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古江彩佳のメモを拝見! 三色ペンを駆使して書いている内容は?

古江彩佳が練習ラウンド中、ヤーデージブックに何事かを“書きかき”している姿はお馴染みの光景だ。ティイングエリア上でもキャディと相談した後に何かを書き、フェアウェイでも2打目を打った後にペンを取り出しメモを取っている。さらにグリーン上ではボールを転がした後に、こちらも書きかき。コースをチェックしながらメモを取っているのだろうが、他の選手よりも入念に“書いている”ように見える。いったいどんな注意点をメモに取っているのか? 強い選手が試合前にチェックする内容は非常に気になるもの…。先日日本で行われた米LPGAの試合「TOTOジャパンクラシック」の会場で、古江本人にその話をぶつけてみた。

「基本的には各ホールの『行っていい場所』と『行ってはいけない場所』をチェックしています」と古江。メモの中身を見せてもらうと、赤いボールペンで行っていい場所には「OK」、行ってはいけない場所には「×」を入れている。ヤーデージブックを繰っていくと、目立つのは「×」の印、特に各ホールの危険ゾーンをつぶさにチェックしていた。「×」に打ち込んだらボギーの危険性がはらむ、試合中は絶対にそこに打たないマネジメントに徹するわけだ。

中でもグリーン周りの書き込みが入念で、例えば2番ホール(太平洋クラブ美野里コース)のページには、グリーン周りに6カ所近くの「×」、4カ所の「OK」、そして2カ所の「△」と、グリーンの外周を全て覆うようにメモが書かれていた。「グリーン周りは、練習ラウンドの一番のチェックポイントですね。いい場所と悪い場所、パッと見て分かるようにしています」と、2打目を打つ時にグリーン周りで外していい場所を分かるようにしているわけだ。

この古江の“書きかき”作業はナショナルチーム時代から続けていて、米国に戦いの場を移した後も欠かさず行っている。今年から米国ではグリーンブックも使用禁止になり、グリーン上の情報を自分で調べないといけなくなったから余計に時間はかかる(練習ラウンドで傾斜計を使って測るのも禁止になった)。「実際に球を打ったり、ボールを転がしたり、あとは見た目でもチェックして、グリーン上にも傾斜の線を入れています」(古江)。時に右手にパター、左手にメモを持ち、片手でパターを打って打ち終わった後にパターをペンに変えてメモに“書きかき”。あぁ、見ているだけで忙しい。

さらによーく見ていると、いわゆる3色ボールペンを使って、色分けして書いていることに気づく。黒色のペンで実際に転がしたラインを書き、赤色のペンを使ってグリーン面に傾斜を書き込む。赤ペンではグリーン上の平らな部分を楕円(だえん)で囲み、円の周囲に傾斜の線を引っ張る作業も。さらに本戦で切りそうなピン位置には緑色のペンで印をつける。黒のラインと赤い傾斜、緑のピン位置でうまく色分けされていて分かりやすく、「パッと見で分かるように」という古江の意図を感じる“デザイン”に仕上げているのだった。

他にも各ホールのページに掲載されているティイングエリアから見える景色の写真には、狙いどころに☆印を入れている。「そこまでシビアじゃないですが、だいたいこの辺に落ちたらいいよっていうところを必ずチェックしています」(古江)。さらに、どこまで打っていいかの“OKな幅”も書き込むのを忘れていない。これならいざティイングエリアに立った時に、迷うことがないだろう。メモの余白部分には練習ラウンドでの2打目の状況を記していて、グリーンエッジまでの残り距離、風向き、打った番手、実際のキャリーとランの距離…など実に細かい。

「実際本番ではメモもチョロッとしか見ないですけどね」と古江は言うが、こうした情報が頭の中に入っていることで、1打には満たないかもしれないが、0.5打ぐらいの小数点以下の数値を減らせているのだろうとつくづく思う。その積み重ねが平均スコアになって表れているような気がしてならない。試合前の古江のヤーデージブックは、まさにコース攻略ガイドのような1冊に仕上がっているわけだ。

メモを一通り見せてもらった後に、古江が「この記事っていつ上がりますか?」と逆に質問をしてきた。なぜそんなことを聞いてくるのかキョトンとしていると「きょう記事が上がると、このメモの中身が分かっちゃうので…」と申し訳なさそうに言う。話を聞いたのは練習日、そのタイミングで記事が上がれば、他の選手が試合前にその内容を見る可能性が出てくるからだ。メモの内容をライバルに知られたくない――そんな意思を言外に感じ、彼女の強さの一端を垣間見た瞬間だった。

古江は今週、米ツアーの今季最終戦「CMEグループ ツアー選手権」を戦う。ポイント上位者だけが出られる最終戦出場はこれで2年連続、現在のランキング10位も日本人の最上位だ。米国挑戦はまだ2年目だが、着実にその階段を上っている。(編集部/服部謙二郎)

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