洋芝の洗礼にご用心! ホウライカントリー倶楽部(前編)
風光絶佳に隠されたワナ
スコア90台で伸び悩むゴルファーに向けた応援企画が本格的にスタート。同じ悩みを抱えるGDO編集部員・N村(40代・独身)が目指すのは、ただの80台ではない。あえて難コースに挑戦することで、上級者からも認めてもらえるようなスコアを出すことである。というわけで、最初の舞台が栃木県のホウライカントリー倶楽部に決まった、というまでが前回のあらすじだ。
朝靄で那須連峰の稜線がぼやけている。冷たい風が頬をなでる。高原コースに来たことを感じさせられる。その中で記念すべき1打目は朝靄を切り裂くドライバーショットといきたいところだったが、トップしてフェアウェイ手前のラフへ。そのラフも何たる、ねちっこさ。100ヤード程度出すのが精一杯。不吉な結末を暗示するかのようなスタートとなった。
案の定、洋芝のフェアウェイは狭く、ラフに行けばボールがすっぽり沈んで距離が出せない。青く湛えた池の水面には、何度と水しぶきが上がる。グリーンに乗っても、狙い通りに転がらない。怖気づいたN村は次第にドライバーショットが大きく曲がり出した。林から出しても、ラフに入る。完全に袋小路に陥った。スコア105。いきなり、突き付けられた現実だった。
頼もしい相棒が登場。再チャレンジへ!
「パーを取れたの、2ホールだけかよ……」
スコアカードを見て、ため息が止まらない。そんなN村の肩越しからスコアを覗いては、「ずいぶん叩いていますね。でも、誰でもいつもより5から10ほど多めに叩くコースなので気にしないでください。ハハハ……」と笑い声が。その主は60代くらいの男性だった。濃紺のブレザーを着用し、胸にはホウライカントリー倶楽部のロゴが映える。オーラ全開といった感じ。
その方のお名前は、磯誠一さん(64歳)。何を隠そう、ホウライカントリー倶楽部で2014年のクラブチャンピオン(クラチャン)だ。ゴルフ歴は19歳からと長いが、本格的にゴルフに取り組んだのは仕事を辞めた後の60歳からだというからその熱意たるや恐れ入る。上着を脱ぐと体格もガッシリしていて、年齢を感じさせない。
クラチャンなら、このコースの隅々まで知っているはず。攻略のポイントを聞くと、「大切なのは240ヤード先を狙える精度の高いティショットですね」とサラリと言われてしまった。
もはや、N村の出る幕はなさそうだ。潔く退散しようとすると、磯さんから提案が。
「これから回るので、良かったら、一緒にどうですか?」
まさかのクラチャンからの誘い。断る理由はないだろう。そんな失礼なこと、できるわけもない。かくして、N村に名誉挽回のチャンスが与えられた。