このコースで真の80台!

「つなぎ」のショットでチャンスを残そう! 宍戸ヒルズカントリークラブ 西コース(後編)

2015/12/25 09:15

最難関ホールにも“抜け道”はあった!

「ツアー史上最も難易度の高いパー4」とも言われる名物の17番ホール。N村のモチベーションも最高潮に。実際は430ヤードでプレー

紆余曲折を経た15番ホールを5オン2パットで終え、16番ホールでも連続ダブルボギーを叩いたN村。だが落ち込むどころか、モチベーションの火は燃え盛るいっぽう。その根源となるのは、17番ホールが宍戸ヒルズカントリークラブ 西コースの名物ホールであり、「日本を代表する難易度を誇るパー4」だからだ。

そして、ここでパーを取れれば……、
建前:何にも代えがたい経験になるからだ。
本音:自慢のネタになるからだ。

大きな池を越える2打目はフェアウェイからのショットが必須。だが、ティショットの難易度は高く、右サイドのOBを怖がると、左サイドの深いラフにはまりやすい。プロのトーナメントでも平均スコアはパー5並みに

GDOスコア管理アプリで抽出したホール・バイ・ホールの難易度ランキングを見ると、断トツの1位。パー4に対して平均スコアが5.95ということは、上級者が回ってもダブルボギーになってしまう計算だ。

このホールの難しさは、全長の長さと2打目地点が総じて左足下がりのライになるということだ。そして、グリーン手前に池が広がるため、グリーン手前の花道を使って転がし上げる戦略が期待できない。

よって、N村はハナから3オンでのパーセーブ狙い。リラックスして臨めたおかげで、ティショットはフェアウェイの真ん中に。ちなみに、北野プロのティショットはN村より50ヤード以上先のフェアウェイを捕らえている。

N村の2打目で、池まで届いてしまう5番ウッドをすすめた北野プロ。池の左サイドに配された狭いフェアウェイを狙う理由を聞いて、N村から迷いは消えた

N村は2打目を池の手前に刻むためアドレスに入ろうとした途端、北野プロはターゲットの変更を提案。そして、その指差す方向とは……。

(北野プロ)ここは思い切って、5番ウッドで池の左サイドのフェアウェイを狙ってみませんか。
(N村)あの狭いエリアですか?グリーンの幅よりも狭いですよ。
(北野プロ)左サイドのラフまでターゲットを広げていいですから。そうすれば、つかまり性能が高い5番ウッドでも気楽に打てますよね。7番ホールでの2打目のことを思い出してください。
(N村)なるほど。あのときは左サイドが池だったから、5番ウッドは避けたんですよね。その逆の発想か。
(北野プロ)池の手前に刻むという判断は、このホールに限れば大手を振って賛成とはいきませんね。池手前もよく見ると平坦ではありません。わずかですが、左足下がりのライなのに気づきましたか。
(N村)あっ、ほんとだ。なんか、また池に入れてしまいそうな気がしてきた……。
(北野プロ)距離がかなり残るので、池に入れる可能性も少なくないんです。極端な言い方をすれば、2打目で入れるか、3打目で入れるか、どちらがいいかという話。かりに2打目を5番ウッドで池に入れたとしてもグリーンに近づくことができますし、池に大きくかからないエリアにドロップできる可能性もあります。そう考えると、チャンスを残す「つなぎ」のショットとしては、5番ウッドのほうが最適なのです。
(N村)これまでとは違う、積極的な刻みのショットですね。

左迂回ルートは思いのほかフェアウェイが広く、アマチュアにとってはうれしい抜け道だった。ほとんど池にもかからないため、プレッシャーなくグリーンを狙える

5番ウッドで池の左サイドに運び、3打目地点に来てみると、遠くから見るより広いエリアが確保されていた。先ほどのラウンドはグリーンを直線的に見ていたので、まったく気づかなかった。コース全体を俯瞰するような視野の広さは必要だなあ、とN村はしみじみ。

北野プロの2打目は3番ウッドできっちりグリーンを捕らえる。「さすが」と唸らせられる反面、持たされる番手の大きさに驚かされる。北野プロは決して飛距離が出ないわけではない。むしろ、飛ばし屋の部類に入るのに、である。

コースの難しさはグリーンまで続く。池に向かって傾斜がきつく、スピードも速いので注意! N村はグリーンに乗ったところで油断し、3パット。そして北野プロまで、N村につられるように……。

N村のスコアカード。上段が1人で回った時のスコア(111)、下段が北野プロのアドバイスを受けて出したスコア(101)。大叩きした15番と17番で改善を図れたが、乾いて高速化するグリーンに後半は手を焼く

勝者が喝采を浴びる18番ホールのグリーンでのプレーを終えると、スコアは「101」で終了。二桁にすら及ばない自身の不甲斐なさと同時に、北野プロがいなかったら、と考えると……。

(N村)北野プロ、ありがとうございました。ノルマは未達でしたが、僕の技術ではまだ足りないということです。
(北野プロ)私もこれだけ歯ごたえのあるコースを回ったのは久しぶり。17番ホールもダボを叩かなくてよかったです(笑)。
(N村)これだけの難関コースを、マネジメントしながらプレーするのは難しいなあ。でも、これ

すべてを出し切り“カラカラ”のN村に、優しく手を差し伸べる北野プロ。エネルギー配分を考えてラウンドできるような日は来るのか……

でまたトーナメントを見る楽しみが増えました。
(北野プロ)確かにここで80台を出せたら、かなりのレベルだと評価できますね。N村さんには、1つアドバイスしておきましょう。私はプレーに使えるエネルギーとは、個人差こそありますが、有限だと考えているんです。
(N村)それは初耳ですね。
(北野プロ)エネルギーと言っても、パワーや集中力など様々な要素を指すのですが、18ホール、そしてホールごとにエネルギーを配分できる人が上級者。対して、アマチュアはティショットでエネルギーの6割くらいを使い果たしてしまうんです。
(N村)僕のプレーはどうでしたか。
(北野プロ)たとえば15番のロングホール。ティショットに全力を注ぎましたよね。結果的にナイスショットでしたが、そのせいで2打目、3打目のときはカラカラの状態でしたよ(笑)。本来なら、グリーンに近づくにつれ、エネルギーの消費量が増えていくのがスコアメイクの定石です。これからは、良い意味での“出し惜しみ”を覚えてください。

さすがは北野プロ。その含蓄ある言葉は、いつもN村の心に深く沁みるのだ。だが、エネルギーが本当に有限だとしたら、N村は朝イチのショートホールでその大半を使い果たしてしまったのかもしれない。

・17番ホールは左迂回ルートを活用する

(取材協力/宍戸ヒルズカントリークラブ

※次回の公開は2016年1月8日(金)を予定。N村の挑戦は来年も続き、アザレアカントリークラブ(茨城県)で幕を開けます。

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