コースを攻略してスコアアップ Vol.02 鶴舞カントリークラブ
井上誠一の設定理念とは
井上誠一氏のゴルフ場設計の理念は「美しく挑戦的であること」であったと聞きます。美しいだけでもダメ、挑戦的で難易度が高いだけでもダメ。双方のバランスが上手く保たれたコースが、ゴルファーを刺激し、よりゴルフの楽しみを味わえるコースだという考え方です。
井上氏のゴルフ場設計に対する私の印象は、自然の地形を生かした美しいデザインと、プレーヤーの想像力を要求するコースであることです。
まず、コースの美しさは元々の自然を上手く利用することから生まれています。コース内には人口的な形状のバンカーや池などはありません。土を無理やり削ってフェアウェイを平らにしていません。第2次ゴルフブーム後に作られたコースは、利益優先で難易度を低く設定したものが多くありますが、井上氏の設計するコースのほとんどは、本来のゴルフコースの楽しさや美しさを教えてくれます。ゴルフの楽しみは良いスコアを出す事だけではありません。まるで散策をするようにコース内の自然美を感じることもその一つです。フェアウェイに残された木々や、大きくうねったフェアウェイ、そして戦略的で曲線美の素晴らしいグリーンとバンカーが、本来のゴルフ場の美しさを教えてくれます。
井上誠一コースの特徴
次にプレーヤーの想像力を求めるデザインです。井上氏の設計したコース内には大小のマウンドが多く存在します。ほとんどのグリーンは砲台型になっています。砲台型グリーンとはマウンドの上にグリーン面が作られているものです。このマウンドの上にまた小さなマウンドをいくつか重ねることでグリーン面にうねりが生まれます。マウンドは平面ではない為、落下場所によってボールの転がり着く先が変わります。求めている方向とは別の方向へ転がってしまうこともあります。井上氏の設計したコースでは、毎ショットボールの行先を想像することを求められます。どの様な弾道でどこに落ちれば求める方向へボールが転がるのか?これを想像することがゴルフの楽しみを増してくれるのです。
これらの美しさと戦略性の源流はどこにあるのか考えると、スコットランドのリンクスにあるのだと思います。井上氏は川奈ホテルで療養中に富士コースを設計するために来日したC.H.アリソン氏と出会いゴルフ設計の道へ進んだそうです。これを考えると井上氏の設計したコースは、本場のリンクスの美しさと戦略性を持ち、さらに日本独特の素晴らしい自然美を感じることのできるコースなのです。
今回は千葉県にある鶴舞カントリークラブの3ホールを使って、井上デザインの素晴らしさを皆さんにお伝えします。
コース解説/堀尾研仁
取材協力/鶴舞カントリークラブ