人気“鍛キャビ”アイアンを中古でリサーチ 狙い目は「ZX7」や「221CB」?
2024年のゴルフクラブ売上トレンドの一つに、軟鉄鍛造アイアンの大ヒットがある。ダンロップの「スリクソンZXi」シリーズ、ブリヂストン「241CB」、テーラーメイド「P7CB」等の人気が高かった。アスリート志向のアマチュアゴルファーにも人気の軟鉄鍛造キャビティアイアン(鍛キャビ)の中古モデルにスポットを当てた。
「軟鉄鍛造=打感が良い」のウソ・ホント
「打感が良い」は軟鉄鍛造アイアンのキラーワード。軟鉄とは炭素などの含有量が少ない軟らかい鉄の総称で、熱した軟鉄を金型で圧縮し成型することを鍛造と呼ぶ。圧縮する際に金属内部の結晶が整い、強度を確保できるメリットがある。
軟らかいにもかかわらず、強度を保てる素材はアイアンづくりに向いている。しかしイマドキの鍛キャビは、飛距離性能と寛容性を高めるため軟鉄鍛造なのはボディだけ。フェースにはバネ鋼と呼ばれる、弾きの良い素材を溶接したモデルが人気だ。
実は打感に影響するのは、素材よりも打面の厚み。軟鉄鍛造であってもフェースが薄ければ、弾きが強い打感になる。弾く感触を少なくするために、フェースの後ろに衝撃吸収材などを配置して「良い打感」を実現するクラブも多い。
打感を優先する構造にすることは、寛容性を犠牲にすることに他ならない。純粋な鍛キャビはキャビティ構造がさほど深くなく、寛容性もマッスルバックと大差がないと言える。しかし、代わりに得られるのはマッスルバックと変わらないナイスショット時の“快感”。打感が繊細だからこそ、ミスショットもしっかり教えてくれる。
人気の鍛キャビ 今いくら?
フェースにタングステンニッケル合金を採用しているダンロップ「スリクソンZX5 MkII」(2022年)は飛距離性能と寛容性を両立しているが、打感にこだわるなら純な鍛キャビ「ZX7 MkII」(2022年)を勧める。打感と操作性の良さに加え、地面とのコンタクトに高い寛容性があるソールが特徴。まだまだ絶大な人気があり6本セットで8万円前後が相場だ。予算的に厳しい場合は前作「ZX7」(2020年)もオススメできる。6万円台前半から見つかるだろう。
同じく「241CB」が大ヒット中のブリヂストンの前作「221CB」(2022年)にも太鼓判を押せる。こちらは6万円台から探せるだろう。前作の「ツアーB 201CB」(2020年)は5万円台前半が相場だ。
フォーティーンやヤマハ、海外ブランドにも名品
フォーティーンは軟鉄鍛造にこだわりがあり、頑固な鍛キャビを作り続けている。「TB-7」(2022年)はヘッドサイズがコンパクトで一見マッスルバックにも見えるが、ソール幅がしっかりあり扱いやすい。5本セット7万円前後で見つかる。
ヤマハ「RMX VD/R」(2023年)は焼きなまし製法で打面に厚みを持たせた。ズッシリとした軟鉄鍛造らしい極上の打感が楽しめる。7万円台後半が相場と言える。
テーラーメイド「P7MC」(2020年)は短い番手からウェッジへの顔のつながりが美しい。この流れは2023年モデルや「P7CB」にも引き継がれている。6本セット、6万円台で見つかるだろう。
飛距離性能が譲れない人はキャロウェイ「X FORGED STAR」(2021年)はどうか。7番で29度と鍛キャビとしてはロフト角がストロングだ。必然的に5番もストロングになる点をお忘れなく。6本セット6万円台で見つかるだろう。
もっと手軽に楽しみたい人に…5万円以下の予算で探すと
ブリヂストン「ツアーB X-BL」(2018年)は3番から7番までがキャビティで、8番からPWまでがマッスルバック形状のコンボアイアン。限定モデルで数が少ないからこそ、誰とも被らないのが魅力。「ツアーB X-CB」(2018年)は最近、中古在庫が増えてきた。日米両ブランドの“顔”がイイとこ取りされ、構えやすい。
ダンロップ 「スリクソン Z785」(2018年)はZX7の前身モデル。ミズノ「MP-55」(2015年)はヘッドサイズが大きく、程よいグースがついているのでつかまりも良い。3万円前後で見つかる。ところで「ミズノと言えば軟鉄鍛造」というイメージが近年は薄れつつあるのが残念だ。
イマドキの軟鉄鍛造モデルは、軽くて弾くフェースを使うことで飛距離性能と寛容性を上げている。しかし純粋な鍛キャビのファンは減らない。マッスルバックより少しやさしくて、打感も劣らない点が好まれている。長く愛して使いこなそう。(文・田島基晴)
■ 田島基晴 プロフィール
1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。