このコースで真の80台!

高速グリーンより厄介!? 煩悩の数だけ悩みは尽きません カレドニアン・ゴルフクラブ(前編)

2016/03/11 09:15

B to Bで、N村がいきなりピンチ!

ティショットをバンカー手前に刻めば、セカンドショットで距離が残る。フェアウェイは左に傾斜しており、引っ掛けてグリーン左サイドの深いガードバンカーに入りやすいので注意

1番ホールは、カレドニアン・ゴルフクラブの難しさを凝縮させている、と大本研太郎プロ。

「このコースを攻略するには、バンカーに入れないことが鉄則。ティショットではフェアウェイウッドやアイアンを使えるだけの技術と勇気が必要で、1番ホールはその典型と言えます。フェアウェイの左サイドにあるバンカーはアゴも高く、絶対に避けなければいけません。だからティショットではバンカー手前に刻むのがベターです」

大本プロはティショットで3番ウッドを使用。手本のように、糸を引くような低い弾道で、バンカー手前に刻んだ。

大本プロからティショットのレクチャーを受ける。フェアウェイの左側に見えるバンカーに注意を払わなければならないが、N村の飛距離なら気兼ねなく打てる

続いて、N村のティショット。散々、フェアウェイバンカーを避けるように注意されたが、届かせるには250ヤードが必要だと判明。つまり、ドライバーの平均飛距離が220ヤードのN村にとっては、まったく問題ないというオチだ。ただし、レギュラーティであれば、220ヤードで入ってしまうので、やはりケアしなければいけないハザードと言えるだろう。

オーバースイングから放たれたティショットは、ショートアイアンのような高い打ち出し角で、連載当初から変わらない。スピン量も5000rpm前後あるだろうか。それでも、持ち球だった弱々しいスライス弾道はたいぶおさまり、左サイドに飛び出したボールはまっすぐ進んでバンカーの手前に止まった。

(※2)2015年1月1日~2015年12月31日

カレドニアン・ゴルフクラブの1番ホールは、GDOスコア管理アプリで抽出したホール・バイ・ホールの難易度ランキング(※1)で4番目にランクされる。「アマチュアゴルファーが、朝イチや午後の1打目でフェアウェイウッドやユーティリティを持つのは勇気がいります。うまく刻めたとしても、セカンドショットでは距離が残るので気が抜けません。かといって、ドライバーを握ると左サイドのバンカーにはまったり、プッシュして右のバンカーの先の谷に落ちたら大叩きもあり得ます」と、大本プロはこのスタートホールの難しさを分析する。

(※1)GDOスコア管理アプリは、累計60万人以上のゴルファーに愛用され、プレー中でも片手で簡単にスコア登録が操作できる。その膨大なデータの中から、最近1年間(※2)で、カレドニアン・ゴルフクラブを回った平均スコア89以下の登録者のスコアをもとに集計

バンカーショットにおけるボール位置のイメージ。大本プロから見て一番左(写真では一番右)のボールが軟らかい砂質の場合

セカンドショットはグリーンまで165ヤード。そこでN村は、痛恨のミスを犯す。つま先上がりのライを甘く見てしまったのだ。「あっ! ダフった」。そして、刻んだはずのバンカーへ打ち込んでしまうと、そのバンカーショットはグリーン左サイドのガードバンカーに吸い込まれる、いわゆる、バンカー・トゥ・バンカー(B to Bとも呼ぶらしい)。さらに、そのライが“目玉”という最悪の事態に陥った。

一度では脱出できず、2発目も弱々しくグリーンに乗せるのが精いっぱい。2パットで切り抜けられたが、トリプルボギーという苦難のスタートになってしまった。このホールだけでN村のバンカーショットを3回見た大本プロ。この大叩きも、想定内だったようで……。

