さよなら不眠症 質の高い睡眠をとるには?
健康経営を仕事にする私のもとには、どうすれば働く人のコンディショニングをよくしていけるのか? 病気になりにくい生活は? といった相談がよく舞い込みます。メンタル面、食生活、運動不足解消など解決策は多岐にわたりますが、ここ数年でもっとも関心が高まっているのが「睡眠」です。
例えば、ゴルフ前夜は緊張やワクワク感によりすぐに眠れない、ということがよくあります。寝つけない夜、一番のNG行為はベッドでスマートフォンを使うことです。ゲームや電子書籍、動画などを利用する方は多いのではないでしょうか。せっかく睡眠モードに切り替わろうとしている脳が、スマホを見ることで活性化し、眠気は覚めてしまいます。
普段からスマホをベッドに持ち込まず『ここは寝る場所なんだ』と脳に認識させることが大切。もしベッドに何も持ち込んでいないのに眠れない場合は、無理して寝ようとするのではなく、いったんベッドから出て眠くなるまでソファでゆっくり座るなどしてください。呼吸に意識を向けてみることをお勧めします。
早く寝ないと、と頑張ることは逆効果になりがちです。ゴルフの米男子ツアーで活躍するジェイソン・デイ選手はスイング前に目をつむり、瞑想のようなことを行い、集中力を高めていた時期があります。呼吸に意識を向ける。トッププロも取り入れているテクニックです。
さらに普段から不眠症に悩んでいる方は、深部体温の調整や前回紹介した呼吸筋体操を行うと効果的です。眠る90分前に、40度の湯船に15分入るようにしてください。お風呂で上がった深部体温が適切な温度まで下がり始め、眠りにつきやすくなります。早く寝たいときにお酒を飲む方もいると思います。眠りやすくなったとしても喉の渇きや夜中の尿意などにより睡眠の質が落ちることもあるため、少量にとどめましょう。
次に、私が実際に行って睡眠の質を上げることができた、朝の2つのルーティンを紹介します。(1)起きたら必ず太陽の光を浴びること。(2)平日も土日も起きる時間を揃えることです。
太陽の光を浴びると体内時計が整いやすく、夜暗くなるとスーッと眠りにつきやすくなります。雨の日は窓際に行くだけでも構いません。また、土日の起床時間は、ずれても平日から1時間くらいを目指しましょう。この2つの継続はそれほど難しくないうえ、確実に睡眠サイクルが整っていきますので、すぐにでも取り入れてみてください。
ゴルフも睡眠も質は大事です。中身のない練習をたくさんしてもゴルフの腕前がなかなか上達しないように、不規則な生活のなかでたまにたくさん寝ても質の高い睡眠にはなりにくいものです。良い習慣をルーティン化させていくことで最良の睡眠を手にしましょう。(平井孝幸・健康経営アドバイザー)
■ 平井孝幸(ひらい・たかゆき) プロフィール
株式会社イブキ代表。東京大学医学部附属病院22世紀医療センター 研究員。15歳でゴルフを始め、3カ月で「75」で回る。慶應義塾大学卒業後、ゴルフ事業で起業。2011年にIT企業に入社。15年から働く人の健康×パフォーマンスアップサポートを開始。19年に所属する企業が経済産業省と東京証券取引所から評価され、健康経営銘柄を獲得。近著に「仕事で成果を出し続ける人が最高のコンディションを毎日維持するためにしていること」