J’s、TS201、ツアーB…ブリヂストンの軟鉄鍛造なぜ人気? お手頃中古リサーチ
ブリヂストンの新アイアン「241CB」、「242CB+」の前評判が高い(9月6日発売)。シーズン中にもかかわらず、国内ツアーの男女プロが変更する姿が目立つ。同社はかつて軟鉄鍛造アイアンで圧倒的な人気と売上を誇っていた。優れたモデルを中古で探してみた。
ジャンボ尾崎に憧れたゴルファーがこぞって買った
尾崎将司とブリヂストンの軟鉄鍛造アイアンは切り離して語れない。1980年代にスランプに陥った際に誕生したのが、自身が監修した「ジャンボMTN3」(1983年)だった。86年に4勝、87年に3勝。88年には「日本オープン」を含む5勝を挙げ、「ジャンボMTN3プロモデル」が発売された。
その後、ジャンボ尾崎のブランド「J’s」が立ち上がる。「J’sアイアン プロフェッショナルウェポン」は高弾性のカーボンシャフトを装着し10本セットで40万円以上もした。軟鉄鍛造ボディのバックフェースをくり抜き、比重の軽いチタンを装着した「J’sチタンマッスル」(限定モデルが50万円超、カタログモデルは定価35万円)といった、伝統的な形状に先進性を加えたアイアンを次々発売した。
弟の尾崎直道監修の「JOEキャビティ」も代表作。やさしいプロモデルとして大ヒットした。それまでマッスルバック一辺倒だったツアープロが、軟鉄鍛造キャビティを使い始めるきっかけにもなった。飯合肇のオリジナルモデル「HM55」も流行した。
ツアーステージ人気を支えた丸山・伊澤時代
1993年のプロデビューから着実に勝利を重ね、新ブランド「ツアーステージ」の看板になったのが丸山茂樹だった。「MR23」は丸山監修モデルの証。ダイヤモンドバック構造と呼ばれるキャビティにより打感の良さと寛容性の高さを両立した。
伊澤利光もツアーステージ人気を支えたひとりだ。2度の賞金王戴冠、丸山茂樹とペアを組んだ2002年の「世界ゴルフ選手権」で優勝。「ツアーステージTS201」(2002年)は軟鉄鍛造にしては深めのキャビティで、ロングアイアンがポケットキャビティというやさしいプロモデル。抜けの良いソール形状で、“イザワのフェード”に憧れたゴルファーがこぞって使った。湯原信光の「NB32」や倉本昌弘の「倉本プロモデル」等も登場した。
受け継がれるプロ仕様アイアン
軟鉄鍛造アイアンの伝統と先進性を追求してきたブリヂストン。近年もシンプルでクオリティの高いモデルを世に送り込んでいる。中古市場を見てみよう。「J15 CBアイアン」(2014年)は適度なサイズ感と、浅すぎず、深すぎないキャビティ構造が魅力。ソール幅も適度に広く、“100切り”を達成した意識の高いゴルファーにオススメしたい。6本セットで3万円台前半が相場だ。
「TOUR B X-CB」も歴代モデルを推薦できる。2016年モデル、18年モデルはどちらも6本セットで4万円台前半から見つかる。
そして「241CB」発売のニュースでお手頃感が増しているのは「221CB」(2022年)。軟鉄鍛造のシンプルなキャビティ。十分な機能が備わっており、コスパの高さを感じられそう。6本セットで6万円台後半から見つかる。
軟鉄鍛造の“お助けモデル”もチェック
もう少し“お助け要素”が欲しいと思うゴルファーには「ツアーB X-CBP」(2018年)がオススメだ。プロモデルに比べて、ヘッドサイズがひと回り大きく、フェースはクロムモリブデン鋼を肉薄にして反発を高めている。キャビティも深いのでミスヒットにもかなり強い。2017年モデルが3万円台前半、2018年モデルは4万円台前半が相場。状態と顔の好みで選んでいいだろう。
もう少し予算があれば、「202CBP」(2020年)や「222CB+」(2022年)にも挑戦したい。特に「222CB+」は「221CB」と迷うほど、シャープな外見にお助け要素をプラスしている。仕上げも美しい。
J‘s、ツアーステージ…とブリヂストンのアイアンの思い出は尽きない。「いったい、何セット買ったんだ…」と振り返ると悲しくなるが、もう一度手に入れたくなる逸品が多く存在する。長い年月を重ね“B”の軟鉄鍛造は、地味だが確実に改良を重ねている。オールドファンも久しぶりに試してみてはいかがだろう。(文・田島基晴)
■ 田島基晴 プロフィール
1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。