軟らかい砂から打つ場合、バウンスをしっかり使うことがポイント

(大本プロ)N村さん、バンカーショットでよくダフりますね。
(N村)でも、バンカーショットはボールの手前を打つわけですよね。ちょっと、打点がズレただけですよ(なぜか強気のN村)。
(大本プロ)それは、大きな勘違いですね。通常のアイアンやウェッジでのショットを考えてみてください。スイングの最下点はどこですか?
(N村)ボールのやや先になります。
(大本プロ)その通りです。つまり、ボールの手前を打つということは、ボールの「真下」に届かせるイメージで正解。それで、手前を打っていることになります。そうすれば、インパクト以降はアッパー軌道になるので、自然と抜けが良くなりますよ。
(N村)そうだったのか~。「手前からダフらせる」という表現は紛らわしいなぁ。あぁ~、悔しい!
(大本プロ)あとは、砂質によってボール位置を変えるだけです。カレドニアン・ゴルフクラブのように軟らかめの砂なら、(右打ちの場合)ボールを通常よりも左めに置き、砂に対して“バウンスを滑らせる”イメージ。硬めの砂の場合は、右めに置いてクラブの“刃を刺す”、通常の砂質ならばその中間位置にボールを置き、“ソールで削る”イメージを持つといいかもしれません。
(N村)そんなふうに、イメージ通りに打てるかな……。
(大本プロ)ただし、インパクトの際に体の重心位置がボールと重なるように意識してください。人間は反射的に、ボールに対して体の正面から外すように動くものだそうです。でも、体の重心がボールの位置に重なっていなければ、つまりボールの正面に来なければ、スイング軌道の最下点がボールの真下にならず、ヘッドがボールの真下まで届かなくなります。とくに軟らかい砂を打つ場合は、ボールを左めに置いているので、そのぶん体重をしっかりと左に移動させるよう心がけないといけません。
(N村)バンカーショットの時、あまり体重移動していなかった気が……。
(大本プロ)N村さんのスイングを見て、このコースのバンカーは苦手だろうな、と一発で見抜けましたよ。右足に体重が残りやすいですからね。だから、手前の砂にクラブが跳ねてダフったり、トップしたり、球筋が安定しないわけですよ。
(N村)すべてお見通しだったわけですね。というか、早く教えてくださいよ(笑)。

自分だけの時間で、距離感を作る

7番ホールではパーチャンスからの3パット。短いパットを外し、落胆するN村と大本プロ

トリプルボギー発進でどうなるかと思われたN村だが、短いショートホールを含む3ホール連続パーで盛り返した。そして、7番ホールも寄せワンでのパーチャンス。ところが3パットで台無しにしたところで、ついに大本プロが重い腰を上げる。高速グリーンに適した距離感の作り方について指導を受けることになった。

(大本プロ)パットには、(1)読み(2)狙い(グリーンの速さを計算した上でラインを判断し、狙った方向へ的確に構えることなど)(3)距離感(4)方向性、以上の4つの要素が重要です。特に、カレドニアン・ゴルフクラブのような高速グリーンは他では経験できないので、距離感が狂わされるゴルファーが多いようです。
(N村)私は自分の心地よいストロークに対する距離を基準に、距離感を作るようにしてからパターに自信を持てるようになったのですが……。さすがに、ここまでグリーンが速いとなかなか一定のリズムで打てませんね。

(大本プロ)僕が、距離感を作るうえで大事にしているのは時間です。
(N村)時間?
(大本プロ)僕は10ヤード(約9メートル)上りのラインを基準とし、コースの練習グリーンで距離感を作ります。
(N村)上りですか?
(大本プロ)なぜ、上りが基準かと言えば、しっかり打たないとイメージ通りに転がらないからです。そして、カップ付近に到達するまでの時間を数えています。「1、2、3……」と数える早さやリズムはゴルファーそれぞれなので、基準も人それぞれということになります。たとえば、「7秒」を要したとします。実際にラウンドで同じような傾斜や距離の場合、7秒で届くようなイメージでストロークするわけです。距離がもっと短ければもっと短い時間で、同じ距離でも平坦もしくは下りのラインなら、もう少し時間が長くなるイメージでストロークします。そこから、傾斜の度合いなどによって、アジャストさせます。ちなみに、10ヤード以上になると、アプローチのイメージに切り替えています。
(N村)そうすると、どんなメリットがあるんですか?
(大本プロ)型にはまらず、振り幅にとらわれずに距離感を出せるようになります。インパクトに対する意識も軽減されて、結果、手もスムーズに動かせるはずですよ。
(N村)なるほど。そういうことですか。

7番ホールのグリーン上で大本プロが実際にこの距離感の作り方を解説してくれた。その模様は、左上の動画におさめられているので、パターに悩むゴルファーはもちろん、皆さんもぜひ、試してみてほしい。

OUTコースが終わったら、練習グリーンへ直行することを決意するN村。だが、その前に待ち受ける8番ホールと9番ホールが、カレドニアン・ゴルフクラブにおけるホール・バイ・ホールの難易度で1位を分け合うほどの難ホールだということをN村はまだ知らない……。

(取材協力/カレドニアン・ゴルフクラブ

※次回の公開は3月25日(金)です。N村の結末はハッピーエンドか、それとも!?

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