プレゼンの緊張をほぐす呼吸メソッドは朝イチティショットにも効く
私はセルフコンディショニングの本を1000冊以上読んできました。過去には食生活を変えて体重を15kg減量したり、入浴術を学んで睡眠の質を高めたりしました。情報を取捨選択しながら心身の状態を整えています。そのなかで、もっとも仕事とゴルフに役立ったのが呼吸です。
え、呼吸?と思う方がいるかもしれません。毎日2万~3万回しているとされる呼吸は唯一人間の自立神経を能動的にコントロールできるものです。自律神経は交感神経と副交感神経のバランスを保つことが重要で、1回1回の呼吸の質を上げることが大切なのです。
では、どのような呼吸がベストなのでしょうか?いつも具体例で挙げるのがタイガー・ウッズのインタビューです。
試合で見せるあの強烈なスイングとは違い、ゆっくりと話しています。柔らかな表情で肩の力が抜けています。全身にムダな力が入っておらず、ゆったりとしたリズムで会話できているときが、その人にとって質の高い呼吸をしているときなのです。
友人と話しているときに緊張することは少ないでしょう。しかし初対面の人や重要なプロジェクトのプレゼンテーションの場では力が入ります。呼吸が浅くなり、早口になってしまったという経験は誰にでもあると思います。
緊張感をほぐすオススメの呼吸メソッドがあります。東京有明医療大学の本間生夫先生が開発された「呼吸筋体操」(イラスト参照)です。ポイントは呼吸筋(呼吸に使われる筋肉)と背中をしっかり意識すること。そして、息をゆったり長く吸ってから吐いてください。
プロスポーツ選手やビジネスパーソンでも取り入れているこの呼吸法は、ゴルフにも役立ちます。両サイドがOBのティショットや池越えのアプローチ。絶対に入れたいパットなど緊張する場面は多くあります。知らず知らずに力が入り、呼吸が浅くなっているのです。
私は朝イチのティショットなどで同伴プレーヤーが素振りをしているときに数回、この呼吸を行います。首や肩甲骨周りのストレッチにもなるため相乗効果を得られます。ちなみに、仕事の講演会や原稿の締め切り間際で慌てているときも、呼吸筋体操によって早口予防や凡ミスを回避しています(それでも早口はなかなか直りませんが…)。
ゴルフや仕事の大事な局面で一度冷静になってこの呼吸法を取り入れてみてください。プレッシャーに左右されず、本来の力を出せるようになります。入浴中に行えばリラックス効果が期待でき、睡眠の質を上げることもできます。今回は初級編です。呼吸をより極めることでさらにゴルフの質を高められますが、その話はまた別の機会に。(平井孝幸・健康経営アドバイザー)
■ 平井孝幸(ひらい・たかゆき) プロフィール
株式会社イブキ代表。東京大学医学部附属病院22世紀医療センター 研究員。15歳でゴルフを始め、3カ月で「75」で回る。慶應義塾大学卒業後、ゴルフ事業で起業。2011年にIT企業に入社。15年から働く人の健康×パフォーマンスアップサポートを開始。19年に所属する企業が経済産業省と東京証券取引所から評価され、健康経営銘柄を獲得。近著に「仕事で成果を出し続ける人が最高のコンディションを毎日維持するためにしていること」