N村、ジェイソン・デイになる!? アザレアカントリークラブ(前編)
距離と引き換えに問われるショットの正確性
スコア90台で伸び悩むゴルファーに向けた応援企画も4コース目に突入。同じ悩みを抱えるGDO編集部員・N村(40代・独身)が目指すのは、ただの80台ではなく、あえて難コースに挑戦することで上級者からも認めてもらえるようなスコアを出すことである。
だが、ホウライカントリー倶楽部やゴルフ5カントリー オークビレッヂ、宍戸ヒルズカントリークラブ(西コース)で思うような結果が残せず、N村にも次第に焦りの色が……。
N村が今回挑戦するアザレアカントリークラブは、GDOが選定した難易度ランキング(※1)で5位に入る。全長6418ヤード。ゴルフ5カントリー オークビレッヂや宍戸ヒルズカントリークラブ(西コース)よりだいぶ短くなる。
ホウライカントリー倶楽部と同じ全長だが、難易度の高い洋芝のフェアウェイではなく、またこちらは300ヤード強の短いミドルホールが5つあり長短のメリハリがついている点で異なる。平均飛距離220ヤードの決して飛ばすタイプではないN村にとって、距離のストレスがないホールがあることはありがたい。
(※1)累計50万人以上のゴルファーが登録するGDOスコア管理の中から、最近1年間(※2)で平均スコアが89以下の登録者を対象とし、平均スコア90以上を叩いているコースを抽出。さらにスコア登録枚数20枚以上、GDOが提携する関東近郊ゴルフ場という条件を加えてランキングを作成。
アザレアカントリークラブのホームページのコース紹介ではOBゾーンになっていたいくつかの箇所が、ローカルルールとして赤杭(1ペナでの前進プレー)に変更されている。どちらでプレーすることも可能だが、N村は男らしく(!?)リスクが大きいOBでのプレーを採用。距離によるストレスが和らいだせいか、大きく出たようだが、この選択が命取りだと知るのに時間は掛からなかった。
出足からコースの狭さを思い知らされたN村。赤杭や白杭もすぐそばまで迫っている。彼のショットの精度では到底左右幅に収まるはずもなく、2番ホールで早々に初めてOBを記録。
そして6番のショートホールでも、ティショットを大きく左にミス。OUTコースはこの2発で済んだものの、アザレアカントリークラブの罠に完全にはまったN村。OBの連鎖は、INコースでも収束する気配はなかった。
INコースに入り、10番ホールだけで2発目のOBを放った際には、ついに胸の内に秘めていた思いが駄々漏れに。「赤杭でプレーしていれば、余計な打数を増やさずに済んだのに……」。そして、N村のショットは崩壊の一途を辿る。自慢(!?)のオーバースイングはそのままに、左右ハザードの恐怖心からスイングリズムが狂わされ、弾道は制御不能に陥った。
N村がパーを計算していた短いミドルホールもOBで台無しに。結局、OBの数はOUTコースが2つで、INコースは4つ。そして、スコア「101」で終えたN村の第一声がこれ。
「6つのOBがなければ80台だったのになあ~」
「OBがなければ……」。アマチュアがよく口にする“タラレバ”である。まだそんなことを言える元気があるのも、N村はスコアアップの切り札であるプロをちゃっかり呼んでいるからだ。そこから二人三脚のラウンドでリベンジする。この流れは、定番化してきた感も。
脳内トレーニングでN村を待つツアープロ
今回、N村が頼ったのは、2003年に『久光製薬KBCオーガスタゴルフトーナメント』で優勝した経歴を持つ田島創志プロだ。10歳でゴルフを始め、パーシモンのウッド、コンベンショナルなブレードアイアンで技を磨いた“最後の職人”世代の1人。歴代総理大臣を2人輩出した屈指の進学校、高崎高校出身で、そこからゴルフの名門、日本大学に進んだ、文武両道のゴルフエリートである。
そんな田島プロの様子がおかしい。頭にバンドを巻いて、何なら真剣な眼差しでタブレットを見ているのだ。N村は興味津々に尋ねてみる。
(田島プロ)これですか?『フォーカスバンド』と言います。脳波を計測することによって、脳の活動領域が分かるんです。タブレットにある脳の画像を見ていてください。
(そして、目を閉じる田島プロ)
(N村)おおっ。脳左半分が赤く光っていたのに、脳右半分が緑色に変わりましたね。
(田島プロ)これで、右脳メインに切り換えるトレーニングができるんですよ。
(N村)右脳を切り替えたほうがゴルフにいいんですか?
(田島プロ)一般的に、右脳と左脳には役割の違いがあると言われています。大まかな言い方になりますけど、右脳が感覚的な分野を、左脳は論理的な分野を処理するとされています。普段われわれは五感を通じて様々な情報が入ってくるので左脳優位に働いていますが、情報過多になって体がスムーズに動かないというデメリットが起こるんです。それを、プレー直前だけでも右脳優位の状態に切り換えられるようにトレーニングしているんですよ。
(N村)そうすると、どういうメリットが?
(田島プロ)ゾーンに入ったような状態になり、考え過ぎずにシンプルにプレーできます。たとえば、ルーティーンが簡素化されるので、イメージしたらスッと打てるようになりますよ。
(N村)ホントですか!?
図々しくもバンドを借りて、測定してみるN村。だが、雑念を振り払おうと意識するだけでは左脳優位の状態から切り替わらない。そこで、田島プロが「目を閉じてみてください。目からの情報が遮断されるので効果的ですよ」とアドバイスしてくれた。なるほど。脳内をコントロールするにはトレーニングが必要だが、目を閉じるだけでもある程度の効果は見込めるようだ。
『フォーカスバンド』を日本に導入した初めてのプロゴルファーが田島プロである。さっそくフェースブックで紹介したところ反響が大きく、ツアーで活躍するトッププロからも問い合わせがあったとか。今シーズン、話題を集めるかもしれないので、ぜひ、『フォーカスバンド』のことを覚えておいてほしい。
N村はプロの試合でもそんな光景を見たことがある。昨年の全米プロゴルフ選手権を制したジェイソン・デイだ。彼がショットの前に目を閉じるルーティーンは同様に、集中力を高める効果を期待したものだという。
「実は僕より2年も前から、デイは『フォーカスバンド』で脳内のトレーニングをしていたそうです。トレーニングのレベルが僕は37(取材当時)なのに対し、デイは80だというから、かなり右脳を使うことに長けているはずです」と、田島プロは教えてくれた。デイの近年の目覚ましい躍進ぶりの理由が分かった気がした。