形状的にも重量帯もつながりは良いが、グースが付いたヘッドの大きいキャビティを使うゴルファーにとって、単品ウェッジの扱いは難しかった。住友ゴム工業(ダンロップ)の「ゼクシオ」アイアンユーザーには、AW、SWまでセットで買うゴルファーが今も昔も多くいる。アイアンセットと同じコンセプトで作られたウェッジとの相性が良いのは当然だろう。
ウェッジはウッズと同じ、松山英樹と同じ…というのがうれしいのはよく分かる。だが、スコアメークのためにはアイアンセットとの流れを大切にして欲しい。AW、SWをラインアップしているアイアンセットは、ミスに強く、やさしいアイアンが多い。
例えば、ピン「G430アイアン」(2022年)には少しグースがある。ストレートネックの単品ウェッジと組み合わせるよりも、セットもののウェッジとのつながりが良いと思う。ロフト45度から、50、54、58度のモデルが用意されている。それぞれ1万円台後半で見つかるだろう。
ピン「G410」(2019年)や「G700」(2018年)、グローブライド「オノフ 赤」(2020年)、ダンロップ「ゼクシオ エックス」も7000円前後で見つかった。どれもアベレージゴルファー向けのお助け機能満載のウェッジだ。
悪くないぞ AWまで“セットもの”
アイアンセットにあるAWの有効活用をおススメしたい。ピン「i230」(2023年)にはUWというロフト角50度の番手がある。フルショットする機会が多いロフトなので、「アプローチでAWはあまり使わない」という方なら、アイアン感覚で使える。中古では1万円台中盤で見つかった。
国内女子ツアーで人気のダンロップ スリクソンZXシリーズ。こちらもAWをラインアップし、SWまである。2段ソールでダフってもヘッドの抜けが良いと好評。AWでもそのソールが継承されているので使い勝手は良いだろう。AWほどではないが、SWもソール形状が近く同じフィーリングがある。「ZX5」(2020年)で1万円前後が相場だ。
単品ウェッジにもアベレージゴルファー向けモデルが増えてきたが、やっぱり「カッコいいから!」とアスリート用ウェッジをキャディバッグに入れ、苦労しているゴルファーを見かける。しかし、アイアンセットのウェッジはソール幅がしっかりあり、ロフト的にも、バウンス的にも、アイアンとのつながりがしっくりくる。シンプルに攻めたい、やさしさを求めたいなら今一度チェックしてほしい。その際はシャフトのチェックをお忘れなく。見栄よりも、スコアを大切にしてみてはいかがだろう。(文・田島基晴)
■ 田島基晴 プロフィール
1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。