“飛び系アイアン”3つのワナ 「本当に僕らの味方なのか?」を中古で考える
「飛距離が落ちてくると、ゴルフがつらくなってくる」。これはゴルフ好きだった筆者の父が、よく口にしていた言葉だ。昔はどこか他人事のように聞いていたが、気づけば今、同じ言葉を口にしている。パー4の2打目でアイアンを持つ機会が激減し、フェアウェイウッドやユーティリティに頼る日々…。父の言葉がよくわかる。同じように感じるゴルファーの脳裏には、そこで“飛び系アイアン”が浮かぶはずだ。現状と中古市場を探ってみた。
飛び系アイアンの元祖は「UD+2」
2007年に発売されたプロギア「eggアイアン」が飛び系アイアンの元祖だろう。2014年にヤマハが出した「インプレスRMX UD+2」を経て、2016年の後継モデル「インプレス UD+2」が大ヒット作になった。これを機に各メーカーがこぞって飛び系アイアンを発売し、一世を風靡した。2代目UD+2のリリースから約10年が経過した今、当時の熱狂的なブームは落ち着いたように見える。しかし、それは飛び系が廃れたわけではなく、アイアンのジャンルのひとつとして完全に定着したと言っていいだろう。
ところで、いま改めて実戦的な視点で考えたとき、飛び系アイアンは本当に我々ベテランゴルファーの救世主になり得るのだろうか? メリットとデメリットを冷徹に分析しつつ、中古市場での賢い選び方を考えてみた。
メリット:同じ番手の感覚で飛距離を取り戻せる
飛び系アイアンのメリットは、何と言っても「かつて打てていた昔の番手と同じ距離を、今の自分が打てること」に尽きる。セカンドショットで「7番」を持てる安心感、そして実際にグリーン付近まで運べる快感は、スコアメークだけでなくモチベーションの面でも非常に大きい。
「どうせ7番の刻印を押した5番アイアン(ロフトが立って、長い)だろう」という考え方もあるが、最新モデルは単にロフトを立てただけではない。深重心・低重心化が進み、フェースの反発性能を高めることで、ロフト角が小さくても球がしっかり上がるように設計されている。
デメリット:ミスヒット時の縦距離のブレと「止まらない」リスク
一方で、デメリットもしっかり理解しておく必要がある。 最大の弱点は、通常のアイアンに比べてミスヒットした際の飛距離ダウン(縦距離のブレ)が大きい点だ。芯を喰ったときは驚くほど飛ぶが、少しでも外すとガクッとキャリーが落ちる。極薄フェースの弾く面積がさほど広くないからだ。
また、バックスピン量が減る傾向にあるため、基本的には「スピン」ではなく「弾道の高さ」でグリーンに止めることになる。硬いグリーンや、風の強い日には、思った以上にランが出てグリーンをオーバーしてしまうリスクがある。
中古で購入する際の3つのワナ
中古市場で飛び系アイアンを探す場合、絶対に注意すべきポイントが3つある。
(1)PWの下の番手をどうする?100yd前後の飛距離の階段崩壊
飛び系アイアンはロフト角が立っていて、ピッチングウェッジ(PW)のロフトが38度~40度前後(通常の8番~9番アイアン相当)になっていることが多い。通常使う52度や56度といった単品ウェッジを組み合わせると、PWとのロフト差は12度以上も開いてしまう。結果として、アマチュアにとって最も重要な「100yd前後」の距離を打ち分けるのが難しくなり、飛距離の階段が崩壊するのだ。 中古で探す際は、必ずセット物の「AW(アプローチウェッジ)」や「AS」が含まれているものを探そう。もしくは、ロフトピッチ(番手間のロフトの差)を広げているモデルを選ぶこと。飛距離が落ちてくるとロフトピッチが大きくないと飛距離差が出にくいからだ。PWが42~44度ぐらいなら、下の番手問題に対処しやすい。
(2)7番のロフトは「28度」前後が実用的
一時期は「7番でロフト25度」といった過激なモデルが乱立したが、最新のトレンド(ピンの最新モデルなど)を見ると、ロフトをやや寝かせる動き(7番で26.5度から28度へ変更など)がある。 あまりにロフトを立てすぎると、一般的なアマチュアのヘッドスピードでは球を上げきれず、結局キャリーが出ずに混乱してしまうからだ。現実的に使えて、しっかり恩恵を感じられるのは「7番で28度」あたりが妥当なラインだと筆者は考えている。7番までがアイアンセットで、6番&5番はアイアン型UTだと思えばいい。
(3)シャフト選びのワナ(カーボンか?軽量スチールか?)
飛び系ヘッドは、「軽量でボールが上がりやすいカーボンシャフト」が装着されているモデルがほとんど。だが、これまで日本シャフト「N.S.PRO 950GH」のような軽量スチールを使ってきたベテランが、ヘッドの飛び性能に釣られて軽すぎるカーボンに替えると、手元が軽くなって手打ちを誘発し、弾道がバラつくケースが多い。中古で狙うなら、ヘッドは飛び系にしつつも、シャフトは今使っているモデルと同じか適度に重量感があるシャフトを使いたい。リシャフトして70g程度のやや重めのカーボンシャフトが装着してあるものがあればラッキーだ。
いま中古で狙うならこの3モデル
最後に中古のおススメモデルを紹介しよう。7番でロフト28度のモデルだが、ピン「G710」(2020年)は大きめの中空ヘッドで、バウンス角も十分付いていてコースでやさしさを実感できる。純正シャフトが多いので、中古でも自分の好みのシャフトが見つけやすい。5本セット6万円前後で見つかる。
ブリヂストン「213HF」(2021年)も中空で内部にポリマーが入っており、打感も悪くない。6本セットで5万円前後というコスパの良さも魅力だ。
プロギア「04アイアン」(2024年)は深いキャビティの軟鉄鍛造ボディ。ライ・ロフト調整もできるし、構えやすい形状も魅力だ。筆者が思わずポチってしまいエースに昇格している。この記事を書くきっかけとなったアイアンだ。5本セットが7万円前後で見つかる。
“ちょい”飛び系アイアンなら意外と違和感なく使える。これは筆者の率直な感想だ。ホームコースで、長めのパー3をアイアンで打てる喜びが改めてわいた。「アイアンセットなんて、もういらない」と思うと、やはりアイアンがどんどん苦手になっていく。地道に練習すれば、やっぱり頼れる。中古ショップで新しい相棒を探してみよう。(文・田島基晴)
■ 田島基晴 プロフィール
1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。